まもなく現行車両は運行終了!
「伊予灘ものがたり」ってどんな列車?小さな駅と列車、その背景に青い海と空――「青春18きっぷ」のポスターに何度も登場した名物駅・名物区間を味わえる四国の観光列車「伊予灘ものがたり」が、間もなくラストランを迎えます。
伊予灘ものがたりは、愛媛県の松山駅と八幡浜駅のあいだで、瀬戸内海を間近に眺められる、愛ある伊予灘線で運行される観光列車。
キロ47形伊予灘ものがたり(乗りものニュース編集部撮影)。
双海編(伊予大洲10時56分→松山13時11分)に乗車
伊予灘ものがたりは、運行時間と区間により「大洲編」「双海(ふたみ)編」「八幡浜編」「道後編」という4つの“物語”に分けられて営業されています。「双海編」は日中に運行され、伊予大洲駅から愛ある伊予灘線を走行し松山駅を目指します。
伊予灘ものがたりを含む観光列車は日本全国いたる所で走っていますが、もともと普通列車で使用されていた国鉄型車両を改造して観光列車にした例は少なくありません。伊予灘ものがたりのキロ47形も同じで、元々は高徳線や牟岐線、鳴門線を走行していた車両が一度廃車になり、改造のうえ2014年7月に“復籍”したものです。
伊予大洲駅の改札を抜け、待っていた伊予灘ものがたりに乗車します。乗降口にはカーペットが敷いてありアテンダントさんが出迎えてくれます。アルコール消毒液の設置もありコロナ対策はバッチリです。
今回は2号車、「黄金の章」に乗車します。海側がカウンター席と4人用ボックスシート、山側が2人用対面シートという配置もさることながら、車内の「高低差」にも驚きました。
事前に食事予約券をお求めのお客様には、伊予大洲駅を発車してしばらくすると食事が提供されます。「双海編」で提供される内子町の「レストランからり」による2段の重箱弁当は、上段は4マスに区切られ主菜が、下段はマスに区切られ小鉢が入っており、いろどりユタカ。なお、食事は乗車日の4日前までに予約が必要で、乗車する伊予灘ものがたりの行路によって、食事内容が異なります。
何度も青春18きっぷのポスターに採用された駅に到着!伊予灘の絶景を目の前に見ながら豪華ランチを楽しみつつ、列車は下灘駅(伊予市双海町)に到着です。前出した「青春18きっぷポスター」に出てきた駅です。
ホームに屋根付きのベンチがあるだけの簡素な駅ですが、目の前に何一つ遮るものなく瀬戸内海の眺望が広がります。特に夕暮れときに来ると、海は一面の茜色に。今や駅自体が観光地と化していて、伊予灘ものがたりが到着するや否や、すでに駅で待ち構えていた人々も一斉にシャッターを切りました。
下灘駅には10分ほど停車したのち、次の伊予上灘駅にも停車します。ここで対向列車と行き違いのためしばらく停車します。伊予上灘駅では可愛らしいワンちゃんネコちゃんが出迎えてくれました。

2022年春ごろから運行開始予定の伊予灘ものがたり(画像:JR四国)。
伊予大洲駅から下灘、伊予上灘を経て、松山駅に到着です。ここまでの乗車時間はおよそ2時間。
松山駅は駅を中心とした2.4kmを高架化する工事の真っ最中です。それまで駅に併設して松山運転所とJR貨物の松山駅がありましたが、それらを北伊予~伊予横田間に移設しています。訪れたのは2021年10月ですが、すでに大部分の橋脚と高架は完成していて旧松山運転所は跡形もなく撤去されていました。松山駅周辺の土地区画整理事業は2026年度完成予定です。
新しく生まれ変わる伊予灘ものがたり今回乗車したキロ47形の伊予灘ものがたりも十分豪華な車内でしたが、運行の中断を経て、2022年春から特急型のキハ185形ディーゼルカーによる新車両で運行を再開します。
従来の2両編成から3両編成になり、3号車にはラグジュアリールーム(個室)も設定。JR四国によると、これは車両の半分を占める贅沢な空間だといいます。
その分、リニューアルにより特急料金が適用になり、新たな特急グリーン料金とグリーン個室料金が設定されます。松山~八幡浜間で1号車「茜の章」または2号車「黄金の章」に乗車する場合は4000円(運賃1300円、特急料金1200円、グリーン料金1500円)(予定)のほか、3号車「陽華の章」に乗車する場合は、利用人数分の運賃・特急料金のほかにグリーン個室1室の料金2万8000円が必要です(2名以上8名まで利用可)。
国鉄を代表するディーゼルカーのキハ47形でグリーン車というのも異例でしたが、特急改造の新車両で、グリーン車はさらに進化する形です。