外房線太東~長者町間で旧線となった鉄橋上に、ある日突然101系電車が置かれました。いったいなんの目的で置かれたのでしょうか? それは鉄橋上ということが大きな理由だったようです。
JR東日本の外房線太東駅(千葉県いすみ市)と長者町駅(同)のあいだは、複線化を目的に1986(昭和61)年ごろ、新線に切り替えられました(複線化となったのは1996〈平成8〉年11月17日)。
この区間には夷隅川が流れていて夷隅川橋梁(鉄橋)が掛けられていますが、切り替えで使われなくなった旧線の夷隅川橋梁上に、1991(平成3)年のある日、突如として101系電車が現れました。
アパートのすぐ横にポツンと置かれた101系電車(赤矢印)。黄色い車体が目立っていた(1991年4月、伊藤真悟撮影)。
101系のそばには看板が建てられ、看板には使用目的が「車両の横風に対する空気力学特性に関する現車試験」、期間は「平成3年4月1日から平成3年10月31日まで」と記載されています。
鉄橋上に置かれた101系は、1991年1月20日に南武線(本線)でさよなら運転を行った編成で、中間に組み込まれていたクハ100-77を抜いた5両です。
1994(平成6)年5月の『日本風工学会誌』第59号によると、1986(昭和61)年12月28日に発生した「余部橋梁列車転落事故」に際して設置された「余部事故技術調査委員会」が、「横風による車両の空力特性は、車両形状のみならず橋梁などの路盤形状にも依存する」という結論を出したことにより、公益財団法人鉄道総合技術研究所(鉄道総研)が101系を使って現車試験を行ったとのこと。静止した中間の車両(クモハ101-206)に働く空気力を自動で測定したそうです。
鉄橋のすぐそばにはアパートがあります。突然現れた電車に、アパートの住民は驚いたかもしれません。
※一部修正しました(5月29日9時00分)。