新幹線を利用した貨物輸送がいま、コロナ禍を受け大きく動き出しています。JR貨物も経営構想に盛り込みました。

過去に東海道新幹線で貨物新幹線構想がありましたが、旅客用に完成している設備で実現するには、課題が考えられます。

大きく動き出した新幹線での貨物輸送

 JR貨物が2021年1月8日(金)に発表した「JR貨物グループ長期ビジョン2030」へ「貨物新幹線の検討を推進」と盛り込むなど、新幹線をとりまく貨物輸送の機運が高まっています。

 2020年12月30日(水)には産経新聞が、JR東日本が「1編成のうち1両の座席を全て取り外し輸送用に特化した車両への改造を検討」「輸送用パレットをそのまま車内に搬入できるように扉の幅を広くとった貨物専用車両の設計も開始」と報道。

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東北新幹線で行われた鮮魚輸送実証実験の様子(2019年6月11日、草町義和撮影)。

 コロナ禍以前から新幹線を活用した物流サービスの拡充が考えられ、長らく行われてきた東京~仙台・新潟間での小型荷物輸送(新幹線レールゴー・サービス)のほかに、車内の空きスペースを活用するといった比較的小規模な輸送が展開されてきましたが、コロナ禍による旅客需要減少を受け、いっそう動き出した感があります。

 JR東日本が現在行っている、仙台~東京間の新幹線を使った鮮魚などの輸送は1列車でダンボールおよそ40箱まで運べるそうですが、これがより大規模な輸送になってくると、課題も大きくなりそうです。

「昭和の貨物新幹線」では貨物駅を設ける計画だったが…

 例えば、新幹線の東京~大宮間はダイヤに余裕が乏しい状況。東京駅での折り返し時、車内清掃をわずか7分で行うことが話題にもなりましたが、逆に言えばそれだけ時間を節約したいわけで、そうしたなか駅で荷物を積み降ろす時間を確保できるかどうか、また停車時間中に積み降ろしできる仕組みを作れるかどうか、気になるところです。

 昭和30年代、東海道新幹線の建設にあたって、貨物列車の運行も考えられていました。この構想では、貨物駅を旅客駅とは別に東京、静岡、名古屋、大阪に用意する計画になっています。

大きく動き出した「令和の貨物新幹線」どんな姿に?「昭和の貨物新幹線」と違う形

東京の新幹線貨物駅は、現在の新幹線大井基地(写真中央左)、在来線東京貨物ターミナル(中央右)の場所に計画(画像:国土地理院)。

 ただこの貨物新幹線構想では、コンテナ方式とピギーバック(トラックごと積載)方式という、在来線の貨物列車と同様な形での輸送が考えられていました。

 対し「令和の貨物新幹線」は、現在のところ貨物列車を運行するのではなく、旅客列車に荷物輸送の機能を付加する方向性で、「昭和の貨物新幹線」とは異なります。そのため大掛かりな貨物駅は不要かもしれませんが、自分で乗降してくれない荷物をどうするかは、どうしても考えねばならない部分です。

東京駅でないならば

 ホームに余裕がある大宮駅で積み降ろしする方法も考えられますが、途中駅であるため、停車時間を極力延ばさない工夫が求められそうです。終点の東京駅へ到着したのち、車両基地へ引き上げる列車で輸送し、積み降ろしは車両基地で行う方法もあるかもしれません。田端駅付近に、東京新幹線車両センターが存在します。

大きく動き出した「令和の貨物新幹線」どんな姿に?「昭和の貨物新幹線」と違う形

写真左上が東京新幹線車両センター、中央下付近が田端駅(2015年3月、恵 知仁撮影)。

 また今回、経営構想に「貨物新幹線」を盛り込んだ、新幹線を運行していないJR貨物が今後どう関わってくるのでしょうか。北海道新幹線の札幌延伸をひかえ、在来線と共用の青函トンネルで、在来線貨物列車の影響により新幹線が速度を落とさざる得ない問題もあります。

 半世紀以上にわたり「安全性」「安定性」「快適性」「速さ」が進化してきた日本の高速鉄道「新幹線」。今後、「貨物」というキーワードが大きな進化ポイントになりそうです。