JR北海道は、JR東日本の車両と基本仕様が同一の新型車両を導入すると発表しました。その背景には「安全」と「新幹線」に集中するJR北海道の姿がありそうです。

経営資源を集中するJR北海道

 JR北海道は2015年6月10日(水)、新型一般気動車の試作車(量産先行車)製作について、詳細を明らかにしました。「一般気動車」とは主に普通列車で使われる、ディーゼルエンジンなどで走る車両のことです。

 現在、主として同社のローカル線で使用されている一般気動車キハ40形は、国鉄時代に製造されて以降32年から37年が経過。その老朽取り替え用として、JR北海道は新しい一般気動車を製作する計画です。

 JR北海道は、まずその試作車(量産先行車)を2両製作。2017年度に投入し、走行試験などを2冬期にわたって行い、検証したうえで、2019年度以降に量産車の製作を計画しているといいます。

 この新型車両は、同時期に投入が予定されているJR東日本の車両と主な仕様を同一にすることが大きな特徴です。

 JR東日本は今年5月19日、新型一般気動車を新潟地区へ2017年度から、秋田地区へ2020年度から投入することを発表しています。

 JR北海道は2014年9月10日、「安全対策」と「新幹線の開業準備」に限られた人、時間、資金などを優先的に投入する必要があることから、新型特急車両の開発中止を明らかにしたほか、今年4月8日には同様の理由から所有するホテルの売却などを発表。またJR北海道は2007年から、次世代気動車として「モータ・アシスト式ハイブリッド車両」の開発も独自に行っていました。

 そうした状況のなか、JR東日本と同一の基本仕様で登場する新型車両。背景にはやはり、「安全」と「新幹線」にリソースを集中する狙いがあるのかもしれません。

車両の冷房化率も向上へ

 JR北海道が導入予定の新型一般気動車は、「電気式」の採用もポイントです。

 旧来のキハ40形気動車は、搭載するディーゼルエンジンで生み出された動力を、変速機(トルクコンバータ)を介し車輪に伝え、走行する「液体式」という仕組みです。対し「電気式」はディーゼルエンジンの動力で発電し、電気モーターを駆動させることで走行。いわば「小さな発電所」を搭載した電車です。

 この電気式を採用することのメリットしてJR北海道は、推進軸など落下に繋がりやすい部品を無くすことができ、運行時、また保守時の安全性が向上すること、構造が複雑で故障しやすい変速機などを無くすことができ、信頼性が向上すること、構造がシンプルになり電車と共通の部品を使えるため、メンテナンス時の負担軽減、コスト低減が図れることを挙げています。

 またJR北海道はこの新型車両の特徴について、前後に運転席があり1両での運行が可能なこと、ワンマン運転が可能なこと、冷房装置や車いすスペース、車いす対応トイレなどが設置されサービス品質が向上することを挙げています。気候の関係もあり、JR北海道のローカル線普通列車では現在も非冷房車が珍しくありません。

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