偉大なエースの後を継ぐ新進気鋭のストライカーたち
ジョアン・フェリックス(19)181cm、70kg。アトレティコ・マドリード所属。「C・ロナウド2世」とも称されるポルトガルのニュースター
今季もまた、数多くの若者が新たなクラブへと移籍を果たした。
不世出の大エース、ロナウドが去って2年、世代交代が迫られる「白い巨人」レアル・マドリードが新たな得点源として白羽の矢を立てたのが、セルビア代表のルカ・ヨビッチ。フランクフルトに所属した昨季、ブンデスリーガ17得点、ヨーロッパリーグ10得点と大ブレイクを果たしたストライカーだ。
目を見張るテクニックはないが、ボックスの中でめっぽう強い本格派センターフォワード。左右からのクロスを確実に収め、間髪入れずにフィニッシュする。
常勝軍団レアル・マドリードのストライカーは、並の精神では務められない大役。したがって今季は、ベンゼマの2番手という序列からのスタートが予想される。
ただし、スタメン浮上の可能性は十分に考えられる。得点感覚を開花させたヨビッチは、精神的にタフなことでも知られるからだ。近い将来、ロナウドの不在を忘れさせるのは、この21歳かもしれない。
本格派のセンターフォワードを補強したレアル・マドリードに対して、ライバルのアトレティコ・マドリードは「ポルトガルの神童」ジョアン・フェリックスを獲得した。
ルイ・コスタ、フィーゴ、ロナウドと、ポルトガルはテクニックに優れたタレントを輩出してきたが、フェリックスもその流れを汲む。
多彩なアイデアとテクニックを持ち、ボールを持つと前へ前へと果敢に仕掛けていく。面白いように敵を翻弄するプレイスタイルは、駆け出しのころのロナウドを彷彿とさせる。
突破力ばかりではない。決定力に優れ、ヘディングも強い。
爽やかなルックスも含めて、スター性は抜群。グリーズマンがつけていた背番号7を継承した若者が、アトレティコの新たな王様になる日は近い。
チェルシーにとって、今季はいつになく厳しいシーズンになるかもしれない。FIFAの規定に違反したとして、2度の移籍市場における補強が禁じられたからだ。
補強ができない上に、アザールとダビド・ルイスという攻守の主軸が流出。開幕戦では、マンチェスター・ユナイテッドに0-4と大敗するという悪夢の滑り出しとなった。
前途多難なチェルシーにとって、数少ない希望の灯が貸出先のドルトムントから帰還したクリスティアン・プリシッチ。クロアチア人の血を引くアメリカ代表の20歳だ。
インドアサッカーのプロ選手だった父、サッカー経験者の母の間に生まれた彼の最大の強みはドリブル。スラロームを思わせるドリブルで、次々と敵を置き去りにする。
ファーストタッチからの急加速と予測不能なターンで、敵を翻弄。積極果敢に仕掛ける姿勢は、イングランドのファンのツボにはまるかもしれない。
左右両サイドに加えてトップ下と、多くのポジションに対応する利便性も魅力。右サイドではタッチライン沿いを巧みなドリブルで駆け上がり、チャンスメイク。左サイドでは内側に切れ込んでのフィニッシュ。トップ下では中央突破からの絶妙なラストパスを繰り出す。
どのポジションでも、ゴールへの道を切り拓くプリシッチ。窮地のチェルシーを救うことができるだろうか。
アヤックス育ちの逸材が新たなスーパースターに
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マタイス・デ・リフト(20)189cm、89kg。ユヴェントス所属。昨季は19歳ながら主将を務め、アヤックスをCLベスト4へと導いた photo/Getty Images
アヤックスからバルセロナに新天地を求めたフレンキー・デ・ヨング。彼もまた、新シーズンの主役候補から外せない。
国内リーグは2連覇中だが、チャンピオンズリーグでは4年連続ファイナルから遠ざかっているバルセロナ。近年はメッシをはじめ、主力が軒並み高齢化。世代交代の必要性が囁かれ始めた。
またメッシ、スアレス、ネイマールがそろい踏みしたMSN以来、傑出したフォワードの決定力に依存し、独自の美しい機能美を失っているという批判の声も上がっている。
アヤックスの最高傑作と称される俊英は、そんな硬直化したバルサを変えるかもしれない。
フィジカルはそれほどではないが、足もとのテクニックに優れ、なによりもゲームを俯瞰する能力に秀でている。だれよりも広い視野、深い洞察力でゲームを見通し、的確にパスを配球して巧みにゲームを組み立てていく。
グアルディオラやシャビの系譜を受け継ぐ、バルサ好みの「賢い」選手といっていい。
スーパースターはひしめくものの、独自のカラーを失いつつあった近年のバルサ。だがデ・ヨングの加入によって、このクラブだけが持つ革新のDNAを取り戻すかもしれない。
最後はイタリアに目を向けよう。ロナウドを獲得しても、届かなかったヨーロッパ制覇。
圧倒的なフィジカルを誇り、次々と敵を撃退。地上戦でも空中戦でも、密集戦でもスペースでの勝負でも、まったく隙を見せない。
守りだけでなく、ビルドアップ能力も非常に高い。左右両足から正確なロングフィードを繰り出し、チャンスを演出。機を見て中盤に持ち上がり、フィニッシュも狙う。
ユヴェントスは今季、ヨーロッパ随一の戦略家サッリを監督に招聘。「トータルゾーン」と呼ばれるサッリ独自の戦術の浸透は、このニュータイプのセンターバックにかかっていると言っても過言ではない。
アヤックスでは、クラブ史上最年少となる19歳という若さでキャプテンを務めた、たぐいまれな統率力の持ち主。底知れぬ可能性を秘めた若き大器が、ロナウドやキエッリーニ、ボヌッチといった偉大なベテランにもまれてワールドクラスへの階段を駆け上がる。
文/熊崎 敬
※電子マガジンtheWORLD No.236、8月15日発売号の記事より転載
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