NISAブームの今、若者の3~4割は投資に消極的というデータがあります。もしあなたが投資をしない選択をしても、投資で資産を増やせない分をどう補うか、真剣に考える必要があります。

今回は「お金を増やす意識」について考えていきます。


NISAブームに乗り切れない若者に伝えたい「お金を増やす意識...の画像はこちら >>

若者の3割はNISAが怖い?それって本当?

 少し前になりますが、日本経済新聞の2025年5月16日に、「NISAさえ怖い20代、選ぶは積立保険 預金以上・投資未満」という記事がありました。


 NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)ブームで若い世代も投資するようになったが、依然として一定割合の人が今でも投資を行っておらず、元本割れリスクへの恐怖感も根強いため保険ニーズはありそうだ、という記事になります。私は、この内容に対して疑問点が二つ浮かびました。


  • 投資を行う層は大幅に増えているのではないか
  • 投資を行わない層は年代によらず一定割合いるのではないか

 つまり、「若者は投資をしない」という決めつけも、「若者は投資意欲が旺盛である」という決めつけも、実際には両方あるのではないか、というわけです。


どの世代も3割くらいは「投資はしたくない層」である

 例えば、日本総研のレポートによれば、2016年と2023年の比較データで、20歳代の投資経験比率が約2.5倍(13%→32%)に増加したことが示されています。


 投資経験比率は年齢に応じて高まる傾向がありますが、2023年の20歳代の投資経験は、2016年調査の40歳代の投資経験(31%)を上回るほどの変化です。これは、NISAブームや投資知識の普及が大きいことを示しており、投資をする若者は明らかに増えていることが分かります。


 一方で、投資無関心層と呼ばれる投資をしない人も一定割合います。三井住友カード株式会社の「20代の投資の実態調査」によれば、投資を「していないし、今後もする予定はない」とする人の割合が40.6%もいます。


 こうした層は一定割合いますし、投資について理解をしたとしても投資をしないことを選ぶ自由はあります。また、一人一人の事情によって投資を必要としない人もいるでしょう。


一般論として若い世代はリスクを取り得るが、「みんな」そうとは限らない

 一般論としては、若い世代は中高齢者より運用のリスクを取り得る、と説明されます。その理由はいくつかあり、以下の説明がよくされます。


  • そもそもの投資元本が少ないことが多い
  • 現時点以降の追加拠出のほうがウエートが大きい
  • 運用環境が一時的に低迷しても、回復を待つ時間的余裕がある

 例えば、数千万円の資産を持つ年金生活者が投資を行うのと、ほぼゼロから毎月数千~数万円程度の積立投資を行う20歳代の若者とでは、運用に取り得るリスクがまったく異なります。


 年金生活者はこれ以降の追加入金ができませんし、「○×ショック」が起きて株価が急落した場合、回復するまで5年待つ余裕がありません(例えば、リーマンショック時には最大下落幅が半値近くまで下がったが、5年でほぼ全回復、その後は大きく値を上げている)。このように、時間的余裕がない場合は高いリスクを取らなくてもいい、というわけです。


 これに対して若い人は投資の一時的な値下がりに耐える力があるため、投資のリスクを取っても良いとされます。しかし、若い世代にもリスクを取りにくい課題があります。


 一般的にはまだ年収も低く、日々の生活のやりくりに不安定さがある状態で、無理に投資を行い、かつ含み損を抱える状況は好ましくありません。


 また、投資の理解度が浅い場合もあまり無理をする必要がありません。「よく分からないけど、とりあえずオルカン一択でもうかるんでしょ?」という感覚でリスクを取ることは勧められません(結果として、高リターンになる可能性はありますが)。


投資をしない選択をとっても「お金を増やす意識」は必要

 大原則として、投資は「無理にしなくてもいい」ものです。どんなにブームだったとしてもやりたくない人がやる必要はありません。


 しかし「お金を増やす意識」は必要です。あえて投資をしないのであれば、株価の上昇によって資産を増やす分を代わりにどこから確保してくるか、という問題意識を持ってみてください。例えば、


  • 年収を大きく高めてそこから貯蓄額を増やす
  • 支出を大幅に引き下げ、貯蓄額を増やす

というアプローチは、積立額を増やすことで運用益に見合う積立額増を得る考え方です。

特に若い世代にとって、キャリア形成に集中し「年100万円を投資で増やすより、年100万円増やす人材になる」を優先することは悪いことではありません。


 高い年収を実現すると、そこから継続的に高い拠出額を確保できる可能性も生じます。


 また、支出を減らして貯蓄額を増やすアプローチも、毎月の積み立て元本を増やすことで、利息などに頼るウエートを減らすことができます。


 一方で、資産が積み上がってくるほど、リスクを取るか取らないかの差は徐々に開いていきます。例えば、1,000万円を超える資産を持つ場合、年0.2%の銀行預金では年2万円しか増えませんが、投資信託などで4.5%のリターンを確保できれば、年45万円の増となります。資産額がさらに増えればその差も大きくなってきます。


 キャリアの前半で、「あえて投資よりキャリアアップ」は悪くない選択です。しかし、やはりアラフォー、アラフィフになってきた頃合いで、資産運用と向き合っていく必要はあると思います。


 今は投資をしない、という判断はあってかまいません。しかし「一生、投資をしない」と決めつける必要もありません。投資について考える意識だけは持ち続けてみてほしいと思います。


(山崎 俊輔)

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