路線バスを乗り継いで九州を縦断するには、どのようなルートが考えられるでしょうか。今回は門司港から枕崎までと、途中で分かれて新幹線開業を控える長崎までのルートを紹介。
路線バスの乗り継ぎで九州縦断を試みると、どのような行程が考えられるでしょうか。今回は本州との玄関口である北九州市門司港から鹿児島県枕崎までと、途中で分かれて長崎までのルートについて、筆者(宮武和多哉:旅行・乗り物ライター)が2008(平成20)年ごろから実際に路線バスで日本列島を縦断した際の乗車区間をもとに紹介します。乗車後に廃止された区間は別ルートを提示するなどのアレンジを加え、2022年6月現在の乗り継ぎ例としています。
なおこれまでに「東京~大阪」「大阪~下関」「東京~仙台」を実際の乗車に基づき乗りものニュースにて記事にしていますので、あわせてご覧ください。
小倉の市街地をゆく西鉄バス(宮武和多哉撮影)。
以下、それぞれのバス路線はバス事業者名またはバス愛称名、系統名または路線愛称(存在しない場合もあり)、乗車区間の順に記載します。ルートは有料道路を走らない路線に限定しています。
まずは門司港から福岡市まで【福岡県1】・西鉄バス北九州「74」:関門トンネル人道口~砂津
・西鉄バス北九州「1」ほか:砂津~西鉄黒崎バスセンター
・西鉄バス筑豊 急行:西鉄黒崎バスセンター~直方
・JR九州バス「直方線」:直方駅前~博多バスターミナル
下関市から徒歩で九州へ上陸する手段としては、関門人道トンネル、関門フェリーが挙げられますが、今回は下関側でサンデンバス(御裳川バス停)と徒歩連絡が可能なトンネル経由のルートを採用。海中トンネルを歩くと、出てすぐ前に西鉄バス「関門トンネル人道口」バス停があります。
北九州市街地へ向かうバスは、JR門司港駅の南側を過ぎ、「清滝1丁目」交差点から国道3号に入ると、標高20mほどの高台を進みます。車窓右手には玄界灘が広がり、広大な手有働貨物ヤードや海沿いの国道199号を見下ろしつつ西進。
この先の最短距離は、折尾駅から北九州市営バス、コミュニティバスを乗り継ぎ、JR鹿児島本線沿いに海老津駅や赤間営業所(西鉄)などを経由するルートです。しかし遠賀町や岡垣町内で極端に本数が少なくなるため、南の直方へ迂回してから、一挙に福岡市内へ入っていきましょう。
鹿児島本線沿いには行きません【福岡県2~大分県~熊本県境】・西鉄バス「68」ほか:博多バスターミナル~天神高速バスターミナル
・西鉄バス「61」:天神大丸前~那珂川営業所
・西鉄バス「63」ほか:那珂川営業所~西鉄大橋駅
・西鉄バス「42」:西鉄大橋駅~月の浦営業所
・西鉄バス「21」ほか:月の浦営業所~下大利駅
・西鉄バス「22」:下大利駅~西鉄二日市駅
・西鉄バス「1-2」ほか:西鉄二日市駅~JR二日市駅
・西鉄バス「40」ほか:JR二日市駅~杷木
・西鉄バス「杷木~宝珠山・小石原」:杷木~大行司駅
・日田彦山線代行バス:大行司駅~日田バスセンター
・日田バス「杖立線」:日田バスセンター~杖立

日田彦山線の代行バス。添田~日田間で運行されている(宮武和多哉撮影)。
福岡市内のバスの拠点といえば「博多駅」「天神」の2か所。博多駅から直接、那珂川営業所・西鉄大橋駅に向かった方が早いのですが、九州随一の繁華街である天神に立ち寄らない手はありません。なお天神エリアはバス乗り場が30か所以上に分散されており、都市高速道路を経由する便も多数あるため、「下道で路線バス乗り継ぎ」をされる方は注意が必要です。
天神・博多駅からは福岡市内~志免~宇美~太宰府~二日市と乗り継ぐこともできますが、2022年9月を目処に宇美~太宰府間を廃止する動きがあるため、本項では西鉄大橋駅経由の方を記載します。
二日市から久留米・大牟田方面はJRと西鉄があるため、並行するバス路線は早々に廃止済み。そこで久大本線に沿って筑後川をさかのぼり、朝倉市杷木へ向かい、ここからさらに乗り継ぎのため大きく迂回します。日田バス・夜明循環線が2020年に廃止されたことから東峰村へ回り込み、2023年4月からはBRT「ひこぼしライン」として開業予定の日田彦山線代替バスへ乗り継ぎます。
・産交バス「7・阿蘇小国杖立線」:杖立~阿蘇駅前
・産交バス「特急やまびこ号」ほか:阿蘇駅前~大津駅南口
・産交バス「E3-5」:大津駅前~熊本桜町バスターミナル
・産交バス「R3-5」ほか:熊本桜町バスターミナル~松橋産交
・産交バス「八代松橋線」:松橋産交~八代市役所前
・産交バス「八代田浦線」:八代市役所~道の駅たのうら
・産交バス「田浦水俣線」:道の駅たのうら~水俣駅前
県境の温泉街・杖立で日田バスから産交バスに乗り継ぎ、いよいよ熊本県へ。ですが杖立温泉の周囲には格安の外湯(日帰り温泉)もあり、湯上がりに温泉卵を食べていきたいものです。
阿蘇山外輪山のエリアでは高森町の「高森中央」(南阿蘇鉄道 高森駅前)から熊本空港経由で熊本市内に直通できるものの、JR阿蘇駅から高森中央までが一般路線バスでつながりません。そこで、空席があれば乗車可能な特急バス「やまびこ号」(熊本~大分)などで、一般道を走る阿蘇駅前~肥後大津駅間のみ利用するといいでしょう。そのまま「やまびこ号」に乗車しても熊本市内に到着できますが、ここは普通の路線バスにこだわって大津町内で乗り換えます。

