負けてもゾンビのように這い上がる。投資界の「逆神」・岐阜暴威さんインタビュー[前編]
岐阜暴威(ぎふぼうい)さん

プロフィール

岐阜暴威(ぎふぼうい)さん
アラフォーの専業投資家&YouTuber。ジェイコム株の大量誤発注事件をきっかけに投資の世界へ足を踏み入れる。

これまでの入金金額は5,000万円近くに上るが、トータルで2,500万円近く負けており、生涯収支は大幅にマイナス。握ったポジションがことごとく予想と逆に動くため、ネット上では「逆神」と呼ばれる。YouTubeでは、自身のトレードを隠すことなく公開している。ハンドルネームの岐阜暴威は、20代後半ごろ、メインで発信していた2chの「投資一般」スレッド民につけられた(当時、ヤバいヤツに[暴威(ぼうい)]と名付ける風潮があり、岐阜出身のため「岐阜暴威」と名付けられた。今やYouTubeやXを中心に「岐阜暴威軍」と呼ばれる熱烈なファンがいる)。
X: 岐阜暴威 @gihuboy
YouTube: 岐阜暴威


[岐阜暴威さん]波乱万丈年表
負けてもゾンビのように這い上がる。投資界の「逆神」・岐阜暴威さんインタビュー[前編]
[岐阜暴威さん]波乱万丈年表

 FXで信じられないほどの損失を出し、ネット上では「逆神」と呼ばれる岐阜暴威さん。一発逆転を夢見て足を踏み入れた世界では、勝っては負けての繰り返し。今も2,500万円近くの損失を出している岐阜暴威さんが投資を始めたきっかけや、ハラハラドキドキの投資スタイルについて伺いました。


投資を始めて半年で100万円を失った!?

トウシル:岐阜さんは、豪快な負けっぷりを隠すことなくYouTubeやXで公開していて、勝っても負けても注目度が高いですよね。この間、トヨタの株が下落した時、Xユーザーから「お前がトヨタを買ったからだ」というとばっちりみたいな非難が殺到していて、すみません、笑いました(笑)。


岐阜暴威さん:はい(笑)。俺が買ったら株価が下がるから、買うなっていうクレームが来たりします(笑)。


負けてもゾンビのように這い上がる。投資界の「逆神」・岐阜暴威さんインタビュー[前編]
岐阜暴威さんのYouTube。人気順に並べると、盛大に負けた金額が大きい動画が上位に来る。勝っているときもあるのに…。

トウシル:YouTubeもXも、面白すぎて目が離せないんですが(笑)、そもそも、岐阜暴威さんが最初に投資を始めたきっかけを教えてください!


岐阜暴威さん:2005年12月に起きた「ジェイコム株の大量誤発注事件」がきっかけです。

当時、20代の若者が5億円や20億円ももうけたという話を聞いて「一発逆転のチャンスが来た!」と思って証券会社の口座を開設しました。今考えると、このジェイコム事件が全ての「諸悪の根源」です(笑)。


トウシル:その事件がなければ、こんなに負けることもなかったということですね…。当時は「FIREしたい!」といった考えがあったのでしょうか?


岐阜暴威さん:そうですね。当時の年収は330万円程度で、同じ会社で働き続けても年収500万円に到達できるかどうか…。その中で、同世代の若者が20億円も稼いだという話を聞けば、まともに働くよりも投資で一発当てた方がいいなと思いました。本当にチャンスが来たと思ったんですよ!


トウシル:一発逆転を夢見て始めた株式投資はいかがでしたか? 


岐阜暴威さん:たった半年で100万円を失いました…。そのタイミングで一度相場から退場したのですが、2008年に「やっぱり一発当てたい!」と復帰したところ、リーマン・ショックで全財産がゼロになるという…。


 そこで2008年の終わりごろに10万程度で投資できるFXを始めました。しかし、給料をもらって10万円を入金してはすぐにゼロにする日々が続きました(笑)。給料日に入金して翌日には貧乏という、本当につらい日々でしたね…。


トウシル:FXを始めた当初から負けていたのですね…。

生活も苦しかったのではと想像します。 


岐阜暴威さん:友達も彼女もおらず、同僚とも飲みに行かなかったので、そもそもお金を使う場面がなかったので、なんとか生活ができていたという状況でした。ジムに通っていたのですが、そのジムの月額1万円だけあれば特に困らず、給料が入ったらすぐ証券口座に入金していたので、物欲すら感じなくなっていました。


負けてもゾンビのように這い上がる。投資界の「逆神」・岐阜暴威さんインタビュー[前編]
警備会社の任意の社会保険が切れて、国民健康保険を払うようになり、支出が増えた、とぼやく動画。携帯ゲームの「にゃんこ大戦争」とジム代以外は、ふだんは質素な生活を送っている。40歳になると介護保険料が追加になり、固定支出が増えてしまうことにおびえている。

トウシル:とは言っても毎月お金がなくなるのは精神的にきつかったのではないでしょうか?


岐阜暴威さん:なぜか「来月は勝てる!」という不思議な自信が常にありました(笑)。入金して負け、気分転換においしいものを食べ、また翌月に入金して負けて…といったサイクルをひたすら繰り返していましたね。


今も300万円近くの含み損と「お付き合い」する日々

トウシル:大負けの初心者時代から20年が経った今、どのような投資を行っているのでしょうか?


