レーザーテックの2025年6月期4Qは、46.8%増収、87.2%営業増益。検収が増えたため大幅増収増益。
※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の今中 能夫が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 レーザーテック(2025年6月期は受注が大幅減だったが、会社側は2026年からの回復を見込む) 」
毎週月曜日午後掲載
本レポートに掲載した銘柄: レーザーテック(6920、東証プライム)
1.レーザーテックの2025年6月期4Qは、46.8%増収、87.2%営業増益。
レーザーテックの2025年6月期4Q(2025年4-6月期、以下前4Q)は、売上高826.42億円(前年比46.8%増)、営業利益435.52億円(同87.2%増)となりました。前3Q決算発表時の前4Q会社予想、売上高711.65億円(同26.4%増)、営業利益247.09億円(同6.2%増)を大幅に上回りましたが、これは検収が予想以上に進んだこと、1年前の2024年6月期4Qが納入、検収が少なかったため減収減益となったこと、会社想定(2025年6月期通期前提は1ドル=140円)よりも為替が円安(2025年4-6月期は概ね1ドル=144円)になったことによります。
この結果、2025年6月期通期は、売上高2,514.77億円(前年比17.8%増)、営業利益1,228.43億円(同51.0%増)となりました。
売上高の内訳を通期ベースで見ると、ACTIS(「ACTIS A150」と「同A300」。いずれもEUV露光装置向けフォトマスク欠陥検査装置)は、2024年6月期982億円→2025年6月期1,148億円に増加、MATRICS(EUV露光装置の1世代前のDUV(ディープUV)光対応のフォトマスク欠陥検査装置)は、同573億円→506億円と減少しました。また、ACTIS、MATRICS以外の半導体関連装置(その他)は、同260億円→374億円と増加しました。装置の累計販売台数の増加に伴ってサービスも増加しており、同289億円→429億円となりました。
表1 レーザーテックの業績

表2 レーザーテック:四半期売上高

表3 レーザーテックの受注高、受注残高内訳

表4 レーザーテックの売上高、受注高内訳

2.2025年6月期受注高は大幅減。ただし、会社側は2026年暦年からの回復を見込む。
2025年6月期は売上高は好調でしたが、受注高は大幅減となりました(2025年6月期より受注高、受注残高は通期ベースのみ開示)。
通期受注高は2024年6月期2,727.68億円→2025年6月期1,052.26億円へ大幅に減少しました。内訳をみると、ACTISが同1,433億円→マイナス105億円となり、前4Qに推定1台、ACTISのキャンセルがあったこと、受注見込みだったACTIS(推定1台)が受注できなかったことによりマイナス受注高になりました。
一方で、MATRICSは同481億円→453億円と減少はしましたが高水準を維持しました。ACTIS、MATRICS以外の半導体関連装置(その他)は同441億円→210億円へ減少しました。
この結果、全社受注残高は2024年6月末4,621.95億円から2025年6月末3,159.45億円へ減少しました。
会社側は2026年6月期受注高について、2026年暦年に入って回復し、2027年暦年も増加するとしています。2026年6月期受注高は、2025年6月期以上、2024年6月期以下としています。大雑把に言えば、1,000~2,700億円となり、レンジ平均値は1,850億円となります。
会社側では、ACTISの受注は、ナノからオングストロームへの微細化の進展によって、2026年に入って回復し、2027年もその回復が続くと見ています。まず、2025年後半から量産開始(ウェハ投入開始)予定の2ナノ、TSMCが2026年後半から量産開始する予定のA16(1.6ナノ)、同じくTSMCが2028年後半量産開始予定のA14(1.4ナノ)が重要になると思われます。A16までは従来型の「ACTIS A150」が生産ライン向けとマスクショップ(半導体工場の中にあってフォトマスクの生産と検査を行う部署)向けに受注と売上高が回復し、A14からはACTISの最新型であるHigh-NA型EUV露光装置対応の「ACTIS A300」の受注が本格的に増えると思われます。
また、ディープUV光対応のMATRICSは、3ナノ以前の半導体や成熟半導体の生産が堅調と予想されるため、一定の需要が期待できると思われます。
楽天証券ではこの見方を元にして、レーザーテックの2026年6月期を会社予想と同じ売上高2,000億円(前年比20.5%減)、営業利益850億円(同30.8%減)、2027年6月期を売上高2,400億円(同20.0%増)、営業利益1,100億円(同29.4%増)と予想します。
また参考値ですが、2027年も受注が増加するという前提で、2028年6月期を、売上高2,900億円(同20.8%増)、営業利益1,400億円(同27.3%増)と予想します。
今後の微細化の進展と2026年からの受注回復を前提とするならば、2026年6月期は減収減益予想ですが、2027年6月期以降は順調な業績が予想されます。
なお、レーザーテックの受注高とASMLホールディングの受注高は完全に連動して動いているわけではありませんが、ある程度トレンドは似ています。グラフ1とグラフ2を比較すると、レーザーテックの2025年6月期受注高は減少しすぎた可能性があります。その場合、2026年6月期に受注高は一定のリバウンドが期待できると思われます。
表5 レーザーテックの売上高内訳:通期ベース

グラフ1 レーザーテックの受注高

グラフ2 ASMLホールディングの新規受注高

3.今後6~12カ月間の目標株価は、前回の2万4,000円を維持する。
レーザーテックの今後6~12カ月間の目標株価は、前回の2万4,000円を維持します。
楽天証券の2027年6月期予想1株当たり利益(EPS)860.4円に今後の成長を期待して想定株価収益率(PER)25~30倍を当てはめました。
2025年6月期受注高は大幅に減少しましたが、減少しすぎた感があること、2027年6月期以降の成長回復を考慮すると株価が割安になっていると思われること、後述の配当維持と自社株買いを考慮しました。
引き続き中長期で投資妙味を感じます。
なお、2026年6月期年間配当は2025年6月期と同じ329円となる見込みです。また、上限120億円、100万株の自社株買いを行います(取得期間は2025年8月8日~2025年12月31日)。
本レポートに掲載した銘柄: レーザーテック(6920、東証プライム)
(今中 能夫)