カーデザイナーとして多くの名車を作り上げてきた奥山清行さん。近年では新幹線など鉄道車両のデザインでも知られます。
2015年4月15日(日)、イタリアの自動車メーカー、アルファロメオのお台場ショールームで「KEN OKUYAMAスペシャルトークショー」が行われました。海外では「KEN OKUYAMA」という名前で活躍している奥山清行さんは、イタリアのデザイン会社ピニンファリーナでチーフデザイナーを務め、フェラーリ社の創業55周年を記念した限定モデル「エンツォフェラーリ」などを作り上げた、世界的に有名なデザイナーです。
近年では鉄道車両のデザインも手がけ、北陸新幹線のE7/W7系やこの秋登場予定の山手線E235系も奥山さんが監修。鉄道ファンからの注目も集めています。
今回のトークショーは、アルファロメオと奥山清行さんがコラボレーションしたコンパクトハッチ「ジュリエッタ」スペシャルモデルの発売を記念し、開催されたもの。雑誌『カーグラフィック』代表の加藤哲也さんとの対談形式で行われました。
トークで奥山さんはまずイタリア車について、「ビールだと『キレ』と『コク』というのがあるじゃないですか。ものごとでも両方必要で、『キレ』だけだと飽きやすくなります。イタリア車で一番は『キレ』で、いまは『キレ』のなかに『コク』を入れています。ドイツ車は『コク』が多く、最近の日本車もすべてではないのですが、『コク』ばっかりですね」とその印象を語っています。
ピニンファリーナ在籍時に、アルファロメオのデザインも担当したこともある奥山さん。このアルファロメオに関しては「フェラーリより先に出ていた高級車で、いまは普段使いも可能。クルマ好きを満足させているという、押さえるところ押さえたブランドですね。僕自身もイタリアのときは『166』に乗っていましたし、好きなブランドです。そのデザインをしたとき、『アルファロメオはこうしなければいけない』ではなく、『アルファに見えればいい』と言われたのですがが、それは一番難しかったですね」と話しました。
また今回、アルファロメオと奥山さんがコラボして生まれた「ジュリエッタ」のスペシャルモデルは、「KEN OKUYAMA DESIGN」のオリジナルカー「コード9」、「コード7 クラブマン」をモチーフにデザインされ、白の「ビアンカ」と赤の「ロッサ」が用意されています。オリジナルの「ジュリエッタ」製作者が特別バージョンを作ったら何をするか、ということを意識して作ったそうです。
ちなみに奥山さん自身も白の「ビアンカ」を購入。「僕は手がけたクルマはなるべく身銭を切って購入しています。今後につながりますし、クルマに申し訳ないなとも思うので。それと自分で味わうのも必要だと思っています。今回「白」を選んだのは家族に相談して決めたのですが」と、その理由を教えてくれました。
トークショーでは一般参加者からの質問に奥山さんが答えるという企画も行われ、現在の「カーデザイン」について、また「鉄道車両デザイン」についても語られています。
「エンツォフェラーリ」については、「実はあの車、最終案は15分でできたんです。僕が温めていたデザインがダメ出しされて、15分で用意できなければダメだと言われ、引き出しにしまっていたもうひとつのデザインを元に、すぐに仕上げたんです。それでギリギリOKが出たんですよ」という裏話が披露されました。
自動車の今後については、「これから10~20年で革新的な技術が出てきます。自動操縦もそうだし、素材に関しても二酸化炭素の排出量を考えるともっと軽くならないといけないですね。そうしたなか、クルマは面白くなくなるのかというと、僕はそう思いません。自動操縦が出てくると、もっと面白くなると思っています。例えば、移動のクルマとガレージに入れておいて日曜日に乗るクルマのように分かれるかもしれません」と予測していました。
いまのカーデザイナーに求められることは、という質問に対しては山手線で今秋登場する予定の新型車両E235系に触れられています。
「『デザイン』という仕事で、いい絵を描いてキレイなものを作るだけでは、クライアントにとって価値はありません。もうすぐ出ると思うのですが、僕は新しい山手線のデザインもしています。
「デザインの意味」についてそう熱く語る奥山さんに、満員の参加者は一心に耳を傾けていました。