■マイナンバーカードが普及されるための課題とは
2022年4月より、マイナンバー健康保険証(以下マイナ保険証)が使える医療機関を受診し、患者の情報を取得して診療が行われた場合、診療報酬が加算されています。
自己負担3割の場合、初診は21円・再診は12円・調剤は9円が月に1回加算されます。
利用者負担がいつまで続くのか、またマイナ保険証のメリットやデメリットはどういったものか。本記事にて詳しく解説します。
■マイナンバー健康保険証の初診料値上げはいつまで?
厚生労働省の「令和4年度診療報酬改定について 1.個別改定項目について」によると、従来の保険証を利用した場合の診療報酬加算は2024年3月31日までとされています。
マイナ保険証が利用できる医療機関を受診した場合の診療報酬加算については、特に期日についての明記がありませんでした。
出所:厚生労働省「令和4年度診療報酬改定について」
今後のマイナ保険証普及率に伴い、診療報酬加算が変更となる可能性はあると思います。
■マイナンバー健康保険証を利用する4つのメリット
マイナ保険証を利用するメリットとしては、次の4つが挙げられます。
- 高額療養費制度における限度額を超える支払が免除される
- マイナンバー健康保険証の読み取りで自動受付が可能
- 過去の医療記録が全て記録される
- 就職・転職・退職・引っ越しをしても健康保険証として使える
それぞれ詳しく解説します。
■高額療養費制度における限度額を超える支払が免除される
限度額適用認定証がなくとも、高額療養費制度の限度額を超える部分の支払いが免除されます。
認定証を受け取るには事前に書類申請する必要がありますが、マイナ保険証があると手続きの手間が省けます。
ただし自治体独自の医療費助成などは対象外です。
出所:厚生労働省「マイナンバーカードの健康保険証利用について」
■マイナンバー健康保険証の読み取りで自動受付が可能
医療機関に設置されている顔認証付きカードリーダーを利用することで、本人確認と保険資格の確認が一度に実施されます。
コロナ禍で対面受付に抵抗がある方にとっては、マイナ保険証による自動受付は非常に便利な機能です。
マスクを着用していても顔認証は可能ですが、機器によって精度が異なるため認証できない場合もあります。その際は暗証番号の入力でも受付が可能です。
マイナ保険証を利用できる医療機関や薬局は、以下のウェブサイトで確認できます。
マイナンバーカードの健康保険証利用 参加医療機関・薬局リスト( https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000850266.pdf )
出所:厚生労働省「マイナンバーカードの健康保険証利用について」
■過去の医療記録が全て記録される
過去に処方された薬や特定健診などのデータが連携されることで、より適切な医療が受けられます。
旅行先で医療機関にかかった時や災害時でも薬の情報などが共有されるため、正確な医療提供に役立ちます。
出所:厚生労働省「マイナンバーカードの健康保険証利用について」
■就職・転職・退職・引っ越しをしても健康保険証として使える
さまざまなライフプランの変化があっても、保険者の手続きが完了し次第マイナ保険証で医療機関の受診ができます。
国民健康保険や後期高齢者医療制度に加入している方は、定期的な被保険者証の更新が不要になるほか、高齢受給者証の持参も不要になります。
出所:厚生労働省「マイナンバーカードの健康保険証利用について」
■マイナンバー健康保険証にまつわる4つのデメリット
マイナ保険証の利用には、次に挙げる4つのデメリットがあります。
- 対応する医療機関が少ない
- 紛失や盗難による個人情報漏洩のリスク
- マイナンバーカードの有効期限に注意が必要
- 申請手続きが面倒
それぞれ詳しく解説します。
■対応する医療機関が少ない
2022年4月時点でマイナ保険証に対応している医療機関および薬局の数は全国で4万384件と少なく、マイナ保険証の手続きをしても活用できない場合があります。
当面は従来の保険証を持ち歩く必要があるでしょう。
■申請手続きが面倒
PCやスマホでの健康保険証申請には手間がかかります。
PCでマイナポータルにアクセスするには、マイナンバーカード対応のICカードリーダーが必要になります。
スマホでアクセスする場合は、お使いのスマホにマイナンバーカードの読み取り機能が付いていなければなりません。
そのほかセブン銀行ATMでも簡単に手続きできます。
■マイナンバーカードの有効期限に注意が必要
マイナンバーカード本体とマイナ保険証で利用する利用者証明用電子証明書は、それぞれ有効期限が異なります。
マイナンバーカードの有効期限は発行日から10回目の誕生日まで(20歳未満の方は5回目の誕生日まで)です。
一方、利用者証明用電子証明書は発行日から5回目の誕生日が有効期限です。
マイナンバーカードを保険証として利用するには、期日が到来したマイナンバーカード本体と利用者証明用電子証明書を都度発行しなければなりません。
出所:総務省「マイナンバーカード」
■紛失や盗難の場合は有料で再発行
マイナ保険証を紛失すると有料で再発行する必要があります。
板橋区を例に挙げると、マイナンバーカードの発行に800円、電子証明書も同時発行する場合は追加で200円となります。盗難の場合は手数料が免除される可能性もあります。
マイナンバーカードの再発行は手数料だけでなく、受け取りまでに約2ヵ月かかります。くれぐれも紛失しないよう注意が必要です。
■現状ではマイナ保険証利用のメリットは薄い
マイナ保険証の導入促進を目指して診療報酬が加算されていますが、これにより利用するメリットが霞んでいる感は否めません。
また従来の保険証は期限切れになると、被保険者の手元に新しいものが届きます。その反面、マイナ保険証は被保険者自身が発行手続きをするため倍の手間がかかります。
診療報酬やデメリットの大きさが解消されない限り、利用促進は難しいでしょう。
■参考資料
- 厚生労働省「令和4年度診療報酬改定について 1.個別改定項目について」( https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000905284.pdf )
- 厚生労働省「マイナンバーカードの健康保険証利用について~医療機関・薬局で利用可能~」( https://www.mhlw.go.jp/content/10200000/000577618.pdf )
- 厚生労働省「マイナンバーカードの健康保険証利用 参加医療機関・薬局リスト」( https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000850266.pdf )
- セブン銀行「健康保険証利用の申込み」( https://www.sevenbank.co.jp/personal/atm/mynumbercard.html )
- 総務省「マイナンバーカード」( https://www.soumu.go.jp/kojinbango_card/03.html#koufu )