機械、人力は有限なのです。
車両まわりは手作業で除雪「人力除雪は一部なのでしょう?」「除雪用機械をどんどん走らせれば済むんじゃないの?」「なにのんびりやってるの?」
2022年2月上旬、近年では稀に見る大雪に見舞われた札幌市ですが、JR北海道の札幌近郊路線は軒並み運休しました。
雪に埋もれた列車(画像:JR北海道)。
「列車は進めなくなったまま複数の駅に留置されました。運転再開のため、1編成ずつ車両基地に動かして、列車が通常走行する『本線』を開ける作業を行いますが、除雪機が行けるのは車両手前までで、埋まった列車の付近は手で掘り出すしかありません」
ようやく1本の列車を移動し終えたら、除雪機を次の留置列車に向かわせ、同様の手順を繰り返します。JR北海道によると、今回の大雪では29編成が立ち往生したとのこと。線路の上を進む除雪機は、列車が進路をふさいでいれば当然ながら別の線路を伝い、ポイントなどを渡りながら目的の列車まで向かわなければなりません。上下線であっても、場合によっては遠回りを強いられます。除雪に時間がかかり、また運転再開の見通しがなかなか立たないのは、このような事情ゆえです。
「手稲~札幌~新千歳空港間を優先して作業を進めているとのこと。
このような意見も寄せられたそう。これについてJR北海道は次のように説明します。
大動脈から手を付けていく「札幌圏で使用する主な車両の基地が手稲(稲穂)にあるため、手稲~札幌間の開通を最優先で行います。札幌~南千歳間は道南・道東など各方面へ向かう列車が重なって運行される区間であり、影響が多方面に及ぶことになるため、復旧作業を優先的に行う必要があると考えています。除雪に使用する機械、人力、運用する車両には限りがあるため、上記の理由から、優先順位を付けて作業にあたることとしました」
もちろん、日頃から降雪対策は講じられています。
鉄道は特に、線路の切替えができなくなると、列車の運行に大きな影響を及ぼします。JR北海道はポイントなど線路の切替え部分に融雪器を設置したり、降雪が多く見込まれる日は切替え頻度を落とすために到着・発車番線を変更したりするほか、そもそもの運行本数を減らすなどの工夫をしています。
2月10日(木)16時時点で、札幌近郊路線では特急列車が全て運休しているほか、学園都市線で一部運休、そのほかの路線も5割程度の本数となっています。線区ごとに除雪作業を進めるものの、運行に使用する列車がまだ車両基地に戻りきっておらず、また、全ての線路を有効に使える状況も整っていないためです。JR北海道は「ご利用のお客様にはご迷惑をおかけいたします。心よりお詫び申し上げます」としています。
なお、北海道の鈴木直道知事は、一連の除雪作業をねぎらいつつ「JR北海道におかれては、安全運行に万全を期するとともに、公共交通機関としての責務を十分に果たされることをお願いいたします」とコメントを発表しています。
ちなみに東京などの都市部では、札幌より少ない降雪でも鉄道網がマヒすることがあります。これは雪に慣れていない点もさることながら、雪国と比べて鉄道設備が耐雪仕様になっていない点も挙げられます。一冬に2,3回あるかどうかの大雪に、平常時のメンテナンスコストもかけて対策することは非現実的なのです。