航空自衛隊の広報展示施設である浜松広報館、いわゆるエアーパーク浜松が2021年に大規模リニューアルするとのこと。リニューアルの内容と、その前に見ておくべきポイントをピックアップしました。

「ファントムII」がやってくる! T-4「ブルーインパルス」も

 航空自衛隊の広報施設として静岡県浜松市にある「航空自衛隊浜松広報館」、愛称「エアーパーク」が、2021年3月にリニューアルする予定です。

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航空自衛隊浜松広報館「エアーパーク」の建物正面に飛行状態で展示されている初代「ブルーインパルス」塗装のF-86F「セイバー」戦闘機(リタイ屋の梅撮影)。

「エアーパーク」は1999(平成11)年4月、航空自衛隊浜松基地の一角にオープンしました。自衛隊の広報施設と聞くと、イメージ的に硬い印象を抱くかもいるかもしれませんが、「エアーパーク」は“見て体験して楽しむ航空自衛隊のテーマパーク”と謳っているだけあって、シミュレーターや映像シアターまで備えた、充実の広報施設です。

 展示も、初の国産超音速戦闘機F-1、ブルーインパルスの初代F-86F「セイバー」と二代目T-2、国産戦闘機XF-2のモックアップ(実物大模型)、グアムから帰ってきた零式艦上戦闘機、旧政府専用機ボーイング747の貴賓室など、貴重なものばかり。

 しかも、その多くが屋内展示なので、天気が悪くても安心して楽しむことができるほか、国の施設なので入館は無料です。加えてすぐ隣には浜松基地の滑走路があるため、運が良ければT-4練習機やE-767早期警戒管制機のフライトが見られることも。

 ヒコーキ好きには幸せな空間といえる「エアーパーク」が、さらにパワーアップすべくリニューアルするというのですから、興味は尽きません。

 リニューアル最大の目玉はF-4EJ改「ファントムII」戦闘機の新加入。航空自衛隊の戦闘機のなかでは屈指の知名度と人気を誇る同機が展示機として加わるのです。しかも機体は、「ファントムII」の最終生産機440号機(通称シシマル)。これは、日本のライセンス生産機の最終号機というだけではなく、世界の「ファントムII」戦闘機のファイナル生産機でもあります。

 ほかにも、航空自衛隊のアクロバット飛行チーム「ブルーインパルス」で使用され、2020年3月に引退したT-4練習機も展示される予定とのこと。これら新たな展示機を迎え入れるために、レイアウトも戦闘機と「ブルーインパルス」を中心とした配置に一新されるようです。

「ファントムII」に場所をあけ渡す広報館の“大先輩”たち

 新展示が楽しみな一方、スペースの都合で屋内展示から外れ、移動となる機体も。以下の8機が移動対象と思われます。

別の倉庫へ格納
・「バンパイア」ジェット練習機
・T-6Fプロペラ練習機

屋外展示場へ移動
・T-28Bプロペラ練習機
・T-1A国産ジェット練習機
・T-33Aジェット練習機
・B-65輸送機
・H-19救難ヘリコプター
・S-62救難ヘリコプター
※いずれも2021年1月の航空自衛隊第1航空団公告より推測

空自 浜松広報館「エアーパーク」の展示が大幅入れ替え 貴重な機体どうなる? ルーキーも

航空自衛隊浜松広報館「エアーパーク」の展示格納庫の内部(柘植優介撮影)。

 希少なビンテージ機、多くのパイロットを育てた練習機、人命救助に活躍した救難ヘリなど意義ある機体ばかり。筆者(リタイ屋の梅:メカミリイラストレーター)としても残念ですが、頼もしいルーキー(新展示機)を迎える楽しみもあります。

英国製ビンテージジェットと初代救難ヘリに注目!

「エアーパーク」には“屋外展示の先輩”としてF-86F「セイバー」の「ブルーインパルス」仕様、UF-104J無人標的機、C-46輸送機、H-21B救難ヘリコプターなどが、良好な状態で敷地の各所に配置されています。

 これら既存の屋外展示機の状態を鑑みると、新たに屋外展示となる前出の6機種も大切に扱われると思いますが、それでも風雨に耐えられるよう、再塗装や開口部の封鎖など、屋内展示のときとは異なる防護処置が施されると考えられます。

 そこで、「屋内展示のいまこそ見ておきたい機体」というのを、筆者(リタイ屋の梅:メカミリイラストレーター)の独断でチョイスしてみました。

 まずはレア度が高い「バンパイア」と「T-28」。どちらも65年以上前に1機だけ輸入された、国内では浜松にしか存在しない貴重な機体です。

とくに「バンパイア」は、空自では大変珍しいイギリス製ビンテージ機。しかも、前述のとおり別の格納庫へ移設予定のため、非公開となる可能性があることから、いまのうちにじっくり見ておきたい1機です。

 H-19救難ヘリコプターも見逃せません。この機体は、航空自衛隊の初代救難ヘリコプターで、1959(昭和34)年の伊勢湾台風で人命救助や物資輸送などに目ざましい働きを見せ、「災害時に頼れる自衛隊ヘリ」というのを国民に印象づけた最初の機体といえるものです。しかも、「エアーパーク」のある浜松基地は、航空救難団誕生の地といえる場所であり、ある意味で浜松ゆかりといえなくもありません。

空自 浜松広報館「エアーパーク」の展示が大幅入れ替え 貴重な機体どうなる? ルーキーも

屋外展示されているH-21B救難ヘリコプター(右手前)とC-46輸送機(左奥)。屋外の場合、窓ガラスなどが劣化し曇ってしまう(リタイ屋の梅撮影)。

 航空自衛隊浜松広報館の公式ウェブサイトによると、リニューアル工事は2021年3月8日(月)から始まるとのこと。なお、3月12日(金)までは全館閉館になります。全館開館は4月を予定しているとのことで、前出の8機の航空機は展示格納庫から搬出したあとは、再展示の準備が整うまでのあいだ、別の格納庫で保管されるといいます。

 リニューアル後にお訪ねの際は、新たに展示されるF-4EJ改「ファントムII」の精悍さ、「ブルーインパルスT-4」の美しさを肌で感じ、屋外展示になった往年の機体を温かい目で眺めていただければと思います。

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