
6月の中小型株ハイライトは「地合い堅調も半導体ラリーにかすむ」
やはり6月は今年も強かった。5月に株を売れ(セル・イン・メイ)は禁止…。今年も6月はそんなトラックレコードを残しました。
中小型主要指数はいずれもプラスでしたが、月末に爆上げした日経平均株価(6月月間騰落率+6.6%)がベストパフォーマーでした。日経平均の6月24日から月末30日までの5連騰は圧巻で、4万円の大台を突破するなど異様な雰囲気に。
トランプ関税売りを乗り越えた日経平均でしたが、5月中旬から上昇にブレーキがかかる状況は続きました。「3万8,000円の壁」なんて表現が生まれるほど、上値の重たい日経平均。
この時期、強硬な通商政策の姿勢を見せるも、延期を繰り返すトランプ米大統領に対する関心も低下。TACO(トランプはいつも最後はビビって引く)なる造語が流行し、トランプ米大統領の発言に一喜一憂することもなくなりました。
結果、相場を動かすネタ不足に陥り、プライム市場の大型株の売買が連日のように減少。値動きが悪い&薄商いのプライム市場を見限り、短期マネーがグロース市場の中小型株や、スタンダード市場のメタプラネットを代表とする人気株の一角にシフトする動きになりました。
東証グロース市場250指数が取引時間中の高値を付けたのは6月13日。ここから調整モードに転じた理由は、停滞していたプライム市場の大型株の変化でした。中東情勢の緊迫化という地政学的リスクの高まりは、リスクオフで株売り要因と考えられます。
この局面では「日本株全部(東証株価指数:TOPIX)買い」といった雰囲気ではなく、明らかな「質への逃避」特化型。日本株市場で流動性が高い大型のクオリティ株である半導体関連(アドバンテストやディスコなど)、有力IPを有するコンテンツ株(任天堂やスクウェア・エニックスホールディングスなど)に資金が流入。
米中閣僚協議で半導体規制の緩和に期待感が広がり、エヌビディアが時価総額で世界トップに返り咲きます。その後にエヌビディアが最高値を更新すると、日本の半導体関連株には出遅れ感すら広がり、ひさびさの半導体ビッグラリーが発生しました。
アドバンテストが6月の月間上昇率45%を記録したのを皮切りに、ソフトバンクグループ同38%、レーザーテック同33%、ディスコ同30%と爆上げ乱立。
【東証グロース】時価総額上位の5月・6月騰落率 コード 銘柄名 5月
騰落率 6月
騰落率 141A トライアルHD ▲5% 6% 4478 フリー ▲10% 6% 215A タイミー 3% 17% 7157 ライフネット生命保険 16% 10% 4592 サンバイオ 51% ▲20% 2160 ジーエヌアイG 82% ▲20% 7806 MTG 18% 16% 9166 GENDA ▲13% ▲7% 5253 カバー ▲5% 11% 290A Synspective 23% ▲33%
資金が大型グロース株へ回帰する一方、真裏の存在にあるバリュー株には資金が流れず二極化現象は加速。個人マネーも半導体株など値動き良好な大型株に向かい、中小型グロース株の売買は月末にかけて減少傾向となりました。
また、東証グロース市場でいえば、「上がるから買う、買うから上がる」というサイクルが重要。地合いを判定する指標である「東証グロース市場250指数」の上昇こそが「客寄せパンダ」の側面を持ちます。
それでいえば、5月まで指数上昇をけん引していたのは、文句なしで ジーエヌアイグループ(2160) と サンバイオ(4592) のバイオ二大巨頭でした。この2銘柄が、6月はそろって月間騰落率マイナス20%と利益確定売りに押される展開に。
先行する新薬のパイプラインで脚光を浴びていたサンバイオは6月25日、外傷性脳損傷の治療製品「アクーゴ」の製造販売に関し、承認の取得時期が従来の2025年5~7月から2025年8月~2026年1月に遅れるとの見通しを発表しました。
販売開始の時期が半年程度後ズレするとみられることを嫌気。翌26日のストップ安(17%安)が指数の大幅安に影響し、「上がるから買う」の機運を鎮める要因となりました。
新NISAで中小型株!今月の銘柄アイデアは…「夏枯れ逆流相場なら『出遅れ割安株』のターンに」
5月から中小型株、とくに中小型のグロース株が輝きを放ち、人通りも明らかに回復していましたが…半導体株が活況になり、日経平均がレンジ上放れに成功した途端、サーっと引いていったのが実情です。

売買代金が最もシンプルな状況把握の指標になる東証グロース市場。それでいえば、東証グロース市場の売買代金で「2,000億円」が人気の目安となるボーダーラインとされます。これを5月27日から6月末まで続けたのですが、月が替わった7月1日にストップ(2,000億円割れ)しました。
