■老後2000万円問題をわが家の問題として考えよう
帝国データバンクによると、2022年の値上げは1万8532品目でした。

出典:帝国データバンク「食品値上げ、年内「2 万品目」迫る 円安影響で記録的「値上げの秋」に 」
円安などコスト高を背景に価格改定を行うケースは引き続き増えると思われ、8月中にも値上げは2万品目を超えると予想されています。
今までこれほどの値上げを経験しなかったこともあり、不安を抱える方も多いのではないでしょうか。
特に年金収入のみとなると、相次ぐ値上げは家計へのダメージです。
現代は60歳代で働く人は多いですが、70歳代では仕事を辞めている方も多いでしょう。70歳代の貯蓄に視点を当ててみていきます。
■「70歳代の貯蓄」格差も。3000万円以上もっているのは何%?
今回は総務省の「家計調査報告(貯蓄・負債編)―2021年(令和3年)平均結果―(二人以上の世帯)」より、70歳以上の貯蓄額をグラフでチェックしていきます。

出典:総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)―2021年(令和3年)―(二人以上の世帯)」詳細結果表第8-30 表をもとにLIMO編集部作成
70歳代で貯蓄3000万円以上を保有している世帯は約50万世帯。およそ4世帯に1世帯は貯蓄を3000万円以上保有しています。
一方で、他の分布を見ると貯蓄2000~2500万円未満が約16万世帯。貯蓄100万円未満も約16万世帯です。
70歳代の貯蓄は二極化しており、早いうちからの計画的なマネープランが必要と言えるでしょう。
■70歳代の貯蓄「老後2000万円問題」を振り返る
2019年には、年金以外に貯蓄が2000万円必要という「老後2000万円問題」が話題となりました。

出典:金融審議会「市場ワーキング・グループ」(第21回)厚生労働省提出資料「iDeCoを始めとした私的年金の現状と課題」をもとにLIMO編集部作成
これは高齢夫婦無職世帯の実収入が20万9198円、実支出が26万3718円となり、その差が約5万5000円。老後を30年間と考えると、月の赤字だけで約2000万円足りないという試算です。
当時よりは物価も上がっているため、老後の必要額はさらに増える可能性があります。
とはいえ、あくまで上記は平均による試算であり、老後の必要額はご家庭によって異なります。
■年金の平均受給額はいくら?「老後2000万円問題」を考える
収入を見ても、夫婦で加入している年金により必要額は変わるでしょう。国民年金と厚生年金の平均額は以下の通り。
■国民年金(基礎年金)の平均年金月額
- 男性:5万9040円
- 女性:5万4112円
平均額:5万6252円
■厚生年金の平均年金月額
- 男子16万4742円
- 女子10万3808円
平均額:14万4366円
夫婦で国民年金であれば、より老後資金は必要になります。
また、上記は賃貸に住む人の家賃、旅行、趣味、リフォーム、病気、介護、身内との付き合い、万が一の時の備えなどの費用は入っていません。
ご家庭により、老後何にいくらかかるかは異なります。
- 月の収支から出る赤字(生活費の補填)
- 趣味や旅行、交際費など、老後生活を充実させるための費用
- リフォーム費用
- 病気や介護など万が一の時の備え
主に上記のような4点を出し、ご家庭に合った老後の必要額を出す必要があるでしょう。
■老後に備える方法も多様化へ
老後資金に備える方法も、現代では多様化しています。
預貯金だけではお金が増えない一方で、非課税で運用ができるiDeCoやNISA制度も用意されており、繰下げ受給が75歳までできるようになるなど公的年金の制度も変化しています。
老後資金に備える方法は「働き続ける、私的年金を作る、貯蓄する、運用を取り入れる、繰下げ受給をする」などさまざま。働き方一つとっても、現代では多様な方法があります。
1つの方法だけでは備えきれず、上記の複数の方法を選んで老後に備える方は多いでしょう。
大切なのは自分に合った、長く続けられる方法を選ぶこと。長期休暇など時間に余裕のある時に、老後の必要額の計算や、備える方法についてまずは情報収集してみてはいかがでしょうか。
■【ご参考】貯蓄とは
総務省の「家計調査報告」[貯蓄・負債編]「用語の解説」によると、「ゆうちょ銀行、郵便貯金簡易生命保険管理・郵便局ネットワーク支援機構、銀行及びその他の金融機関(普通銀行等)への預貯金、生命保険及び積立型損害保険の掛金(加入してからの掛金の払込総額)並びに株式、債券、投資信託、金銭信託等の有価証券(株式及び投資信託については調査時点の時価、債券及び貸付信託・金銭信託については額面)といった金融機関への貯蓄と、社内預金、勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計をいう。なお、貯蓄は世帯全体の貯蓄であり、また、個人営業世帯などの貯蓄には家計用のほか事業用も含める」とあります。
■参考資料
- 帝国データバンク「食品値上げ、年内「2 万品目」迫る 円安影響で記録的「値上げの秋」に 」( https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p220801.pdf )
- 総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)―2021年(令和3年)平均結果―(二人以上の世帯)」( https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00200561&tstat=000000330001&cycle=7&year=20210&month=0&tclass1=000000330007&tclass2=000000330008&tclass3=000000330009&stat_infid=000032191016&result_back=1&tclass4val=0 )
- 厚生労働省「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」(2021年12月)( https://www.mhlw.go.jp/content/000925808.pdf )