ソニーグループの2025年3月期3Qは、17.7%増収、1.3%営業増益。ゲーム、音楽が順調で、映画が回復に向かっている。

2025年10月には金融事業を上場させ、ソニーグループからは実質的に切り離す予定。目標株価を引き上げる。


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著者の今中 能夫が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 決算レポート:ソニーグループ(PS5の「次」はいつか。「Switch 2」と競合する?) 」


毎週月曜日午後掲載


本レポートに掲載した銘柄 ソニーグループ(6758、東証プライム)


ソニーグループ


1.ソニーグループの2025年3月期3Qは、17.7%増収、1.3%営業増益

 ソニーグループ(以下ソニー)の2025年3月期3Q(2024年10-12月、以下今3Q)は、売上高4兆4,095.74億円(前年比17.7%増)、営業利益4,693.31億円(同1.3%増)となりました。


 営業利益は前年比でほぼ横ばいでしたが、これは金融事業が大幅減益になったためで、主力事業のゲーム&ネットワークサービス事業、音楽事業はクリスマス商戦の効果もあって順調に伸びました。映画はハリウッドのストライキの影響で前年比では減益でしたが、今2Q比では増益となり回復へ向かっています。


表1 ソニーグループの業績
ソニー2026年3月期、10%営業増益を予想し目標株価4100円。PS5の次はいつ?スイッチ2と競合する?
株価 3,345円(2025/4/4)発行済み株数 6,025,184千株時価総額 20,154,240百万円(2025/4/4)単位:百万円、円出所:会社資料より楽天証券作成注1:当期純利益は当社株主に帰属する当期純利益。注2:発行済み株数は自己株式を除いたもの。

2.セグメント別動向-ゲーム、音楽の伸びが続く-

1)ゲーム&ネットワーキング

 今3Qは売上高1兆6,823.30億円(前年比16.5%増)、営業利益1,180.63億円(同37.1%増)となりました。前年同期に大ヒットした「Marvel's Spider-Man 2」(自社製ソフト)の反動はありましたが、ネットワークサービス、サードパーティソフトの増収、PS5の日本での値上げやPS5Pro発売(2024年11月)によるハードウェア損益の改善が寄与しました。


 今4Qは前年同期の「HELLDIVERS 2」の大ヒットの反動があり、大幅減益になる見込みですが、一方で、サードパーティソフトの「モンスターハンターワイルズ」(カプコン、2025年2月28日発売)が大ヒットしています。今3Qの好調を見て、2025年3月期通期会社予想は、前回の売上高4兆4,900億円(前年比5.2%増)、営業利益3,550億円(同22.3%増)から、売上高4兆6,100億円(同8.0%増)、営業利益3,800億円(同31.0%増)へ上方修正されました。


 来期2026年3月期も順調な伸びが予想されます。

任天堂が新型機「ニンテンドースイッチ2」を2025年6月5日に発売する予定ですが、ソニーはPS5の「次」について何のコメントもしていません。ゲームにおける任天堂とソニーの市場は、ユーザーの重複はあるものの大きく重ならないと思われます。PS5は、主にマイクロソフトのXboxと競合しますが、マイクロソフトはXboxのハード、ソフトをパソコン向けソフトと一体で運営しており、ソフトウェアのほぼ全てでXbox向けとパソコン向けを同時発売しています。ソニーも一部の自社製ソフトでパソコン向けを発売していますが、PS5向けとしての特色も出しています。要するに、ニンテンドースイッチ、PS5、Xboxは各々異なる方向に進んでいるということです。


 報道ではマイクロソフトはXboxの次世代機を2027年に発売するとしていますが、これが事実ならPS5の次も2027年発売と思われます。そのため、2026年3月期は次世代機発売前のハードの買い控えと端境期を気にする必要はなく、PS5Proが牽引する形でソフト販売の好調が予想されます。大型タイトルでは「Ghost of Yotei」、「Death Stranding」続編などの発売が予定されています。


表2 ソニー:セグメント別業績(四半期)
ソニー2026年3月期、10%営業増益を予想し目標株価4100円。PS5の次はいつ?スイッチ2と競合する?
単位:100万円出所:会社資料より楽天証券作成注:売上高は内部取引を含む。

2)音楽

 今3Qは売上高4,816.94億円(前年比14.1%増)、営業利益974.24億円(同28.0%増)と順調でした。楽曲のストリーミング向けが順調に伸びています。各ストリーミングサービスの顧客は成熟化しており、ARPU(ユーザー1人当たり売上高)が伸びています。


