警察の緊急通報番号である「110」。事件や事故の際に使う全国統一の電話番号です。
1月10日は「110番の日」です。これは、警察庁が110番の適切な使用を推進するために1985(昭和60)年に定めたものです。
いまでは鍵の解錠や水回りなど警察とは関係ないものでも「~110番」と付けられるまでメジャーになった番号ですが、そもそも警察の緊急通報番号として110番が使われるようになったのは、太平洋戦争の終結直後、1948(昭和23)年10月で、東京都区部が始まりです。
当時、終戦直後で治安が悪化しており、なおかつ軍隊がなくなったため、警察が治安維持の頼みの綱でした。そのため日本を占領していたGHQ(連合国軍最高司令部)は日本政府に対して、市中で犯罪などが発生した際、市民が警察へ緊急連絡できる制度を整えるよう要求、そのために特定の電話番号を設置すべきであるとしたのです。
このGHQからの申し入れ(事実上の命令)により、当時の国家地方警察本部(現在の警察庁)と逓信省(現在の総務省)が協議して1948(昭和23)年10月より運用が始まったのが110番を始めとした警察用の緊急通報番号でした。
緊急通報番号として抜群の知名度を有する110番。写真はイメージ(乗りものニュース編集部撮影)。
緊急通報番号の運用は当初、東京都区部、川崎市、横浜市、名古屋市、京都市、大阪市、神戸市、福岡市の8大都市で始まったものの、当時はGHQの指導によって、アメリカの市警制度を参考に自治体ごとに警察組織を置いていたことから、都市によって緊急通報番号はバラバラで、大阪や京都、神戸では1110番、名古屋では118番を用いていました。
そこで、1954(昭和29)年7月1日の新警察法の施行によって、国家地方警察本部が警察庁になり、自治体警察が都道府県警察に集約再編されたことに伴って、全国の緊急通報番号を110番に統一しました。
そもそも、なぜ警察の緊急通報番号は110番なのでしょう。それは以下の理由からといわれています。
・国民に覚えやすい番号とすること
・誤報が少ないように番号を3桁にすること
・ストッパーまでの距離が短い「1」を多くすること(当時はダイヤル式)
この3点を基本とし、さらに間違い電話を防止するとともに、はやる心を落ち着かせるという理由から、ダイヤルが元に戻るまで時間の長い「0」を最後に付け、「1、1、0」に決定したといわれています。

警視庁本部庁舎(右手前)および警察庁が入る中央合同庁舎第2号館(左奥)。両者とも東京都千代田区霞が関に所在する(乗りものニュース編集部撮影)。
なお、110番をかけると基本的には各都道府県警察本部の通信指令室に繋がります。しかし、電話は音声を用いた連絡手段です。口や耳が不自由な聴覚障害者はどうすればいいのでしょうか。
その点も現在の110番はカバーしています。声での緊急通報が難しい場合、FAXやメールで都道府県警察の通信指令室に連絡を入れることが可能です。ただしFAXは番号が「110」ではないうえ、全国統一されていないため、市外局番などが必要になります。
たとえば神奈川県警は0120-110-221(フリーダイヤルが使えない場合は有料番号045-211-0110)ですが、埼玉県警は0120-264-110となります。このように各警察本部で番号が異なるため、送る際は確認が必要です。
メールの場合も同様で、警察本部ごとに異なります。たとえば、大阪府警はm110@police.pref.osaka.jp(110番通報メールアドレス)ですが、千葉県警はhttp://chiba110.jp(メール110番システム)です。
ちなみに警察庁では、携帯電話から文字による110番通報が可能な「110番アプリシステム」を開設しているものの、これは専用アプリを前もってダウンロードし、氏名や電話番号、パスワードなどを事前登録しておく必要があります。
携帯電話の110番はGPSで場所確認近年では携帯電話からの110番が、緊急通報総数の3分の2以上を占めるようになっていますが、携帯電話ならではの注意も必要です。
それは携帯電話が、基地局経由で各都道府県警察の通信指令室に繋がるからで、この場合、県境などで通報した場合、隣県の基地局が電波を拾うと、自分がいる県とは別の警察本部の通信指令室に繋がってしまうという点です。
だからこそ、通報時は「いつ、どこで、何があったか。そして通報者は誰か」をはっきり伝えることが必須となります。なお緊急通報は、固定電話、携帯電話の区別なく事前通告なしでの位置情報の取得が認められているため、通報者が電話をかけた時点で、どこから通報してきたか把握されます。また番号も自動的に識別されるため、一方的に電話を切っても折り返しかかってくることがあります。よって110番をかける際、仮に非通知設定の「184」を頭に押しても、通信指令室には通話番号が表示されます。

東久留米駅前に停まる埼玉県警のパトカー。ここは東京都であり警視庁管轄区域だが、都道府県境では見られる光景(乗りものニュース編集部撮影)。
警視庁の統計では、東京都内の110番受理件数は年間約184万件で、平均すると17秒に1件の割合とのことですが、そのうちの約3割が緊急性のない問い合せや相談、いたずらなどとのこと。
110番は、事件や事故など、あくまでも緊急時に警察にいち早く連絡するための通報ダイヤルです。業務の妨げにならないよう、節度を保って使いましょう。