橋の下が入口というトンネル、その抜けた先は墓地…ちょっと不思議なスポットが東京のど真ん中にあります。空間認識がちょっとおかしくなるかもしれませんが、そこはもともと“幽霊坂”と呼ばれていました。
東京メトロ千代田線の乃木坂駅で1番出口を出ると、その左隣は「乃木神社」、右には「乃木坂陸橋」が立ちはだかります。クルマはその陸橋の下にある「乃木坂トンネル」へ吸い込まれていきますが、このトンネル、構造が少々不思議です。
陸橋の上にあるトンネルのシェルター。ソーラーパネルも見える(乗りもの編集部撮影)。
この350mほどあるトンネルを抜けた先は、明治時代から数々の著名人が葬られている青山霊園になっています。同トンネルは、都会から墓地に出る点も特徴ですが、構造的にもかなり珍しい構造物となっています。
まず、乃木坂駅側から入ると潜るようなトンネルになっているのにも関わらず、外に出るといきなり緑地や墓地のある丘の上にいます。確かに地下に潜るように入ったはずなのになぜが、上に出ているのです。
答えはトンネルを出た直後に左折するとわかります。都道413号線を下り、都道319号線との境目の信号から右を見ると、青山陸橋の上に奇妙な筒があります。実はこれがトンネルの一部になっており、地面を走っていたのは途中までで、あとは陸橋の上を走っているのです。
乃木坂トンネルは1990年代に開通しました。
トンネルに沿う形で、地上にも道がありますが、途中で行き止まりになります。そこから、墓地へ向かってトンネルの屋根(シェルター)が伸びており、その左右は歩道になっています。このシェルターの南側には大量のソーラーパネルが設置されており、トンネル内の電力はソーラーパネルで発生した電力で補われているそうです。
また、道路の行き止まり部分付近は、下に道路が通っているとは思えないほど閑静な場所で、そこから階段を下りてたどり着くシェルター両脇の歩道は、数多くのテレビドラマや特撮モノのロケ地になっているのだとか。
なお、「乃木坂」明治の陸軍大将だった乃木希典の邸宅(現・乃木神社)があったことに由来します。それ以前の江戸時代には、幽霊坂、さらには行合坂、なだれ坂、膝折坂(ひざおれざか)などとも呼ばれていました。ちなみに現在青山霊園がある場所には、江戸時代には美濃国郡上藩青山家の下屋敷があり、そのことにちなみ青山霊園と呼ばれています。