陸上自衛隊の最新式戦車10式が、ワインを使って高い射撃能力を証明しました。いったいなぜワインで、射撃能力の高さが分かるのでしょうか。

激しく動いてもこぼれなかったワイン

 2015年10月10日(土)、陸上自衛隊の土浦駐屯地 武器学校(茨城県)で行われた一般公開イベントに、最新鋭の10式戦車が登場。ある驚きのパフォーマンスを披露しました。

 この日、10式戦車が姿を現すと、隊員が主砲の先端にグラスを乗せ、赤ワインを注ぎます。その状態で10式戦車は、車体を様々な方向へ傾斜。さらにその場で旋回するなど、次々に姿勢を変化させました。

 しかし、主砲の砲身は一定方向を指し続けて微動だにせず、1滴も、ワインがグラスからこぼれなかったのです。

なぜワインがこぼれないと射撃能力が高いのか?

 戦車は、走行しながら射撃する「行進間射撃」で、精度の高い攻撃ができれば有利になります。自車への攻撃を避けながら、あるいは動き回る目標を追いながら、切れ間なく攻撃できるからです。

 ただ、この「行進間射撃」は車体の姿勢が常に変化するため、停車した状態での攻撃と比べて格段に照準が難しいとされます。

 しかし、陸自の10式戦車はこの「行進間射撃」はもとより、さらに難易度が高い、蛇行しながら射撃を行う「スラローム射撃」の実力も世界トップクラスといわれます。

 今回、10式戦車がワインをこぼさなかったことは、激しく動き回っている最中でも、10式戦車は主砲の照準を高い精度で目標に合わせ続けられる、ということを意味します。

 つまり言い換えれば、実際に砲弾を撃つことなく、ワインを使って射撃能力の高さを証明した、ということになるのです。

 陸上自衛隊は今回のパフォーマンスについて、「日本の優れた技術力をもって開発・製造された、戦車をはじめとする様々な国産装備品の性能の高さの一例を、皆様に興味を持って理解していただけるようにと、10式戦車を使用した性能の紹介を行いました。このような日本の極めて高い開発技術や製造技術もまた、我が国の防衛力、そして有効な抑止力としての重要な役割を担っていると考えています」と話しています。

編集部おすすめ