イギリスでは政府の学校運営基金が大幅にカットされたことにより、財政難に陥っている学校も少なくない。そのような中、ウェスト・ミッドランズのティプトンにある「Wednesbury Oak Academy(ウエンズリー・オーク アカデミー)」では学校側が運営協力を求めて児童の親にわずかな寄付を呼び掛けたことが発端で、校庭で児童たちが区別されるという由々しき事態が発生した。
学校側は児童らが使うスポーツ用品を購入するために、PTAで決まった事案「児童1人につき6ポンド(約900円)の寄付」への呼びかけを2017年5月に実施した。しかしあくまでも「寄付」ということだったため、寄付する親とそうでない親が現れた。
これに対し学校側は今年の1月3日から“no pay no play(払わないのなら遊ぶな)”という方針を立て、親が寄付した児童には昼休みにその用具を使って遊ぶことを許可し、寄付をしなかった家庭の子には用具を使用することを禁じた。
「学校運営には常にお金がかかります。これまでも当校のスクール・ディスコや学童クラブなどの資金も追加出費で賄われてきました。サッカーボールやラグビーボール、テニスボールやバット、縄跳びなどのスポーツ用具を購入するために寄付してほしいと昨年5月に告知をしましたが、1年間にたった6ポンド(約900円)、1週間でいうとわずか15ペンス(約23円)ですよ。
子供たちにとってあまりにも不公平な方針を立てた学校側に対して、親たちは「そんな区別を子供にするな」とこの方針を取り下げさせるべく署名運動を起こした。発起人となったアンジェラ・ムーアさんは次のように話す。
「今や校庭では『寄付をする裕福な家庭組』と『寄付できない貧困組』のような感じで区別されているんですよ。実際に寄付した家庭や教員らも、この方針には反対しています。こんな区別はいじめの原因を作り、社会的排除をしているにすぎません。このようなことは即刻廃止して頂きたい。」
また児童の親たちからは、このような声があがっている。
「子供は、新しい用具で遊ぶことを許されずに不快な思いをしている。」
「自分も小学校に勤務する身だが、学校が子供たちにこのような不快な思いをさせるというのが想像できないし、もってのほか。」
「人としてこんなアイデアはバカバカし過ぎる。子供に示す最も悪い例だ。」
「たかが6ポンドというけど、出せない家庭もあるのでは?」
寄付をうたっておきながら、寄付しない家庭の子らにこうした区別をする学校側の対応に、ウェスト・ブロムウィッチ労働党下院議員エイドリアン・ベイリーさんもこのように苦言を呈した。
「確かに政府基金がカットされ財政上の危機を迎えている学校もありますが、学校側は強制的に寄付させるような手段を取るべきではありません。そもそもこうした学校用品は、予算で賄われるべきものなのです。収入が低くて寄付できない親がいると必然的にこのような結果になってしまいます。全ての子供が教育面や設備・用具使用において平等に扱われるよう学校側は配慮をしなければなりません。」
結果として署名運動では1634人の署名が集まり、1月11日にこの方針は廃止されたという。このニュースを知った人からも「寄付ってボランティア精神でするものでしょ。これって強制しているのと同じじゃないの。
画像は『Mirror 2018年1月11日付「School ends playground ‘rich and poor zones’ “with immediate effect” after parents’ outrage」(Image: Wednesbury Oak Academy)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 エリス鈴子)