コロナ禍3年目の2022年。ワクチン接種率の向上や自粛ムードの薄れなどから人流は元に戻りつつあり、JR4社や大手私鉄で業績が回復しました。
2022年の鉄道業界も様々なことがありました。鉄道事業者の経営に大打撃を与えたコロナ禍は3年目に突入。1月から2月にかけての感染第6波、7月から8月にかけての感染第7波、そして足元で増え続ける第8波と依然、終息の気配はありませんが、ワクチン接種が進んだこともあり徐々に日常が戻り始めています。
コロナ禍3年目、日常は徐々に戻りつつあった。「鉄道開業150年記念 JR東日本パス」販売期間中の東京駅では、かつてのような混雑が見られた(2022年10月、大藤碩哉撮影)。
今年の幕開けとなった年末年始輸送は、JR東日本・JR西日本・JR東海とも概ねコロナ禍前の8割弱の水準まで回復。前年は6割前後だったことを思えば幸先の良いスタートでした。その勢いのまま、新幹線・特急利用を含む定期外利用はコロナ禍前の8割程度の水準まで回復したことで、JR上場4社、大手私鉄は第1四半期、第2四半期決算とも全社が経常黒字となりました。
一方、苦しいのは定期利用です。コロナ禍当初から7~8割の水準で推移しており、通勤各線の混雑率は大幅に低下しています。
まだまだ油断はできないものの、少しずつアフターコロナの世界が見えてきた印象です。しかし、この3年間のニュースはコロナ一色で、それ以前から鉄道業界が直面していた問題は影に隠れがちでした。
例えば自然災害。3月16日に発生した福島県沖を震源とするマグニチュード7.4の地震では、東北新幹線の高架橋が損傷し、走行中の列車が脱線する事故が発生。約1か月後の4月14日まで福島~仙台間が運転を見合わせ、その後もしばらくは減速運転を強いられるなど、大きな影響が出ました。
豪雨災害も深刻 それも毎年…東日本大震災から11年が経過しましたが、地球から見ればわずかな時間です。震災以降地震活動が活発化している福島県沖では2021年2月にも同規模の地震が発生しており、この時も東北新幹線が一部区間で11日間運転を見合わせています。
JR東日本は震災前から新幹線高架橋の耐震化工事を進めてきたものの、完了にはまだ時間がかかる見込みで、2回の地震で被害を受けた高架橋は未施工区間でした。今後も同規模の地震が発生する可能性はあり、またそれは東北だけでなく南海トラフ地震も危惧されています。地震への備えは今後、ますます重要なテーマになりそうです。

8月、東北地方を襲った大雨は各地に被害をもたらした。
もうひとつ深刻な被害をもたらしたのが8月に東北を襲った豪雨災害です。JRでは奥羽本線の下川沿~大館間、津軽線の蟹田~三厩間、花輪線の鹿角花輪~大館間で路盤が流出、磐越西線の喜多方~山都間、米坂線の羽前椿~手ノ子間で橋梁が倒壊し、奥羽本線を除いて未だに運転再開できていません。
ここ5年ほどを振り返ってみても、2018年の「平成30年7月豪雨」、2019年の「令和元年被害日本台風」、2020年の「令和2年7月豪雨」など毎年のように豪雨災害が発生しており、甚大な被害を受けたローカル線は存続の危機に陥っています。ローカル区間だけでなく都市部の水害も想定した対策は待ったなしの状況と言えるでしょう。
東京で始動した新地下鉄計画前向きな話もあります。今年は「地下鉄新線」が話題になった年でした。まず年明け早々の1月28日、東京メトロが有楽町線 豊洲~住吉間、南北線 白金高輪~品川間延伸の鉄道事業許可を申請し、3月28日に国土交通大臣が許可しました。これにより、2030年代半ばを目指して正式に事業がスタートしました。
また多くの人を驚かせたのが、11月25日に小池百合子東京都知事が発表した「都心部・臨海地域地下鉄」構想でした。これは今後、開発が進む築地、晴海、有明など臨海エリアと都心の約6kmを直結する14番目の地下鉄を建設しようという計画で、2040年までの開業を目指しています。

延伸が予定されている南北線(左)と有楽町線(右:豊住線とも)(画像:東京メトロ)。
地下鉄建設は計画決定から開業まで15年近く要します。現在の鉄道整備は2016(平成28)年の交通政策審議会答申に沿って進められていますが、2020年の東京オリンピックに向けた各種改良工事と、オリンピック後の臨海エリア再開発計画、そして何よりコロナの影響で議論は先送りされてきました。そういう意味では、このタイミングで臨海エリアの地下鉄構想が浮上したのは当然だったのかもしれません。
気が付けば3年の時間が過ぎてしまいましたが、その間にも様々な課題が積みあがっています。足踏みしていた時間をどうやって取り戻していくか、いよいよアフターコロナに向き合う時期がやってきたと言えるでしょう。