アメリカからスポーツ文化の構築に
貢献してきた両社コラボが12月上旬実現!
20世紀、アメリカに誕生した「プリンス(prince)」と「ニューエラ(NEW ERA)」が、21世紀にコラボキャップを作る。これまでのテニス界にないスペシャルな企画が12月上旬、実現しようとしている。
クラウンと呼ばれる頭部の形に沿った椀状部分に、つばとも呼ばれる前方に設けられた庇(ひさし)がつけられた野球帽は、今やファッションとしても着用されるアイテムとなっている。野球帽と言われる形状のキャップが広まる契機となったのが、1860年前後に、全米野球選手協会所属のブルックリン・エクセルシオールが導入したことからと言われている。それまでもカンカン帽(円筒状につばがある麦わら帽子)や円筒状に前方のつばがあるピルボックス・キャップ(フラットトップ・キャップ)なども存在していたが、20世紀初頭には、エクセルシオール型の使用チームが優勢となり、1940年代にはほぼ現在と同じ形状ばかりになったという。
ここまで野球帽の話が続いているが、つばのある帽子とテニスに縁がないわけではない。19世紀は、帽子を被ることが紳士淑女のたしなみとなっており、テニスやゴルフなどのスポーツでも、カンカン帽をかぶってプレーしていたという歴史がある。今やカンカン帽をかぶってプレーする選手は皆無だが、いわゆるキャップは今でもテニスギアとして定着している。

かつて、テニスではカンカン帽などをかぶってプレーしていた時代がある(写真はイメージ)
ベースボールキャップの老舗であり
常に最先端を行く「ニューエラ」
今回、ご紹介する「ニューエラ」は、ベースボールキャップの老舗ブランドであり、ファッションアイテムのサプライヤーである。MLB(メジャーリーグ)唯一の公式選手用キャップサプライヤーであることから、野球帽のイメージが強いが、1920年の創業当初(当時の社名はEクックキャップ会社)は、紳士用カジュアルキャップを中心に作っていたという。

1934年インディアンズのキャップを作ったことがきっかけに成長したニューエラ社(写真はイメージ)
同会社に転機が訪れたのが1934年のこと。初となるプロ用ベースボールキャップを、クリーブランド・インディアンズのために製造したのである。その品質の良さから、名門チームからの注文も勝ち取ると、1974年にはMLB24チーム中20チームと契約。以降、MLB唯一の公式キャップメーカーとなっている。
シールは剥がさずに着用がおしゃれ!?
1954年に誕生した王道モデル「59FIFTY」は
ブラックカルチャーを巻き込んで世界的に流行
王道モデルと言われるのは「59FIFTY」という型。1954年に誕生し、改良を繰り返してきたベースボール・キャップの完成形と言われる6パネル×フラットバイザーは、野球ファンだけでなくファッションアイテムとしても人気を得ている。
ファッションアイテムとなる契機となったのが80年代以降。ニューヨークを中心に、スポーツファッションが流行し、それが世界へと発信されていくと徐々にニューエラキャップの人気が高まっていく。そういった中で興味深いのは、バイザー(つば)に貼られたシールを剥がさない着用方法だ。この理由には諸説ある。貧困地区に住む黒人の多くは、新品のニューエラをなかなか買えない。そこで、やっと購入した本物の新品であることをアピールする目的、あるいはショップから盗みや万引きをしたことをアピール(サグ[悪いやつ]であることがかっこいいという風潮がある)するためにシールを剥がさなかったと言われる。バイザーを曲げないというかぶり方も含めて、ブラックカルチャーが与えた影響は色濃く残っている。

