ブレグジット(EU離脱)の議論に揺れる英国ですが、Hondaが2019年2月に英国での生産を2021年中に終了するとの発表をしました。欧州での日本の自動車メーカーの事業展開は国内ではあまり報じられないですが、今回は数字をもとにその影響の度合いについて見ていきましょう。
■Hondaが英国からの生産撤退を発表
EU離脱に揺れる英国ですが、その英国に工場を持つHondaが2021年中に生産を終了すると発表しました。
英国の四輪車生産会社である「ホンダオブザユー・ケー・マニュファクチュアリング・リミテッド」の従業員に対して、2021年中に完成車の生産を終了する方向であることを説明し、労使間での協議を開始したとしています。
英国のEU離脱問題はあるにせよ、欧州での販売シェアが低いホンダが世界的な生産体制の見直しに先手を打った形です。
同社によればHonda of The UK Manufacturing Ltd. の従業員数は約3500人。設立は1985年2月で、エンジンの生産開始は1989年、また完成車の生産開始は1992年とされています。
■Hondaは英国で生産台数第5位の自動車メーカー
Hondaの海外事業と言えば米国が有名です。一方で英国を含むや欧州ではHonda車の存在感は米国とは比較とはなりません。
しかし、英国での乗用車生産台数の数字を見ると、その印象は一変します。2018年3月にJETEOがまとめたところによれば、Hondaは英国での乗用車の生産社上位リストでは5位にランクインしています。
英国での日産の存在感の大きさをご存知の方も多いかと思いますが、数字に表れている通り50万台を超え、第2位です。一方、Hondaは13万台と第5位になっています。日本勢ではトヨタが第4位で、Hondaと同規模といえます。
また、2017年にイギリスから輸出された乗用車の上位5ブランドは下記です。
- 1位 日産・キャシュカイ
- 2位 ミニ
- 3位 ホンダ・シビック
- 4位 トヨタ・オーリス
- 5位 ボクスホール・アストラ
Hondaはイギリスでの乗用車販売シェアは低いものの、英国工場は輸出拠点として機能していたともいえるでしょう。
■Honda撤退の影響をどう考える
自動車産業はバリューチェーンの長さなどから、材料メーカーや部品メーカー等、非常に裾野の広い産業として知られています。Hondaが英国からの生産を撤退するということは、同社が部品等調達先としてあった協力メーカーへの影響は避けられません。
Hondaの英国工場は、ロンドンから車で約1時間の人口約20万人のウィルシャー州工業都市スウィンドンにあります。
2021年中に乗用車生産工場は撤退するため、先に見たHonda of The UK manufacturing Ltd.の従業員数を考えれば、スウィドンの人口規模を考慮すると経済や雇用に対する影響は避けられません。
■日産、トヨタの判断も注目される
Hondaは英国第5位の生産量の乗用車メーカーですが、一方で第2位は日産、そして第4位はトヨタとなっています。このように実に日系自動車メーカーが3社ランクインしています。
カルロス・ゴーン元会長の逮捕で揺れる日産ですが、次期型「エクストレイル」の生産については当初英国での生産を予定していましたが、その見直しを2月上旬に発表しています。欧州向け次期「エクストレイル」は九州工場で生産されることとなりました。
既に生産台数第1位のジャガー・ランドローバーは2019年1月にも英国でのEU離脱を前に大規模なリストラを発表しており、Hondaはそれに続く形となりました。
英国では大きな衝撃を与えている自動車メーカーの相次ぐ生産体制の見直し。
【参考文献】
- HONDA「グローバル四輪車生産体制の進化について」( https://www.honda.co.jp/news/2019/c190219b.html )
- JETRO「英国自動車産業の現状と課題」
- 日産「英国における次期型「エクストレイル」の生産について」