2021年9月に廃止される北陸から九州までの主なバス路線をまとめました。コロナ禍による収益の悪化で維持が難しくなったケースが多いなか、廃止にとどまらず将来的に持続可能な形へ交通網を改変するケースもいくつか見られます。
2021年9月をもって、多くのバス路線が廃止されます。今回は北陸から九州までの主なバス路線をまとめました。コロナ禍による収益の悪化で維持が難しくなったケースも多いものの、将来的に持続可能な形へ交通網を改変するケースも多くみられます。
●射水市コミュニティバス:ライトレール接続線(富山県)
・廃止区間:岩瀬浜駅~海王丸パーク
(9月26日〈日〉最終運行、10月1日〈金〉廃止)
実証実験運行を経て2007(平成19)年から本格的に運行を開始したこの路線は、前年に開業しブームに沸く富山ライトレールの終点・岩瀬浜から、帆船「海王丸」の見学ができる海王丸パークに観光客を誘導するために開設されました。
全長600m・高さ47mの「新湊大橋」で富山新港をひと跨ぎしながら眺める立山連峰の眺めは素晴らしいものがありましたが、途中区間の多くが富山地方鉄道(地鉄バス)射水線と競合するため、岩瀬浜駅から15分ほどの区間で途中下車ができない(バス停がない)など、その運行にはさまざまな制約が。コロナ禍後は、乗客数が全盛期の4分の1まで落ち込んだこともあり、岩瀬浜駅・岩瀬地区から海王丸パークへの連絡は途絶えることとなりました。
射水市コミュニティバスが経由していた新湊大橋(画像:写真AC)。
この路線の廃止後に海王丸パークへ向かう手段としては、高岡市側からのバスや万葉線の路面電車(海王丸停留所)、観光定期路線バス「富山ぶりかにバス」などがあり、JR富山駅や高岡駅からであれば、移動手段に不足することはありません。
中国山地の長大路線と「空港路線」が廃止【中国】●中国バス:東福東線・西福東線など14系統(広島県)
・廃止区間:福山駅前~四ッ角~油木、福山駅前~高蓋~呉ヶ峠ほか
(9月30日〈木〉最終運行、10月1日〈金〉廃止)
広島県東部をエリアとする中国バスは2006(平成18)年に私的整理を行い、両備ホールディングス(岡山県)の傘下で経営を再建しましたが、コロナ禍の前から断続的に路線の整理が続いています。2021年3月にはJR福塩線 上下(じょうげ)駅を発着する路線が大幅に整理されたばかりですが、9月末のダイヤ改正では一挙に14系統が姿を消します。
同社の長距離バス路線として代表的な福山駅~芸備線 東城駅(庄原市)間の系統(途中バス停数120以上)では、2016年には福山駅から神石高原町の呉ヶ峠を経由する「西回り」が呉ヶ峠までに短縮、そして今回の改正では、同町の高蓋から呉ヶ峠までの間が廃止されます。この区間は、バスファンに知られるかなりの狭隘路もありました。
なお神石高原町では2018年から1乗車600円の「ふれあいタクシー」導入で免許返納者を5倍に増加させるなどの成果を挙げましたが、これにより町内の路線バス利用が目に見えて減少。かつ「ふれあいタクシー」の補助の予算が当初想定枠を大幅に超過し、早期に900円への値上げや利用対象を縮小するなどしています。

2017年に廃止された中国バス西廻り東城行き。福山駅にて。今回のダイヤ改正でさらに路線が短縮(宮武和多哉撮影)。
●高梁市生活福祉バス:西山・田原線(岡山県)
・休止区間:田原局前~西山
(9月30日〈木〉最終運行、10月1日〈金〉休止)
岡山県高梁市のうち、旧備中町で合併前から運行されていた路線。市は「廃止を前提とした休止措置」としています。山間部の西山地区から高梁市中心部への中間地点までの運行で、そこから別系統へ乗り継ぐ形でした。今回の措置により、一部で有名だった「まじ」バス停が姿を消すことになります。
●サンデン交通:宇部空港線(山口県)
・廃止区間:JR下関駅~宇部空港
(9月30日〈木〉最終運行、10月1日〈金〉廃止)
無料駐車場が完備されている山口宇部空港は移動手段の半数を自家用車が占めることもあって、その分バスの利用はあまり伸びず、過去には山口駅への連絡バスや周南市への乗合タクシーが早期に廃止となっています。今回の下関方面への連絡バス廃止によって、同空港に乗り入れるのは地元・宇部市交通局が運営する一般路線バスのみとなります。
市内のバスがほとんど姿を消す? 【九州】●西鉄バス筑豊:西鉄後藤寺中谷線(福岡県)
・廃止区間:中谷~西鉄後藤寺営業所
(9月30日〈木〉最終運行、10月1日〈金〉廃止)
北九州市の小倉南ICに近い西鉄バスの拠点・中谷と、福岡県筑豊地方の田川市を結ぶ路線で、2017年までは「田川快速」としてJR小倉駅・砂津から後藤寺まで直通していました。
今回の廃止に際し、中谷から香春(かわら)町との境に近い頂吉越(かぐめごし)までは小型車両による新路線が開設、香春町には博多から直通する「筑豊特急」が延伸されるため、路線途中の金辺(きべ)峠前後を除いてバスの運行は維持されます。しかし、中谷からの小型車両による新路線は北九州市などからの補助によって運行されるため、1年間の期限が設けられ、利用状況によって本格運行への切り替えが判断されるそうです。

西鉄バスの車両イメージ。廃止路線とは異なる(宮武和多哉撮影)。
●島鉄バス(島原鉄道):三会線・礫石原線など6路線21系統(長崎県)
・廃止区間:島原駅前~礫石原など
(9月30日〈木〉最終運行、10月1日〈金〉廃止)
長崎県島原市内では今回のダイヤ改正でバス路線のほとんどが姿を消し、運行を継続するのは島原城近辺や、2008(平成20)年に廃止された島原半島南部における島原鉄道線の代替路線(口之津・加津佐方面)などの長距離路線に限られます。島原の市街地は火山の山麓特有の扇状地に点々と広がり、これらをカバーする路線網は系統当たりの運行が1日2、3本にとどまることから、路線の集約も難しい状態にありました。
島原市ではすでに2020年に市営のコミュニティバスを立ち上げており、10月からはAI技術で最適なルートを探るデマンド(予約制)バスとして廃止エリアをカバーする予定です。
●大分バス:宇藤木線・蒲戸大浜線・鶴見線など(大分県)
・廃止区間:佐伯駅~宇藤木
(9月30日〈木〉最終運行、10月1日〈金〉廃止)
大分県佐伯市内は平成末期から路線廃止・コミュニティバス転換が断続的に続いていますが、今回は完全廃止となる「宇藤木線」以外にも大分バスのほとんどの路線が市営のコミュニティバスに移行、残された大分市内直通の「伯大線」も本数が半減します。
※一部修正しました(9月30日10時11分)。
【ストリートビュー】見納めになる「まじ」バス停