先週は米国の物価指標が一部上振れたものの、悪い景気指標も逆に9月利下げ期待で米国株は上昇。日本株は乗り遅れ恐怖感や堅調なGDP発表で全面高でした。
週後半のジャクソンホール会議まで様子見!?日銀の早期利上げ台頭でも「日本買い」続く?
今週は史上最高値圏にある日米の株価がさらに続伸できるかが最大の注目ポイントです。
週の後半、8月21日(木)からは米国ワイオミング州ジャクソンホールに各国の中央銀行総裁などが一堂に会し、金融政策について議論するジャクソンホール会議も開催されます。
22日(金)にはこの会議で、米国の中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が講演予定です。
先週13日(水)には、ベッセント財務長官が米国の政策金利は現状より1.5~1.75%低くあるべきで、9月17日(水)終了の次回米連邦公開市場委員会(FOMC)では通常の倍の0.5%の利下げが望ましいと口先介入しています。
それだけに、パウエル議長がトランプ政権の圧力に屈して、これまで否定的だった9月利下げを認めるかどうかに注目が集まります。
パウエル議長が早期利下げ容認に転じた場合、株価が続伸しそうです。
ただ米国の中央銀行総裁がトランプ大統領の圧力に屈したことや9月利下げ期待に関する材料出尽くしで、日米の最高値相場が調整局面入りする可能性もないとは言い切れません。
逆にパウエル議長が先週14日(木)発表の7月卸売物価指数(PPI)が予想を超える伸びだったことなどを理由に早期利下げに否定的な見解を示すと、米国株はここまで9月利下げを確実視して上昇してきただけに株価急落につながるかもしれません。
毎年、8月後半のジャクソンホール会議前後には相場の急変が起こりやすいので注意が必要です。
先週の記事では「日本株は決算通過で一服?」と予想しましたが、 それとはまったく逆の大規模な「日本買い」が進みました。
先週の日経平均株価(225種)は前週末比1,557円(3.7%)高の4万3,378円まで上昇し、昨年2024年7月11日につけた史上最高値を難なく突破しました。
最高値更新の背景には、トランプ関税に対する過度の警戒感が和らぎ、15日(金)発表の日本の2025年4-6月期の実質国内総生産(GDP)が市場予想を上回る前期比年率換算1.0%成長と5四半期連続プラスだったことがあります。
一方、米国株も機関投資家が運用指針にするS&P500種指数が前週末比0.94%高となるなど主要3大株価指数がいずれも過去最高値圏にあります。
ただし、今週はジャクソンホール会議に向けてさすがに様子見が続く横ばいの展開も予想されます。
20日(水)には7月30日に5会合連続の金利据え置きを決めた前回のFOMCの議事録が公開されます。
会合では11人の理事のうち、トランプ大統領と同じ早期利下げ派の2人が反対票を投じており、前回FOMCで早期利下げの道筋についてどんな議論が交わされたかに注目が集まりそうです。
先週15日(金)(現地時間)には米国トランプ大統領とロシア・プーチン大統領が米国アラスカ州で直接会談しましたが、経済制裁までの時間稼ぎに成功したロシア側の外交的勝利といえる結果でした。
18日(月)(現地時間)にはトランプ大統領とウクライナ・ゼレンスキー大統領の会談も予定されていますが、停戦協議は難航すると見られ、株式市場への影響は限定的でしょう。
14日(木)の米国7月PPIが予想以上の伸びだったこともあり、トランプ関税による物価高を反映して、米国の長期金利の指標となる10年国債は4.3%台まで上昇。
しかし、日本の10年国債の金利も1.57%台まで急伸したため、先週のドル/円の為替レートはほぼ横ばいの1ドル=147円10銭台で終了
株価にとって心地よい円安水準が続いているため、今週、日経平均株価が一気に4万4,000円の大台に到達する可能性もありそうです。
お盆明けとなる18日(月)の日経平均は4万3,452円でスタート。一時は史上最高値を更新、前週末からの続伸となる4万3,714円で終えました。
先週:米国9月利下げ期待で最高値相場続く!金利上昇で銀行株が急騰!
