2020年は資産運用業界がガラッと変わる起点の年になるのではないかと感じています。



■資産運用業界に起きている変化



“温故知新”は筆者の好きな言葉ですが、古きを知ることが本当に役に立つのかどうか不安になることもあります。



資産運用における“温故”は、従来の運用手法や戦略を会得することです。一方、“知新”は新しい運用技術・手法を導入し運用成果に活かすことだと思います。



これを資産運用業界の変化に重ねると、ETFを筆頭に世界的にパッシブ運用(≒インデックス運用)が急速に拡大しています。これは日進月歩するフィンテックやキャッシュレスに同調して、運用手法もより効率化・低コスト化が進んできている証ではないでしょうか。



ファンドマネジャーの運用能力に頼るアクティブ運用が退潮し、株価指数等に運用成果が連動するパッシブ運用が拡大することで、運用能力を向上させるということはどういうことなのかという本源的な疑問にも突き当たります。



■拡大を続けるETF市場



さて、米国ではすでに10年以上も前からアクティブ投信への資金流入が流出へと転じ、パッシブ運用を行うETF(上場投信)への資金流入が純増しているのは業界関係者にはよく知られています(図表1)。



図表1:米国におけるアクティブ投信とパッシブ投信(ETF)への資金流出入推移



本格的ETF(上場投信)時代の到来。流れはアクティブからパッシブへ

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出典:THE INDEXATION WAVE 期間:2007年12月末~2017年9月末



最近では、欧州市場に上場されているETFの残高が1兆ドル(約108兆円)を超えているという報告もありますので(図表2)、日本もこの影響を受けるのは間違いありません。



欧米では一歩先に、アクティブ上場投信(アクティブETF)も認可されていますから、この波が日本にも到達するのは時間の問題です。



図表2:欧州におけるETFの拡大(過去6年で残高は2.5倍)



本格的ETF(上場投信)時代の到来。流れはアクティブからパッシブへ

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出典:Cerrulli、期間:2012年~2018年




筆者は、投資信託が上場化する過程は、金融がフィンテック等の最新金融技術に取り込まれていく流れと軌を一にしている、と感じています。



たとえば、キャッシュレス化は現金というモノの代わりに、データがお金の役割を果たすわけです。現金が不要な分、現金の保有や運搬、保険コストが節約され、現金を扱う人件費も削減されます。もう人間が札勘をすることもなくなっていくのでしょう。



これを資産運用におけるETF化と重ねると、運用は低コストで効率的に行うことが求められ、銘柄選択力の優先順位は運用コストや期待収益との見合いとなることになります。



すなわち、資産運用会社は属人的な能力に依存する運用から、機械的ではあるが着実に運用成果が生み出せるETF(インデックスファンドを含む)に経営資源を傾けざるを得ないのではないかと思います。



もっとも、いつの時代にも傑出したトレーダーはいますので、アクティブ運用がなくなるとは思いません。ただし、そうした人材が資産運用業界で活躍するかどうかは別の話です。



■運用会社を取り巻く環境は?



こうした状況下、運用会社は二極化が進んでいくと思います。



巨大な資産と資本力を持つ大手はますますオペレーショナルなETF化を進め、アクティブ主体の運用会社やヘッジファンド(プライベート・エクイティ)は超過収益獲得の確実性を極めて生き残りをかけていくと思います。



日本の証券投資信託約6000本(合計残高約122兆円)を各投資信託の純資産総額順で見ると、すでに上位10本のうち9本はETFです。



同様に、上位20本のうちアクティブファンドは半数の10本ありますが、この10本(合計約6兆円)が上位20本(同約45兆円)に占める純資産総額の割合は14%程度にしか過ぎません。



ただし、日銀がETFを購入しているため、ETF(≒日本株インデックスファンド)の割合がより高くなっているのは否めませんが。



自動車は電気化自動運転へ、金融はフィンテックへ、投資信託はETF化(インデックス化)へと進んでいますが、共通することは他業種がいとも簡単にその業種に進出できることです。



ソニーが電気自動車を開発し、ITC業界が金融に進出する中、資産運用業だけが従来のやり方で生き残れるとは思えません。



金融や資産運用は一般消費者からは遠い存在かもしれませんが、読者ご自身が株式や投資信等の有価証券投資を行うこともあります。

ぜひこの大きな潮流の変化を知っておいていただきたいと思います。