世界中が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックだろうが、国中で抗議デモが行われていようが、アメリカ超富裕層はビクともしないどころか、今まで以上にリッチになっているようです。
アメリカ各地で抗議デモが行われていた最中ですら、資本主義の象徴的存在といえる株式市場ではおかまいなく株価が上昇したことが理由の一つです。
株価上昇の恩恵を受けることもない多くの中間層以下は、コロナ不況のダメージをもろに受けるだけではなく、今後政府が打った金融政策に苦しむ事になるかもしれません。他人事ではないこのような不公平な仕組みについて考えてみます。
■コロナ禍で業績伸ばすハイテク企業
アメリカ株は3月23日の底値から順調に回復をみせ、6月上旬にはS&P総合500種は約40%の回復し、ナスダック総合は2月に達した過去最高値に届こうとしています。アメリカに限らず日経平均も2月以来久しぶりに2万2,000円台に回復をしました。
世界的にCOVID-19感染拡大が一段落をみせ、ビジネスが再開され始めたところもありますが、急に株価が上昇したわけではありません。3月の底値から徐々に着実に上昇しつづけてきたのです。
というのも、コロナ禍では市場全体が被害を受けたわけではなく、むしろコロナ禍で人々の生活パターンの変化によって、今まで以上に売り上げを伸ばしている会社があります。その株価は上昇しているのです。
とくにアップル、アマゾン、グーグル、フェイスブック、マイクロソフトといった大手ハイテク企業が絶好調なのです。これらの企業の時価総額はS&P500時価総額の約20%を占めているといわれています。影響力をもつこれらハイテク企業の株価が上昇し、市場をけん引しているということです。
■株価上昇で喜ぶ人々
儲かっている企業があれば、儲かる人います。
あるシンクタンクの報告書によれば、アメリカの富裕層の資産は3月から約3カ月で5,650億ドル(約62兆円)増え、「富裕層らの現在の資産総額は3兆5,000億ドル(約380兆円)で、感染拡大初期から19%増加した」とCNN(※)( https://www.cnn.co.jp/business/35154855.html )は伝えています。
ちなみに、アマゾンCEOのベゾス氏は今回のパンデミックで3月より6月上旬時点までに362億ドル(約3.9兆円)も資産を増やしたそうです。
一方、日々の支払いで精一杯の世帯では、株式投資などまったく関係ないことです。それどころか、コロナ不況の犠牲となり、失業で貯金を取り崩しながら生活する人も大勢います。
■インフレでさらに苦しい生活
株価上昇の背景にはハイテク企業の業績の伸びだけではなく、米連邦準備理事会(FRB)と米政府の無制限の量的金融緩和策も大きく影響しています。FRB の債券購入による無制限の量的金融緩和が市場を安定させるだろうという期待が強まるからです。
無制限の量的緩和で国内にお金が増えすぎるとお金の価値を下げてしまい、いずれは物価上昇、インフレーションに繋がるというのが基本的な流れです。株式・不動産などを所有する富裕層にとっては、インフレで物価が上がれば資産を増やすことになります。
しかし十分な昇給もなく、物価上昇に追いつけない中間層以下への負担は重く、生活がますます厳しい状況になってしまいます。
どうでしょうか。今回の量的金融緩和ではインフレにはならないだろうという意見もあるようです。
黒人差別から始まった抗議デモですが、一生懸命働けど生活は苦しくなっていくという不遇な人々の格差や差別を容認する社会構造に対する不満が、米国中で爆発し大規模な抗議デモとなりました。アメリカに限らず、世界的な問題でもある格差、差別が少しでも改善されることを願います。
参考
(※)「米富裕層の資産、コロナ禍の3カ月で62兆円増える」( https://www.cnn.co.jp/business/35154855.html )CNN