モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。5月22日(水)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「2024年問題対策で『自動物流道路』整備へ その課題は?」。
情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。

東京-大阪間“無人カート”が荷物を運ぶ「自動物流道路」実現を...の画像はこちら >>

※写真はイメージです



◆無人カートが荷物を運ぶ「自動物流道路」

国土交通省は5月14日(火)、無人のカートなどで荷物を運ぶ「自動物流道路」の10年後の実現を目指して、東京・大阪間を念頭に具体的な検討を進めていく考えを示しました。これは、物流の停滞が懸念される「2024年問題」への対処策の1つということです。

吉田:塚越さん、この「自動物流道路」とは何なのか教えてください。

塚越:スイスなどで検討が進んでいる、無人のカートが荷物を運搬する構想です。日本でも10年後を目途に実現する構想が検討されています。


この自動物流道路ですが、例えば高速道路の路側帯や中央分離帯、あるいは地下空間の利用が想定されています。自動で動く無人のカートが荷物を運搬するということなので道路を整備して、物流の効率化を目指します。

カートは再生エネルギーを使う案も出ていて、CO2排出量を削減して脱炭素も目指すということです。

◆スイス、イギリスでも導入に向けて計画進行中

吉田:日本の「自動物流道路」について、今はどのような状況ですか?

塚越:まずは国土交通省が「実験線」を作るということで、その場所は荷物が集まる拠点を結ぶ路線などが考えられています。実際にそこでカートの制御や電気の供給、荷物の積替えの自動化を検証研究します。その上で、実際に自動物流道路を整備するのは東京~大阪間を想定しています。


ユージ:この「自動物流道路」、海外でも検討が進められているようですね?

塚越:そうですね。スイスでは主要な都市と都市を結ぶ地下トンネルで自動運転カートを走らせる構想を掲げており、実際、2021年に成立した「地下貨物法」で正式に計画が進んでいます。スイスでは地下に24時間体制で自動輸送カートが走る専用トンネルを建設して、主要な都市を結ぶ総延長500kmのシステムが構想されています。

2031年にチューリッヒ~ヘルキンゲンの都市間・約70kmの運用を開始して、2045年までに全線を開通予定です。今のところ500kmの全線開通にかかる総費用は約5兆円です。

なぜここまで費用がかかることをするかというと、国土交通省の資料によればスイスは2017年に850万人だった人口が2030年に950万人に増えると予想されています。
また2040年には、2010年と比較して貨物輸送量がおよそ40%増えるといった予測があり、現状の輸送に限界を感じたということです。

自動運転カートは、トンネル内にある3つのレーンを時速30kmで24時間体制で稼働させます。将来的に自動カートは100%再生可能エネルギーにするといいます。他にも、物流ターミナルから直接自動レーンに接続するなど、さまざまな工夫が考えられています。オートメーション化など、まだまだやれることが増えてくるといいます。

一方、イギリスでは、鉄道レールの横に「リニアモーター」を活用した物流専用道を作る計画(Magway system)を進めています。
その名の通り“電磁気力”を動力として、輸送専用に開発した低コストのリニアモーターによる完全自動運転による物流システムです。こちらはロンドンの既存の鉄道内に16kmの専用レーンを作るというもので、2021年から検討しており、2025年に許可が下りたら、目標として2028年~2030年には稼働したいということです。これは、もう少しコンパクトな方法ですね。

ユージ:なるほど。全く知らなかった情報だったので興味深いです!

◆工事費用は高額 人手不足はドライバーの待遇アップで解決できる?

ユージ:「自動物流道路」について、塚越さんはどうご覧になりましたか?

塚越:スイスは人口が増えているのですが、人口減少が進む日本では、費用対効果を考える必要があります。そして気になる工事費用ですが、現在の技術を前提にすると10kmあたり、地上の場合およそ250億円、地下の場合は70億円~800億円かかるという試算があります。
物価高騰でもっと価格が上がるかもしれませんし、東京~大阪間はだいたい500kmです。

ユージ:10kmは物流の世界でいうと「すぐそこ」の話ですよね。基本トラックの運転手さんも、長距離を運転される方がすごく多いですから。

塚越:最低でも70億円、最大800億円かかるということですからね。実際、完成した場合もトラックで輸送している荷物のうち最大26%程度を振り分けられます。もう少し何とかならないかなと思います。
個人的には厳しいと思いますし、イギリスのような形なら何とかできるかなという気がします。

ユージ:今のトラック運転手の負担が26%減になるとのことです。なかなか、お金がかかりますね。ここまでお金をかけて頑張ったとしても26%しか賄えないのですね。

吉田:賃金を上げてもらったほうがありがたいですね。

塚越:オートメーション化は大事だと思います。しかし今いるドライバーさんを大切にすること、あるいは一律に賃金を上げることも大切です。サービスの値段は上がってしまいますが、(その分、労働者に適切に還元されるのなら)それは良いことだと思いますし、そうしないといけません。

物流問題でこれから輸送能力がどんどん下がると言われているなかで、自動物流道路を作るのか、ドライバーさんを大事にして賃金を上げ、その分のコストを我々消費者も負担するのか。そうした意味では、我々に問われている問題でもあります。

ユージ:オートメーション化によって、物流による渋滞緩和などは解消されそうですが、人手不足は賃金を上げれば何とかできるのではと思いました。

東京-大阪間“無人カート”が荷物を運ぶ「自動物流道路」実現を目指して…“物流問題”どこまで効果がある? 専門家が解説

吉田明世、塚越健司さん、ユージ



----------------------------------------------------

<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜~金曜6:00~9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/one/