先週は12日(火)発表の米国7月消費者物価指数(CPI)が前年同月比2.7%の伸びと予想を下回ったこともあり、9月の早期利下げがさらに確実視され、米国株は続騰しました。
15日(金)発表の7月小売売上高は予想をわずかに下回る前月比0.5%増でしたが、前月6月分が大きく上方修正され、米国の個人消費の堅調ぶりが確認されたことも株高に貢献しました。
ただ、14日(木)発表の7月PPIが予想を大幅に上回る前月比0.9%上昇、前年同月比では3.3%の高い伸びとなり、15日(金)発表のミシガン大学消費者信頼感指数の8月速報値が予想を下回るなどトランプ関税の悪影響を感じさせる経済指標もありました。
さらに中国政府が自国の企業に対して、米国高速半導体メーカー・ エヌビディア(NVDA) の中国向け人工知能(AI)半導体を使わないように要請したという報道も流れ、エヌビディア株が前週末比1.23%下落。
米国の半導体製造装置メーカーの アプライド・マテリアルズ(AMAT) がトランプ関税による米中貿易摩擦で今後の悲観的な業績見通しを発表して前週末比13%も急落するなど、これまで相場をけん引してきた半導体関連の一角にはネガティブなニュースも流れました。
しかし、15日(金)には米国著名投資家ウォーレン・バフェット氏の投資会社バークシャー・ハサウェイ(BRK)が株価低迷の続いていた医療保険サービス会社の ユナイテッドヘルス・グループ(UNH) 株を16億ドル(約2,350億円)購入していたことが判明。
ユナイテッドヘルス・グループ(UNH)株は週間で21.2%も上昇し、同社が構成銘柄になっているダウ工業株30種平均が15日の取引時間中に一時、史上最高値を上回る原動力になりました。
一方、日本株では 三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306) が前週末比11.5%高となるなど、金利上昇が収益増加に貢献する銀行株が週間の業種別上昇率で突出した1位になりました。
15日(金)発表の2025年4-6月期のGDPが堅調なプラス成長となり、日本銀行が利上げを行いやすい環境になったことで、銀行業、保険業、証券・先物取引といった金融セクターが最高値相場をけん引しました。
個別株では、2025年4-6月期決算が減益だったものの、市場予想よりは良かったという理由で牛丼チェーン「すき家」運営の ゼンショーホールディングス(7550) が32.5%も上昇。
インフレによる商品値上げで収益拡大の続くゼンショーHDなど外食、小売り、流通関連株はここまで株価上昇が続いています。
その背景には、株価上昇に乗り遅れる恐怖感(Fear Of Missing Out)の頭文字をとった「FOMO(株価上昇に乗り遅れまいとする買いで上昇する)相場」の継続があるようです。
海外事業が好調で2025年4-6月期の営業利益が前期比88%増となり、通期業績見通しを上方修正した サンリオ(8136) も31.3%上昇。
トランプ関税の悪影響を受けにくいキャラクターやゲーム、アニメなど海外でも人気のコンテンツ関連株も相変わらず絶好調でした。
今週:利下げ要求の包囲網の中、ジャクソンホール会議迫る。パウエルFRB議長が利下げ容認するなら株価続伸?
今週、米国では19日(火)の7月住宅着工件数、21日(木)の7月中古住宅販売件数など、価格高騰で落ち込みが続いている住宅関連指標が発表されます。
週後半には相場の転換点になりやすいジャクソンホール会議も控えています。
これまで利下げに対して様子見姿勢を貫き、トランプ大統領から「遅すぎる男」というレッテルを貼られたパウエルFRB議長。
彼が22日(金)のジャクソンホールでの講演で、中央銀行総裁がトランプ大統領の圧力に屈したという負のイメージを与えないまま、合理的な経済見通しに基づく早期利下げ容認論を打ち出せるかが鍵となるでしょう。
米国では景気指標が悪化傾向にあり、物価高はそれほど進んでいません。
そんな中、パウエルFRB議長が利下げに慎重な姿勢をかたくなに押し通した場合、トランプ大統領だけでなく株式市場も、パウエル議長の手腕に疑問を抱き、株価が急落する恐れもないとはいえません。
日本では先週、堅調なGDP成長率の発表が「日本買い」をさらに加速させたこともあり、20日(水)発表の6月機械受注に注目が集まるかもしれません。
機械受注は機械メーカーの設備投資向け機械の受注額を集計したもので、前回5月分まで2カ月連続で前月比マイナスが続いており、今回もマイナス予想です。
また22日(金)には7月CPIも発表され、7月の生鮮食料品を除くコアCPIは6月の前年同月比3.3%増から3.0%増に低下する予想です。
こちらも物価の高止まりが確認されると、日銀の早期利上げ観測につながり、国内の金利上昇や為替の円高要因になるかもしれません。
日経平均株価が前週末比1,020円も上昇した8月第1週(4~8日)の外国人投資家は先物取引を中心に日本株を3,500億円以上も買い越しました。
外国人投資家は上昇トレンドが続く特定の有力銘柄を集中的に買い進み、株価を青天井に上昇させがちです。
その意味では、先週急騰したサンリオ(8136)や株価が飛ぶ鳥を落とす勢いで上昇しているAIデータセンター関連の フジクラ(5803) 、ゲーム関連の 任天堂(7974) 、防衛関連の 三菱重工業(7011) など人気株がさらに上昇する青天井相場が当面、続きそうです。
(トウシル編集チーム)