平均寿命が長くなればなるほど、老後のお金が心配になるということはありませんか。コロナ禍が長引く今は、さらに不安が増しているのではないでしょうか。
昨年8月に日本生命が契約者7,543人(男性:4,045人、女性:3,498人)※を対象に行った「セカンドライフについて」の調査には、セカンドライフの予算に関する項目があります。その結果から、ゆとりある老後を送るための金額や、老後資金を貯めるためにチェックしておきたい点を紹介します。
※年代別の比率は、~20代:6.9%、30代:14.5%、40代:21.3%、50代:30.3%、60代:17.9%、70代~:9.2%
■現在の生活より老後の生活にゆとりを希望
まず、「ゆとりあるセカンドライフにかかる1カ月の生活費はいくらくらいだと思うか」を聞いたところ、夫婦の場合は平均額が約28.8万円(n=4,295)、単身では約24.6万円(n=2,059)。
これを現在の生活費と比べると、夫婦の場合は4.8万円、単身では8.4万円、セカンドライフの生活費の方が多いという結果です。年代別に見ても、すべての年代で自分がイメージする老後の生活費の平均金額は現在の生活費より多くなっています(図表1参照)。
図表1:ゆとりあるセカンドライフに必要な生活費(1カ月あたり)と現在の生活費との差額

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出所:ニッセイ インターネットアンケート~セカンドライフについて~(日本生命保険相互会社)
現役時代は慌ただしく生活している分、老後にはゆっくり旅行や趣味を楽しみたいという希望と、コロナ禍で改めて感じた病気に対する不安から、できる限りお金に余裕をもっておきたいという気持ちが数字に表れているのかもしれません。
実際のシニアは生活にそれほど余裕がない?
また、すでに老後を送っている60代、70代以降の年代でも、ゆとりあるセカンドライフの生活費と現在の生活費(月額)に、約6~9万円の差があるのは気になるところです。年金で日々の生活は送れているものの、ゆとりある暮らしという点からは、今の生活費では足りないと感じている人が多いのかもしれません。
■老後のために貯めておきたい金額は3000万円超!?
次に、「セカンドライフをスタートするまでに貯めておきたい金額」に対する回答は、「1,000~3,000万円未満」が50.5%で最も多く、全世代での平均額は3,033万円(n=4,754)。一昨年、金融庁の報告書で話題になった2,000万円よりだいぶ多く、前年と比べると145万円増加という結果でした(図表2参照)。
図表2:セカンドライフをスタートするまでに貯めておきたい金額

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出所:ニッセイ インターネットアンケート~セカンドライフについて~(日本生命保険相互会社)
目標達成率100%は約1割
では、「貯めておきたい金額」に対する達成率はどうかというと、全世代では10~30%未満が21.8%で最も多く、僅差で10%未満の20.3%が続きます。100%達成という回答が10.2%ある一方で、50%未満の合計が65.2%と、老後資金の準備はそう簡単にはいかないようです。
世代別に見ると、定年退職を目前に控えた50代の約9割、すでに老後を送っている60代の約8割、70代以上の約7割が、自身が老後に貯めておきたいと考える目標金額を貯めることができていません。老後資金に3,000万円準備してセカンドライフを楽しみたいという願望を持ちつつも、なかなか厳しい現実がうかがえる結果になっています(図表3参照)。
図表3:セカンドライフのために貯めておきたい金額をどれくらい達成できているか

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出所:ニッセイ インターネットアンケート~セカンドライフについて~(日本生命保険相互会社)
■退職金・年金でもらえる金額で必要な貯蓄額は変わる
同調査対象者のうち企業や団体に勤めている人に「自分がもらえる退職金と年金の金額を把握しているか」と聞いたところ、60歳未満の年代では実に半数以上の人が自身の退職金と年金を把握していないと回答。
世代別では、20代の83.4%、30代の76.2%、40代の69.4%、50代の51.1%が把握していません。若いうちは自分の退職金を気にしていないのは無理もないかもしれませんが、定年が間近に迫っている50代でも半数が把握していないという結果になっています(n=3,312)。
実際に支払われた退職金の金額は?
厚生労働省の「平成30年就労条件総合調査」によると、退職給付(一時金・年金)制度がある企業は80.5%。そのうち、勤続35年以上の給付額について見ると、大学・大学院卒(管理・事務・技術職)で、「退職一時金制度のみ」で1,897万円、「退職年金制度のみ」で1,947万円、「両制度併用」で2,493万円。
高校卒(管理・事務・技術職)は、「退職一時金制度のみ」で1,497万円、「退職年金制度のみ」で1,901万円、「両制度併用」で2,474万円となっています。
公的年金はいくらもらえる?
日本年金機構から、自身の誕生月に届けられる「ねんきん定期便」はご存じでしょうか。直近1年間の情報と、50歳以上の人には「年金の見込額」、50歳未満の人には「これまでの加入実績に応じた年金額」が記載されたシーリングはがきが届きます。
そして、35歳、45歳、59歳といった節目の年には、全期間の年金記録情報が封書で送られてきます。公的年金は、老後の生活費のベース部分になるので、受給額によって自分で貯蓄が必要な額は変わってきます。今までなんとなくしか見たことがないという場合は、一度ねんきん定期便をしっかり確認してみましょう。
■おわりに
充実したセカンドライフを送るために、お金が大切なのは言うまでもありません。ただ、漠然と不安に感じているだけだと、とにかくたくさんお金を貯めなければいけないというプレッシャーを感じがちです。
まずは、退職金や年金でいくらもらえるのかを知るところがスタート地点です。
ざっくりとでも具体的な目標が見えると、意外と行動しやすくなるのではないでしょうか。
参考資料
「ニッセイインターネットアンケート~セカンドライフについて~( https://www.nissay.co.jp/news/2020/pdf/20200916.pdf )」(日本生命保険相互会社)
「平成30年就労条件総合調査、退職給付(一時金・年金)の支給実態( https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/18/dl/gaiyou04.pdf )」(厚生労働省)
「ねんきん定期便関係( https://www.nenkin.go.jp/service/nenkinkiroku/torikumi/teikibin/index.html )」(日本年金機構)