2022年10月から、一定以上の所得のある世帯では、児童手当の特例給付がカットとなるケースが出てきます。
目安としては、年収1200万円前後が所得上限限度額に引っかかりやすいラインとなります。
今回は、東京の子育て世帯の状況を確認しながら、児童手当の制度について理解を深めましょう。
■東京にお住いの年収1000万円以上の子育て世帯は2~3割
2017年(平成29年)度東京都福祉保健基礎調査「東京の子供と家庭」より、東京にお住いの子育て世帯の状況を確認してみましょう。
まず、世帯の子どもの人数は「2人」の割合が44.9%で最も高く、次いで「1人」が41.2%となっています。

出所:東京都福祉保健基礎調査「東京の子供と家庭」
次に就労状況をみてみると、61.5%が共働きという結果でした。
世帯の年収は、共働き・共働きでない世帯ともに「600~800万円未満」が約2割を占めており、最も高い割合になっています。
さらに、「1000~1200万円未満」「1200~1500万円未満」「1500万円以上」を合わせた「1000万円以上」の状況をみてみると、共働きの世帯の割合は、28.5%。共働きでない世帯の割合は18.0%となっています。

出所:東京都福祉保健基礎調査「東京の子供と家庭」
2022年10月より児童手当の特例給付がカットされるかどうかは、世帯主の年収が目安となります。夫婦の所得の合算ではない点に注意が必要です。
例えば、夫のみの収入で1200万円だった場合、児童手当の特例給付の対象から外れることがあります。しかし、夫の収入が800万円、妻の収入が400万円の世帯であれば、支給の対象になります。
上述の場合を考えると、年収1000万円以上の共働きでない世帯が、所得上限を超えてしまう可能性があります。
■児童手当はどんな制度なのか
児童手当は、中学生以下(15歳の誕生日後の最初の3月31日まで)の子どもがいる世帯に対して、現金が給付される制度です。
■児童手当の金額

出所:内閣府「児童手当のご案内」
子ども1人につき、3歳未満には月額1万5000円、3歳以上から中学生までには原則月額1万円が支給されます。
また、児童手当は、年に3回(6月・10月・2月)、それぞれの前月分まで4ヵ月分をまとめて支給となります。
■扶養親族2~3人なら「世帯主の年収が所得上限限度額の年収1162~1200万円」あたりに要注意
児童手当には所得制限が設けられているため、対象年齢の子どもがいても、すべての人が受け取れるわけではありません。
さらに2022年10月からは、所得上限限度額を超えた場合、特例給付は0円になります。
■所得制限限度額・所得上限限度額

出所:内閣府「児童手当のご案内」
2022年10月分からは、子どもを養育している人の所得が所得上限限度額を超えてしまうと、児童手当が支給されなくなります。
東京にお住いの人の場合、先述より、子どもの人数は2人、もしくは1人がほとんどを占めています。
そして、妻も年収103万円以下で扶養家族に入ると仮定すれば、扶養家族2~3人をモデルケースとして考えるのがよいでしょう。
それぞれの、所得制限限度・収入額の目安は以下のとおりです。
■扶養親族2人(子ども+妻)
- 所得制限限度額:698万円 収入額の目安:917万8000円
- 所得上限限度額:934万円 収入額の目安:1162万円
扶養親族が2人(子どもが10歳)の場合、世帯主の年収が917万8000円未満であれば1か月あたり「1万円」の児童手当が支給されます。
また、世帯主の年収が所得制限限度額の917万8000円~1162万円未満であれば「特例給付」が支給されます。
■扶養親族3人(子ども2人+妻)
- 所得制限限度額:736万円 収入額の目安:960万円
- 所得上限限度額:972万円 収入額の目安:1200万円
扶養親族が3人(子ども4歳と10歳)の場合、世帯主の年収が960万円未満であれば1か月あたり「1万円×2人=2万円」の児童手当が支給されます。
また、世帯主の年収が所得制限限度額の960万円~1200万円未満であれば「特例給付」が支給されます。
1人につき5000円が支払われるため「5000円×2人=1万円」を受け取れます。しかし、世帯主の年収が所得上限限度額の年収1200万円以上になれば、特例給付は0円となります。
■年収は目安、実際は「所得額」が判定基準となる
児童手当が支給対象になるかどうかについて、収入ベースでのお話をしてきました。しかし、実際の判定基準は、世帯主のさまざまな所得控除を差し引いた後の「所得額」です。
もし、年収が1162~1200万円あたりであれば、一度所得額を確認するようにしましょう。
所得額は、源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」欄に記載があります。確定申告をしている人であれば、確定申告書の「所得金額の合計」を確認しましょう。
■まとめ
所得額を確認した際、もし、児童手当の所得上限限度額ギリギリのラインであれば、源泉徴収票などの「所得控除」の対象となるものを確認しましょう。
「医療費控除」や「iDeCo」などが含まれる「小規模企業共済等掛金控除額」などは、所得控除の対象となります。所得控除を増やせば、所得額を抑えられます。その結果、児童手当を受け取れる可能性もでてきます。
■参考資料
- 東京都福祉保健基礎調査「東京の子供と家庭」( https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2018/10/31/13.html )
- 東京都福祉保健基礎調査「東京の子供と家庭 別紙」( https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2018/10/31/documents/13_01.pdf )
- 内閣府「児童手当のご案内」( https://www8.cao.go.jp/shoushi/jidouteate/annai.html )