ニューヨークを中心に、スポーツファッションが流行し、それが世界へと発信されていった
ニューエラ誕生から50年後
ニュージャージー州プリンストンに
誕生したプリンス
一方、プリンスは、ニューエラの誕生から、ちょうど半世紀後の1970年に誕生。発明家だったボブ・マッカラー氏が、家庭用掃除機のモーターを逆回転させて開発し、テニスボールマシーン「リトルプリンス」が最初の商品だった。
初代社長マッカラー氏と同様に、1976年にプリンス社を買収し、会長職に就いたハワード・ヘッド氏も素晴らしいい創造性を持つ人物だった。前社時代にメタルスキーを考案し、世界初のアルミ製ラケットを開発したヘッド氏は、プリンスで自身がテニスをもっと楽しむため、規約上問題のない(現在は大きさの制限がある)110平方インチというオーバーサイズ・モデルを独自に製作。当時、ラケットといえば、70平方インチが当たり前という時代だったから、約1.6倍というフェイス面積のラケットは、驚きのサイズだったはず。これが1978年に初代モデルが誕生する伝説のラケット「グラファイト」の原型となる。

その豊かなイマジネーションで、ラージサイズ・モデルを開発したヘッド氏
「プリンス」×「ニューエラ」コラボ
「9FIFTY」の2タイプ計4カラーを紹介
野球が中心のニューエラ、テニスを中心とするプリンス、畑は違うものの、アメリカを基点にスポーツ文化を構築してきたという共通点を持つ。その両社によるコラボが今回、実現する。

まずご紹介したいのは、「9FIFTY(ナインフィフティー)」の2タイプ計4カラー。「9FIFTY」は、フォルムは「59FIFTY」と同様で、リアサイドにストラップバック(サイズが調節可能)が付いているキャップである。


「ニューエラPロゴフラットキャップ」(税込6,000円)は、ブラックとホワイトがあり、共にクラウンの前面にプリンスロゴの「p」がグリーンの糸で3D刺繍されている。正面から見て右側面にはニューエラのロゴ、左側面にはprinceロゴが同じくグリーンの糸であしらわれている。


「ニューエラプリンスロゴフラットキャップ」(税込6,000円)もブラックとホワイトがラインナップされている。
「9THIRTY」のコラボキャップは
テニスのプレー時の着用にも適している
続いては「ニューエラPロゴキャップ」(税込5,000円)の2種類。こちらは「9THIRTY(ナインサーティ)」と言われる形状。クラウン部分が浅めでバイザーが最初からカーブしていて、クラウンの前面からあえて芯を取り除いてあるため、かぶり心地はかなり柔らかでラフ。リアサイドにアジャスタブルなバンド(サイズが調節可能)があるため、よりカジュアルに着用することができる。
カラーはブラックとホワイトの2種類。前面にはプリンスロゴの「p」、右側面にはニューエラのロゴ、左側面にはprinceロゴが設けられているが、ブラックでは白で、ホワイトでは黒で刺繍がなされている。
「9FIFTY*」タイプの「ニューエラPロゴフラットキャップ」、「ニューエラプリンスロゴフラットキャップ」は、そのしっかりした形状からファッションアイテムとして、「9THIRTY」の「ニューエラPロゴキャップ」は、プレー用としても着用してほしいアイテムである。ニューエラのキャップは、コレクターも多い。発売となったら、テニス・フリークとは異なる層からの購入も相次ぎそうだ。


テニスボールもすっぽり1球入る
「59FIFTY」を忠実にミニサイズにしたポーチ
最後にご紹介したいのは、「ニューエラプリンスロゴキャップポーチ」(税込3,900円)だ。「59FIFTY」の形状をしたポーチで、レッドとブラックがある。クラウン前面にプリンスロゴ(3D刺繍)、右側面にニューエラロゴ、クラウン背面にプリンスロゴの「p」が刺繍されている。小さなポーチだが、裏側も「59FIFTY」と同じ仕様になっているなど、ニューエラの本気度が伝わるポーチである。テニスボールがすっぽり1球入る大きさなので、テニス用バッグにつけて小物入れとして使ってみたいところ。


プリンスとのコラボで日本のテニス界に上陸するニューエラ。裏話となるが、今回の制作に当たっては、“ものづくり”に対してプライドを持つ両者だけに、かなり長い時間をかけることになったという。話題になることは間違いなし、スポーツキャップファンにとっても興味深いモデルになるはずだ。
*「ニューエラプリンスロゴフラットキャップ」は、JTA(公益財団法人日本テニス協会)の規定上、公認大会では着用できない