バスの乗り継ぎ拠点「松橋産交」。JR松橋駅とは離れている(宮武和多哉撮影)。
熊本市の中心部にそびえ立っていた「交通センター」は、2019年に複合施設「サクラマチクマモト」へ生まれ変わり、50番線までの発着ホーム(バース)を擁する熊本桜町バスターミナルが入居しています。サクラマチクマモトの館内では大体のものが揃うので、ここで一息入れて行くのもいいでしょう
熊本市内からは国道3号を南下し松橋、八代、水俣と抜けるルートが最短です。それ以外にも熊本バス南21系統などで砥用~矢部~馬見原へ向かい、宮崎県椎葉村を経由して熊本県湯前町、人吉市、芦北町と乗り継ぐことも、不可能ではありません。ただし平日のみ隔日運行などの区間も多く、恐らく1週間はかかりそうです。
鹿児島市街ど真ん中では乗り場に注意!【鹿児島県】・南国交通:水俣駅前~阿久根駅前
・南国交通:阿久根駅前~川内駅前
・鹿児島交通「51」:川内駅前~金生町
・鹿児島交通:金生町~枕崎駅
・鹿児島交通:枕崎駅~今岳
肥薩おれんじ鉄道の水俣駅は、熊本県側から産交バス、鹿児島県側から南国交通が乗り入れており乗り換えが可能です。
鹿児島市内では山形屋百貨店の前にある「金生町」バス停がターミナル的な役割を果たしているものの、路上に乗り場が分散してかなり複雑です。鹿児島中央駅で乗り換えた方がわかりやすいかもしれません。

枕崎駅前(宮武和多哉撮影)。
あとは枕崎まで直通バスで向かうもよし、加世田や知覧などを経由していた鉄道・鹿児島交通枕崎線(1984年廃止)の代替バス「なんてつ号」で行くもよし。ここまで来たら、枕崎駅からさらに西、鹿児島交通バスの終点となっている今岳まで向かい、文字通りの「路線バスで九州縦断」を終えるのも良いでしょう。
西九州新幹線とバス、けっこう並走する?【福岡県~佐賀県~長崎県】ここで、2022年9月に西九州新幹線が部分開業する長崎県へ、路線バスで乗り継いでみましょう。鹿児島方面へのルートとは西鉄二日市で分かれます。
・西鉄バス「40」:西鉄二日市~甘木
・甘木観光バス「田主丸線」:甘木中央~田主丸中央
・西鉄バス「23」:田主丸中央~西鉄久留米
・西鉄バス「40」ほか:西鉄久留米~佐賀駅バスセンター
・祐徳バス「佐賀線」:佐賀駅バスセンター~祐徳神社前
・祐徳バス「祐徳線」:祐徳神社前~武雄温泉駅前
・JR九州バス「嬉野線」:武雄温泉駅南口~彼杵中央
・東彼杵町営バス「彼杵線」:彼杵中央~野岳入口
・長崎県営バス「11」:野岳入口~諫早駅前
・長崎県営バス:諫早駅前~長崎駅前

武雄温泉駅のバスロータリーに進入するJR九州バス(宮武和多哉撮影)。
朝倉街道沿いに甘木から田主丸、そこから筑後川に沿って久留米市へ。佐賀県内では武雄・嬉野、長崎県内では大村、諫早・長崎と、西九州新幹線とほぼ同じルートをたどって長崎市内へ向かうことができます。バスは要所要所で新幹線の高架近くを並走するため、新幹線を眺めながらの乗車には持ってこいです。
なお、2022年6月現在、YouTuberの西園寺さん、綿貫渉さんなどが、相次いで路線バスによる日本縦断を敢行中です。筆者が以前に紹介した東京~大阪でもルートが変更になった箇所も多数あるほか、複数の選択肢がある場合は、進む道も人それぞれ。ちょっとした違いや変化を楽しむのも良いでしょう。
※一部修正しました(7月11日11時07分)。