コロナ禍は3年目に突入しました。運輸収入が以前の水準まで戻らない中、春のダイヤ改正ではJR、大手私鉄が軒並み減便を予定するほか、東京近郊区間ではワンマン運転が始まります。
全ての発端は2019年、新年のカウントダウンが進む12月31日夜に飛び込んできた、中国で病因不明の肺炎が相次いでいるというニュースでした。この時は、まさか2020年に世界が変わってしまうとは誰も想像していなかったでしょう。2022年、コロナ禍は3年目に突入します。
都市部を走る電車(画像:写真AC)。
鉄道はアフターコロナの在り方を模索しています。
今年3月に行われるダイヤ改正では、こうした動きがさらに進みます。
さらに小田急は観光需要の低迷を受けて、特急ロマンスカー「はこね」を大幅に減便。2005(平成17)年にデビューした50000形「VSE」がダイヤ改正で定期運用を外れ、翌2023年秋ごろに廃車されるという衝撃的なニュースも飛び込んできました。
そして通勤時間帯の減便も本格的に始まります。JR東日本は山手線や京浜東北線、中央線を始めとする首都圏のほとんどの線区で、朝ラッシュ最混雑時間帯の運転本数を1~4本(約1~2割)減便します。東武は6~9時台に北千住駅に到着する上り列車を合計10本削減。
車両やそれを収容する車庫、信号設備、乗務員など、鉄道を動かすためのありとあらゆる要素は朝ラッシュの運行本数を前提としています。しかしこのうち、かなりの部分は朝の1~2時間のための設備ですから、経営効率が悪いのです(それでも社会的な責任があるのでやらざるを得ない)。
朝ラッシュ時間帯を減便すれば、こうした問題を徐々にですが解消できます。事実、100年ほど前に「通勤ラッシュ」が生まれるまでは、電車は朝から晩までほとんど同じ間隔で運転されていました。テレワークが完全に普及し、ラッシュというものが無くなるのであれば、それはそれで都合のいいことなのかもしれません。
もうひとつ今後のトレンドになりそうなのがワンマン運転です。JR東日本は3月から、宇都宮線(小山~黒磯)、日光線、相模線、八高・川越線(八王子~高麗川~川越)で新たにワンマン運転を開始。東武も日光線(南栗橋~東武日光)、鬼怒川線をワンマン化します。
今回のワンマン化は首都圏ローカル線区が対象ですが、JR東日本は昨年12月、2025年から2030年にかけて山手線、京浜東北・根岸線、常磐線(各駅停車)、南武線、横浜線をワンマン化する構想を発表しており、東急も2023年度を目途に東横線をワンマン運転化する計画です。今後は各線で人件費の削減に寄与するワンマン化が進みそうです。
また運行系統の分割も立ちます。
常磐線では既に、同じE531系電車を使用する水戸線からの直通列車が友部~勝田間でワンマン運転を実施しており、今後は土浦以北を5両編成で走る列車のワンマン化に着手する可能性もあるでしょう。上述のように常磐線(各駅停車)はワンマン化が予定されていますが、いわゆる「中距離電車」のワンマン化は15両編成の運転があり、ホームドアの設置も進んでいないことから当分は困難です。そこで利用の少ない末端区間を切り離し、ツーマン区間をできるだけ縮小したいという狙いもあると思われます。
小田急も、スイッチバック構造となっている藤沢駅で江ノ島線を分割。新宿方面からの直通列車(ロマンスカー「えのしま」は除く)は藤沢で折返し運転となり、藤沢~片瀬江ノ島間はこれまでよりも短い編成で運行されます。
2022年度下期の開業を目指す、東急新横浜線と相鉄新横浜線。写真は中間に設けられる新綱島駅の様子(画像:鉄道・運輸機構)。
年明け早々縮小一辺倒のダイヤ改正で気が滅入りますが、一方で今年は新線開業という明るいニュースもあります。新幹線では2016(平成28)年の北海道新幹線以来の新規路線として、西九州新幹線の武雄温泉~長崎間が秋に開業する予定です。在来線では、年内に開業するかは未定なものの、「2022年度下期」に東急新横浜線の日吉~新横浜間と、相鉄新横浜線の新横浜~羽沢横浜国大間が開業します。
「2019年度下期」の開業を予定していた西谷~羽沢横浜国大間は2019年11月に開業したので、同じように秋ごろ開業する可能性があります。首都圏の新線開業は、連絡線的な位置づけである相鉄・JR直通線を除けば、2010(平成22)年の京成スカイアクセス線以来の規模と言えるでしょう。このほか、福岡市地下鉄七隈線も「年度内」に天神南~博多間が延伸開業予定です。
緊急事態宣言の解除と行動制限の段階的な緩和により昨年10月以降、在来線特急や新幹線を含む定期外利用は回復傾向にあります。加えて今月下旬には新たな「GoToトラベル」が始まることもあり、鉄道事業者は収支改善に期待を寄せていることでしょう。しかし一方で新たな変異株の懸念もあります。「日常」を取り戻すための歩みは前進するのか、はたまた後退するのか。2022年は大きな分かれ目となりそうです。