日経平均が爆上げを始めるタイミングで、日経平均に逆行安し始めた東証グロース市場。結局、日経平均の上値が重く、売買が減った時期に中小型グロース株が輝いたことから察するに、プライム市場が停滞している時期の「幕間つなぎ」だったり「箸休め」だっただけでは?という思いが拭えなくなってきました…。
売買代金は2,000億円を下回ったのですが、これも東証グロース市場250指数が5月27日以来の低水準に落ちた日でした。その5月27日が売買代金2,000億円超え連続発生の起点でしたので、値動きが悪化したことで人が減ったということなのでしょう。
株価が高い時期に売買が膨らみ、その後の株価が下落で高値圏にシコリを残した人気銘柄が続出。
相場イベントで日程が見えているところでは、7月9日の米国の相互関税の再開予定日までの動向に注目。月が替わった2日の早朝、トランプ米大統領が日本に向けて、「30%か35%か決める数値に応じて関税を払ってもらう」といったけんか腰の発言をしています。どうせ最後は引いてくれる(TACO)的な楽観ムードはありそうですが、現時点では不透明要因。
こちらについては、極論かもしれませんが、関税リスクを嫌っていた時期に中小型グロース株に資金が向かったことから、意外にネガティブ通過の方が中小型株にはプラスとなる可能性も…。なお、7月20日に参議院選挙の投開票があります。こちらはいかなる結果でも、中小型株の地合いに大きな影響を及ぼさないとみています。
中小型グロース株見直しの流れが一服し、宇宙関連(QPS研究所など)、バイオ関連(ジーエヌアイグループ、サンバイオなど)、ドローン関連(Liberawareなど)、サイバーセキュリティ関連(FFRIセキュリティ、ZenmuTechなど)といった人気銘柄が同時調整。6月中旬まで盛り上がった株が売られる逆流現象が見えています。
これは、プライム市場、そして米国株市場でも月が替わった7月から発生。半導体株や大型ゲーム株が売られる一方、出遅れていたバリュー株が買われています。米国株市場では、最高値だったエヌビディアやマイクロソフトが売られ、出遅れていたユナイテッドヘルスのようなディフェンシブ株が買われています。
今回は、6月の指数上昇局面で出遅れていた割安株に循環物色が来ると想定し、予想株価収益率(PER)、株価純資産倍率(PBR)や配当利回りなどバリュー指標の低い株の中から、循環物色の受け皿になり得る時価総額、流動性の基準を満たす銘柄をピックアップ。
スタンダード、グロース市場の全銘柄を対象としてスクリーニングをかけましたが…全ての条件に該当するのはスタンダード銘柄だけでした。
6月は今年で3年連続上昇した東証グロース市場ですが、7月は昨年まで2年連続で下落(2023年7月マイナス4.8%、2024年7月マイナス2.0%)。その2年間のスタンダード指数は2023年が同+0.3%、2024年が同マイナス0.8%と底堅く推移していました。夏バテ相場は、割安なスタンダード銘柄でしのぐが吉!?
循環物色に注目!6月に出遅れた割安中小型株
【条件】(1)6月のパフォーマンスが市場平均以下
(2)予想PERが市場平均以下
(3)PBR1.5倍未満、配当利回り2%以上
(4)売買代金25日平均が5000万円以上
(5)時価総額が300億円以上
※7月2日時点、時価総額大きい順 コード 銘柄名 6月
騰落率 予想
PER
(倍) PBR
(倍) 8572 アコム 3% 9.1 1.0 4966 上村工業 1% 14.1 1.4 6670 MCJ ▲1% 10.3 1.4 8131 ミツウロコグループHD ▲1% 12.8 1.1 7287 日本精機 1% 10.1 0.4 6877 OBARA GROUP 2% 8.6 0.8 8508 Jトラスト 2% 8.4 0.4 9028 ゼロ ▲5% 7.2 1.3 5184 ニチリン ▲3% 7.8 0.8 3299 ムゲンエステート ▲4% 6.8 1.4 8844 コスモスイニシア 3% 6.9 0.9 287A 黒田G 0% 9.8 1.0 7229 ユタカ技研 ▲4% 8.8 0.4 7463 アドヴァンG 0% 5.1 0.5 9632 スバル興業 ▲14% 11.4 1.0 6249 ゲームカード・ジョイコHD -2% 9.5 0.6 6915 千代田インテグレ 0% 10.2 0.7 6223 西部技研 2% 9.9 1.1 2780 コメ兵HD ▲2% 6.6 0.9 8596 九州リースサービス 1% 7.2 0.6 7932 ニッピ 2% 11.5 0.8
(岡村 友哉)