水沼貴史の欧蹴爛漫 032
愛する古巣に監督として舞い戻ったランパード。選手たちには球際での激しさを求めている photo/Getty Images
ランパードが目指す“原点回帰”
水沼貴史です。
マウリツィオ・サッリ前監督(現ユヴェントス)のもとで華麗なパスワークを披露し、昨シーズンはヨーロッパリーグ制覇などの一定の結果を残したチェルシーですが、サポーターが彼のサッカーに満足していないように私には見受けられました。堅守速攻型のサッカーで手堅く勝利を積み重ね、あまたのタイトルを手にしてきたひと昔前のチェルシーを知っているサポーターにとって、サッリ監督の攻撃的でハイリスクなサッカーは受け入れられるものではなかったのでしょう。
攻撃偏重のイメージが強かったサッリ前監督とは異なり、ランパード監督はより攻守のバランスに重きを置いたチーム作りを行っています。球際で体を張ることを選手に強調して伝えていますし、ベースの布陣を昨シーズンの[4-3-3]から[4-2-3-1]に変更し、ボランチを1枚から2枚にしたこと一つをとっても、守備を疎かにしたくないという彼の意思が窺えます。プレシーズンマッチを見ていても、セサル・アスピリクエタとマルコス・アロンソの両サイドバックのオーバーラップの回数が昨シーズンより減っている感じがしますし、サイドバックは前線でボールが収まるまでむやみに攻め上がらないという約束事が、既にチーム内で徹底されているふしがあります。
私が今注目しているのは、ランパード監督がエンゴロ・カンテをどのポジションに置き、彼にどのような役割を与えるのかという点です。
![[水沼貴史]“ランパード改革”進行中のチェルシー マンU戦&今季のキープレイヤーは](http://imgc.eximg.jp/i=https%253A%252F%252Fs.eximg.jp%252Fexnews%252Ffeed%252FTheWorld%252FTheWorld_250591_549d_2.jpg,quality=70,type=jpg)
プレシーズンで好調だったプリシッチ(中央)だが、開幕戦で輝けるか photo/Getty Images
膠着が予想される開幕戦 チェルシーのキープレイヤーは
両チームともにプレシーズンで試行錯誤している部分が多く、特にロメル・ルカクとポール・ポグバの去就問題に揺れているマンチェスター・ユナイテッドの基本布陣が未だに不確定のため(編注:現地時間8日、ルカクのインテル移籍が決定)、この試合の展開予想が難しかったのですが、膠着したゲームになるのではないでしょうか。ユナイテッドとしては監督が変わったばかりのチェルシーの出方をまずは窺いたいでしょうし、ランパード率いるチェルシーの基本戦術は今のところ堅守速攻です。特に試合序盤は互いに自陣のスペースを消し合い、攻撃の際にもあまりリスクを負わず、なるべく少ない人数でシュートシーンに持ち込むという展開になるのではと私は予想しています。
両チームの選手のなかで誰が膠着状態を打破できそうかを私なりに考えましたが、チェルシーにはペドロ・ロドリゲスやウィリアン、そしてクリスティアン・プリシッチなど、密集地帯でも細かなステップで相手をかわしながらシュートやパスを放てたり、ドリブルで複数のマーカーを剥がせるウインガーが揃っています。3人とも味方からのパスコースを呼び込むフリーランニングにも長けていますが、彼らが攻撃面でどれほど違いを生み出せるか。両サイドの攻防の行方がこの試合の流れに大きく影響しそうですし、ユナイテッド陣営としては左サイドバックのルーク・ショー、そして今夏に加入した右サイドバックのアーロン・ワン・ビサカの踏ん張りに期待したいところでしょう。
両チームともに不確定要素が多いなかで見どころを挙げてみましたが、監督が変わったばかりのチェルシーのサッカーが昨シーズンと比べどのように変化し、ランパード監督のサッカーがユナイテッド相手にどこまで通用するかという視点で観戦すると、よりこの試合をお楽しみ頂けると思います。
ではでは、また次回お会いしましょう!
※プレミアリーグ第1節、マンチェスター・ユナイテッド対チェルシーの一戦は日本時間8月12日(月)の午前0時30分にキックオフ!
水沼貴史(みずぬまたかし):サッカー解説者/元日本代表。Jリーグ開幕(1993年)以降、横浜マリノスのベテランとしてチームを牽引し、1995年に現役引退。引退後は解説者やコメンテーターとして活躍する一方、青少年へのサッカーの普及にも携わる。近年はサッカーやスポーツを通じてのコミュニケーションや、親子や家族の絆をテーマにしたイベントや教室に積極的に参加。幅広い年代層の人々にサッカーの魅力を伝えている。
●電子マガジンtheWORLD(ザ・ワールド)、最新号を無料で公開中!
日本初の電子サッカーマガジンtheWORLD(ザ・ワールド)。最新号は、本誌初のJリーグ特集! 名古屋グランパスの風間監督、大分トリニータの片野坂監督の独占ロングインタビューも奪取しました!!
こちらから無料でお読みいただけます
http://www.magazinegate.com/maga_info.php?seq=358/