 また、ゲーミング(主に「Fate/Grand Order」)はイベントが奏功し増収となりました。


 今3Qの実績を見て、2025年3月期通期会社予想は前回の売上高1兆7,400億円(同7.5%増)、営業利益3,300億円(同9.4%増)から売上高1兆7,900億円(同10.6%増)、営業利益3,400億円(同12.7%増)へ小幅ですが上方修正されました。


 来期も業績順調が予想されます。


3)映画

 今3Qは売上高3,982.24億円(前年比8.7%増)、営業利益340.25億円(同18.3%減)となりました。2023年5~11月に起こったハリウッドのストライキの影響がまだ残っています。ただし、公開作品が順次増加しているため、今4Qは前年比、前四半期比ともに増収増益に転換する見込みです。アニメ配信サイト「クランチロール」の寄与も大きくなっている模様です。


 来期は、ストライキの影響が消えると思われるため、通期ベースで増収増益が予想されます。


 ソニーグループはKADOKAWAに出資し、同社の筆頭株主になりました。KADOKAWAのIP創出能力に魅力を感じた模様です。今後の展開が注目されます。


4)イメージング&センシング・ソリューション

 今3Qは売上高5,009.18億円(前年比0.8%減)、営業利益975.45億円(同2.2%減)となりました。スマートフォン向けが減収になりましたが、円安効果で相殺しほぼ横ばいの業績でした。今1Q、2Qは業績好調だったため、通期では順調な業績になる見込みです。


 来期もスマートフォン向けの大判化と高付加価値化で順調な伸びが期待できます。米国の関税引き上げについては、米国内の在庫を積み増しており、当面は対応できそうですが、高率関税が長期化する場合の影響は不透明です。


5)その他

 エンタテインメント・テクノロジー&サービス(テレビ、ヘッドフォン、一眼カメラなど)は伸びはありませんが、堅調です。ただし、今4Qは一段のコストダウンのために費用がかさむため、赤字になる見込みです。


 金融事業はソニー生命の前年同期の市況変動による大幅増益の反動で大幅減益になりました。2025年3月期通期でも減収減益が予想されます。


 ソニーフィナンシャルグループは2025年10月を目途に上場する予定です。上場後、ソニーフィナンシャルグループがソニーの持ち分法会社になるのか、単なる出資先の一つになるのかまだ不明ですが、ソニーグループ経営者の経営責任はなくなるか、これまでよりも軽くなると思われます。経営の自由度が大きく上昇すると思われます。


6)2025年3月期、2026年3月期業績予想

 今3Qの実績を見て、会社側は2025年3月期を前回の売上高12兆7,100億円(前年比2.4%減)、営業利益1兆3,100億円(同8.4%増)から売上高13兆2,000億円(同1.4%増)、営業利益1兆3,350億円(同10.4%増)へ上方修正しました。楽天証券予想も会社予想と同じとします。


 また、楽天証券では2026年3月期を売上高13兆5,000億円(同2.3%増)、営業利益1兆4,700億円(同10.1%増)と予想します。売上高を若干上方修正して営業利益は据え置きました。金融事業の2026年3月期業績予想を上期分のみとして下方修正しました。また、ゲーム&ネットワークサービスを大幅上方修正しましたが、これは2026年3月期は優良ソフトが牽引することが予想されるためです。


表3 ソニー:セグメント別業績(通期)
ソニー2026年3月期、10%営業増益を予想し目標株価4100円。PS5の次はいつ?スイッチ2と競合する?
単位:100万円出所:会社資料より楽天証券作成

3.今後6~12カ月間の目標株価は、前回の4,000円から4,100円に引き上げる

 ソニーグループの今後6~12カ月間の目標株価を4,100円とし、前回の4,000円から引き上げます。


 今回の株価下落の前には、直近高値3月27日終値3,862円、2025年3月期会社予想ベースで予想PER(株価収益率)21.6倍まで評価されていました。この評価を楽天証券の2026年3月期予想EPS(1株当たり利益)196.7円に当てはめました。


 ゲーム、音楽、映画が業績順調です。また、金融事業を切り離すことによって経営の自由度が大きく向上であろうことを評価したいと思います。


 中長期で投資妙味を感じます。


本レポートに掲載した銘柄 ソニーグループ(6758、東証プライム)


(今中 能夫)

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