![[特集/激化するスクデット争い 04]新セブン・シスターズ誕生か? スクデットの行方を左右する3クラブ](http://imgc.eximg.jp/i=https%253A%252F%252Fs.eximg.jp%252Fexnews%252Ffeed%252FTheWorld%252FTheWorld_302284_9eda_1.jpg,zoom=600,quality=70,type=jpg)
その中でも、特に敏腕指揮官のもとで着実に力をつけているのがナポリ、アタランタ、サッスオーロの3クラブだ。スタイルは三者三様だが、色濃い指揮官の哲学がそれぞれのチームに植え付けられ、今季のスクデット争いを大いに盛り上げている。虎視眈々と王者の首を狙うこの3クラブからは、後半戦も目が離せそうにない。
一強体制が続いていたが、セリエAの勢力図に変化
「新セブン・シスターズ」として、打倒ユヴェントスを目指すナポリとアタランタ。第4節で激突し、今季1度目の対戦では4-1でナポリに軍配が上がった photo/Getty Images
長年セリエAを見てきたカルチョ・ファンとしてプレミアリーグの“ビッグ6”をずっと「羨ましい」と感じていた理由は、そこで繰り広げられるサッカーのレベルの高さや華やかさじゃない。もっと単純に、「優勝争いを演じる可能性があるチーム」が6つもあるという“数の多さ”と、それによって演出される群雄割拠感にある。
昔はセリエAもそうだった。「世界最高リーグ」と称された1990年代、イタリアサッカー界には「セブン・シスターズ」と呼ばれた7つの優勝候補(ミラン、インテル、ユヴェントス、ローマ、ラツィオ、フィオレンティーナ、パルマ)が存在し、毎年のように予想の難しい激闘を繰り広げた。各クラブに世界的ビッグスターと名将がいて、さらに名物会長までいる当時の面白さはハンパじな
かった。
ところが、バブルの崩壊によって「世界最高」の称号をスペインやイングランドにあっさり手渡した2000年代以降、セリエAの群雄割拠感はあっさりと崩壊し、ミランの時代、インテルの時代を経てまさに圧倒的なユヴェントスの時代に突入する。2011-12シーズンから続くセリエA連続制覇の記録は、ついに「10」を視界に捉えるまでに至った。
だからこそ、ここ2、3年のセリエAを見て密かにワクワクを募らせている人は少なくないに違いない。ひたすら勝ち続けているユヴェントスが弱くなったわけじゃない。むしろ少しずつ力を誇大化させているにもかかわらず、“その他”がそれを超えるスピードで強くなっているのだ。
一時期はボロボロの状態だったミランとインテルがプライドを取り戻した。この10年ずっとユヴェントスに食らいついていたローマは多少強引だったとはいえ世代交代と“血の入れ替え”を敢行し、ラツィオは2019年に2度もユヴェントスを倒した。こうしてかつての「セブン」のうち4つが、まだ多少の距離があるとはいえ着実にユヴェントスの背中に迫りつつある。
さらにここからが面白い。この10年はローマとともにユヴェントスを追いかけ続け、あのディエゴ・マラドーナがいた1980年代のエネルギーを取り戻したナポリ、そして、あくまで“育成型クラブ”の姿勢を貫いて覇権争いに興味を示さなかったアタランタが、その体質を大きく変えてトップ集団に加わったのである。これによって完成した「新セブン・シスターズ」が、ユヴェントス一強体制の終幕という「もしかしたら」の機運を高めているのである。