岐阜暴威さん:本当にめちゃくちゃな状況です(笑)。CFDでは王道の日経225やダウ工業株30種平均ではなく、香港の指数をロングで持っていたり、ココアや天然ガス、原油などを取引したりしています。本来なら主要な指数だけを取引するべきなのですが、王道で負けると、どんどんマイナーな商品に手を出してしまう悪い癖がありまして…。


 FXでも同じで、米ドル/円のようなメジャーな通貨で負けると、誰も取引しないようなマイナー通貨に手を出してしまいます。現在はユーロ/豪ドルで130万円程度、豪ドル/NZドルで150万円程度の含み損を抱えています。特に、豪ドル/NZドルは去年の5月から保有し続けているので、もうすぐ1年のお付き合いになりますね…。


トウシル:損切りせずに持ち続けてしまうのはなぜでしょうか?


岐阜暴威さん:これは本当におかしな話ですが、30万円での損切りラインを設定していても、そこに近づくと「ちょっと待てよ」と考えてしまい、損切りラインを動かしてしまうんです…。


 当初は根拠のある損切りラインだったのに、それを超えてしまうと、もう根拠がなくなって手がつけられなくなります。

「50万円の損失なんて絶対に受け入れられない」と思っているうちに、どんどん損失が膨らんでいくような最悪の状況です。


 そのため、ルールとして「ポジションを取ったら逆指値を入れてチャートを見ない」と決めているのに、パチスロやジムの合間で1日500回くらいチェックしてしまいます(笑)。


 よく私のことを「逆神」と呼ぶ人もいますよね。私は利益が出るとすぐに利確し、含み損はずっと保有してしまうため、常に含み損を持っている「逆神」に見えるんです。


FXには24時間取引できる「罠」がある

トウシル:さまざまな投資商品を扱われている中で、現在はFXをメインに投資している理由は何でしょうか?


岐阜暴威さん:FXは24時間取引できるため、常にチャンスがあるように見えてしまうからです。しかし、これはチャンスのように見えて実はピンチなんです…。いつでも取引できてしまうのは、「FXの罠」だと思っています。月曜日の朝7時から土曜日の朝7時まで、ひたすら24時間労働が続くブラック企業状態です。


負けてもゾンビのように這い上がる。投資界の「逆神」・岐阜暴威さんインタビュー[前編]
寝ているときと食べているとき、ジムに行っているとき以外は板に張り付くブラック労働。ただ、投資が好きだから苦にはならない。勝った一瞬のエクスタシーを追い求める日々。

トウシル:岐阜暴威さんは、相場から離れることができないのですね…。市場が開く時間が決まっている株式取引に移行しようとは考えないのでしょうか?


岐阜暴威さん:実は常に考えています。2024年も トヨタ自動車(7203) の株を3,700円くらいで購入したのですが、そこから下落が続き、500円くらい下がったところで損切りをしました。結果的には2,200円くらいまで下がったので損切りして正解でしたが、去年は株式でも50万円ほど負けてしまいましたね。


トウシル:まさに逆神です…。

でも、FXでは難しいのに、株式投資では損切りできたのですね。


岐阜暴威さん:当時は他にも含み損を抱えていたので「これ以上含み損を増やすのは耐えられない!」と思い、勢いで損切りしました。損切りしたというよりは、損切りせざるを得なかったという方が正しいです…。


どんなに負けてもゾンビのごとく復活し続けてきた

トウシル:これまで激しく収支の増減を繰り返されていると思いますが、投資の生涯成績を教えてください。


岐阜暴威さん:これまで約4,800万円を入金して、現在の資産が2,300万円程度なので、トータルで2,500万円ほどのマイナスですね(笑)。いや、こんな明るく振る舞っていますけど、かなりきついですよ(笑)。今日も冷や汗ダラダラで東京まで来ました。


トウシル:想像以上に大きな負けですね…。でも勝った時もあるから、投資を続けてこられたんですよね? これまでの投資人生で、一番勝ったときと負けたときのことを聞かせてください。


岐阜暴威さん:これまでで一番勝ったときは2013年11月ごろで、4,600万円まで資産を増やすことができました。しかし、2015年のチャイナ・ショックでほぼ全額を失って、10万円程度になりましたが…。当時は専業でトレーダーをしていたのですが、さすがに生活できないと思って警備会社に再就職し、配信による副業収入なども得ながら、少しずつ入金を続けていましたね。


 その後も2020年4月のコロナ・ショック時にまた資産がゼロ近くになりました。原油価格がマイナス36ドルまで下落した伝説の時期に「ここで買えば大丈夫だ!」と思って取引したものの、さらなる下落に耐えきれずロスカットされ、資産が7~8万円まで減ってしまいました。


トウシル:4,600万円から10万円まで減るのは考えただけで恐ろしいです…。そこから今にはどのように至るのでしょうか?


岐阜暴威さん:2022年に入ってから8カ月連続で勝つほどの好調を維持し、9月に退職してまた専業のトレーダーに戻ることを決意しました。1,000万円くらい勝ったので「これはいける!」と思った矢先、退職する月に300万円ほど負けて、さらに翌月に600万円負けるという、どん底を経験しました。


 そこからまた地道に入金を続けて資産を増やし、2024年は一時2,950万円まで回復しました。しかし、再び成績が悪化して1,500万円まで下がり、現在は少し持ち直して2,300万円ほどになっています。負けを数えると本当にきりがありませんね。


トウシル:後編では、大きな勝ちと負けを繰り返してきた岐阜暴威さんの「メンタルの保ち方」などについても伺います!


後編「 こんなに負けても今が幸せ、FIREしても相場からは離れない!投資界の「逆神」・岐阜暴威さんインタビュー[後編] 」へ続く


(トウシル編集チーム)

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