緊急事態宣言が解除され、世の中は「コロナ後」に向けて始動してきた感がみられます。リベンジ消費なる言葉も頻繁に耳にするようになりました。

そんな今こそ「貯蓄」への意識も再確認したいものです。



FPとしてお金の相談を受けていると、お金が貯まらない人の共通項が見えてきます。その人の性質や習慣がお金を貯める行動とは真逆に作用してしまうのです。



そこで「お金が貯まらない人」の特徴とそれを改めるにはどうしたらいいのか、改善策も提示したいと思います。お金が貯まらない人からお金が貯められる人にステップアップしましょう。



■特徴その1.買ったものの値段を覚えていない



貯金ができていない人は、何にいくら使ったのかを把握していない人が多いです。



今、身の回りにあるものを見渡してみましょう。それらをいくらで買ったか覚えていますか?



きちんと覚えている人は、購入した時に、しっかりと考えて買った人です。買った途端に値段を忘れる人は、値段に対する意識が薄いことの表れです。お金に無頓着ともいえます。



値段を気にせずに買い物ができるほどの大富豪でない限り、買い物をする時には欲求のコントロールが必要です。世の中には消費活動を活発にするための情報が溢れているので、欲求のコントロールができない人の出費はずるずると膨らんで留まることはありません。



■◆どうしたらいい?



これはよくいわれることですが、買い物をする時に、必要なもの(needs)か、欲しいもの(wants)か、を意識することです。“必要なもの”であれば、それほど考えずに購入しても問題ありません。



値段が高いものは、ネットを使って、相場を調べてから買う癖をつけましょう。複数の候補の中から選択するのがベストです。問題は“欲しいもの”です。その場ですぐに買わず、時間を置くことで欲求の強さがわかります。



時間が経っても欲求が変わらなければ(さらに増すことはよくあります)、次にその欲求に対して見合う値段であるかを考えます。この時、同じ金額で他にどんなものが買えるか(どんなことができるか)を想像してみましょう。



そこまで考えて、なお欲しければ購入しましょう。



いかがですか?すごく面倒くさいと思います。しかし、ここまで考えられたら、本当に欲しいものなので、購入しても失敗はないでしょう。このように簡単に手に入れないことで、無駄遣いがなくなります。



■特徴その2.お金をやりくりした経験がない



今まで貯金ができていなかったのに、貯金ができるようになった人のほとんどは家計簿をつけている、あるいはつけたことがある人だと思います。



家計の収支を把握せずに改善はできないからです。実家を出て1人暮らしを始めれば、1ヵ月生活をするにはいくら必要か、否が応でも実感できるでしょう。収入を増やすのは難しくても、支出を抑えるのは少しの工夫で可能となる場合があります。



実際に工夫をしてやりくりした経験がある人は、それが一つのスキルとなります。これは1人暮らしの経験の有無とは関係なく、収支を意識して工夫ができるか否かの問題です。

むしろ子ども時代の経験の方が大きいかもしれません。



好きなものを買うために、お小遣いを貯めるという経験をすれば、目標(=好きなものを買う)を達成するための努力(=お小遣いを貯める)と工夫(=無駄遣いをしない)を覚えます。お金の上手なやりくりスキルは、経験を通じて学ぶしかありません。



■◆どうしたらいい?



今からでも遅くありません。まずは収支を把握するために家計簿をつけましょう。



家計簿は、ひと月の支出が費目ごとに金額と割合で把握できるものであれば、どんな形式でも構いません。

何にいくら使ったのか、その都度記録していく行為は大変だと思いますが、そうすることで出費に自覚的になれます。



1カ月の記録が終わると、費目ごとの金額と割合を出したグラフから、「外食費が多い」「通信費が多い」などの気づきを得ます。今まで何に使っていたのかわからなかったものがはっきりするだけでも家計簿を付ける意義があります。



次に支出の10~15%程度を先取り貯金として、自動積み立ての設定をします。あとは、残った生活費で日々のやりくりをするだけです。グラフから得た気づきを改善することでやりくりは可能となるでしょう。



■特徴その3.固定費に無頓着



お金を貯めるために、いざ節約を始めてみると、食費を削ったり、少しでも安く買うためにお店をハシゴしたりする人がいます。節約した「つもりにはなれる」行動ですが、労力の割に効果は一時的で金額もたかが知れています。



またネットショッピングで、クーポンやタイムセール、ポイントなどを利用して、1円でも安く購入する術に長けている人が通信費には無頓着で、毎月数千円節約できることに気づいていないという例もあります。



効果の高い節約は金額の大きいもの、長く払い続けるものを見直して支出を減らすことです。住宅費や通信費、保険料、習い事の費用、車関連費などの固定費を節約するのが賢い方法です。



■◆どうしたらいい?



住居費や車関連費は見直しの効果は高いですが、簡単に見直せるものではないでしょう。固定費の中で比較的、簡単に見直せるものが通信費です。



政府が携帯料金の引き下げを政策として行ったことで、NTTドコモソフトバンク、auの大手3社から基本料金2000円台のプランが登場するなど、携帯料金の値下げ競争が激しくなっています。契約プランを見なおしたり、格安SIMを利用したりすることで、通信費を大きく減らすことが可能です。



他に、見直しの効果が高い費用として保険料があります。国民皆保険制度によってすでに保険に入っていることを念頭において、国の公的保障でカバーできない分だけ保険に入るようにしましょう。公的医療保険として高額療養費、就業不能リスクには傷病手当金と障害年金、生命保険として遺族年金があります。無駄な保障を削れば保険料を節約できます。



■特徴その4.ものを溜め込む



ものを溜め込む傾向がある人は、無駄遣いや衝動買いをしがちです。「何かに使えるから」といって、ものを捨てない人も、本人の節約意識とは裏腹で、結局仕舞ったことを忘れて、それが使われることはなく、同様のものを買ってしまうことはよくあるのではないでしょうか。



ものを捨てられずに貯め込んでしまう人は、“捨てる”という行為を怠っているともいえます。ものを捨てることは、心理的な負担に加えて労力も費やします。愛着のあるものを捨てるのは辛いですし、大きいものを捨てるには労力とお金がかかります。



きちんとものを捨てられる人は、安易にものを買わず、本当に必要なもの、欲しいものを考えて買うようになります。裏返せば、ものを貯め込んでいる人は、安易にものを買う、また買うことがゴールとなっているので、衝動買いや無駄遣いが多くなり、結果、お金が貯まりません。



■◆どうしたらいい?



部屋の掃除をしましょう。何がどこにあるのか把握できる程度にものを減らしましょう。そうすれば、同じものを何個も買うという失敗はなくなります。



部屋がきれいになると、本当に必要なもの、欲しいものだけ部屋に置きたいという心理が働きます。そうすれば、ものを買う時に厳選して買うようになり、無駄遣い、衝動買いはなくなります。



■さいごに……



その人の性質や習慣を変えるのは、なかなか大変なことですが、具体的な行動に落とし込んで、小さい変化を積み重ねることで、変わることができます。この中で当てはまるものがあると感じたら、ぜひ改善のための一歩を試みてほしいと思います。



■参考資料



  • 時事ドットコム「菅政権、携帯料金引き下げ実現 大手も月2000円台プラン」( https://www.jiji.com/jc/article?k=2021091100385&g=eco )