福島県内を走るJR東北本線で「タイガーロープ」が撤去されているのが見つかり、警察が撮り鉄の犯行とみて捜査しています。この「タイガーロープ」、過去にも撮り鉄が勝手に撤去した事例が存在。
2015年6月8日(月)、JR東日本・東北本線の福島県内、白河~久田野間で線路に設置されていた鉄の棒とロープが何者かに撤去されたことが判明。テレビ朝日系(ANN)の報道によると、警察は鉄道の写真撮影を趣味とする「撮り鉄」の犯行とみて捜査しているといいます。
このとき何者かに撤去された鉄の棒とロープは、線路が2本並んだ「複線」区間で、上り線と下り線を分割するように設置されているもの。撮り鉄からは「タイガーロープ」と呼ばれています。
撮り鉄の一部にこの「タイガーロープ」を毛嫌いする人がおり、今回、福島県で起きたものと同様と思われる事例が過去にあります。
2012年9月8日、長野県のしなの鉄道が開業15周年を記念し、特急「そよかぜ」の復活運転を実施。沿線には大勢の撮り鉄が集まりました。この日のことについて、しなの鉄道は同社社員が管理するTwitterの公認非公式アカウントで、次のようにつぶやいています。
「本日の件につきまして、ご説明をいたします。上りそよかぜの通過前、平原、小諸間におきまして、撮影者の一人が線路内に立入り、上下線間のロープ及び杭を撤去したものであります。ロープの一部は切断され線路外へ放置されていました。
撮り鉄が「タイガーロープ」を撤去したのです。しなの鉄道の公認非公式Twitterアカウントはその前日、次のようにつぶやいていました。
「撮り鉄の「一部の方」に、上下線間のタイガーロープが邪魔だと仰る方がいます。あのロープは上下線間をきちんと分離することで線路内の工事や作業を安全に行うために必要なものです。線路が安全に保たれなければ、列車も走ることができないということを知っておいていただければと存じます」
にもかかわらず、「タイガーロープ」を撤去する撮り鉄が出てしまいました。
なぜ撮り鉄は「タイガーロープ」を嫌うのか安全に線路の保守作業を行うため、必要な「タイガーロープ」。なぜ撮り鉄はそれを嫌うのでしょうか。
理由はとても明快です。「タイガーロープ」は車両を綺麗に撮影するうえで、邪魔になるからです。特に新しい「タイガーロープ」は黄色が目立つことから、嫌悪する人もいます。
列車が先頭から最後尾まで、図鑑の写真のように綺麗に収まった鉄道写真は「編成写真」と呼ばれ、「鉄道写真のブツ撮り」と表現する人もいます。「ブツ撮り」は写真業界の用語で、簡単にいえばカタログに載せるような商品写真の撮影です。
商品写真に邪魔なものが映り込んでは台無しです。そのため「編成写真」においては邪魔なものが入っておらず、とにかく車両が綺麗に写っているものを良しとするひとつの価値観があります。その価値観に従うと、列車の前に張られた「タイガーロープ」は邪魔でしかないとして、しばしば一部の撮り鉄が暴走するわけです。
しなの鉄道は先述の事件の際、公認非公式Twitterで次のようにつぶやいています。
「今回の件はマナー以前の話です。また線路は公表している時刻表以外にもたくさんの列車が走ります。撮り鉄のみなさんには改めて安全な場所からの撮影をお願いしたいと思います。本当に、今回の件は非常に残念です」
鉄道ファンの大部分も「非常に残念」と思っているでしょう。こうした行為をする撮り鉄は、一部の人です。しかし1960~70年代の「SLブーム」時なども同様の事例が起きており、いまに始まったことではありません。