戦闘機の「第6世代」への進化が、少しずつ具体的になってきました。この「第6世代」では、何が実現されるのでしょうか。
今年2015年、ロッキード・マーティン社(米)の最新鋭戦闘機で自衛隊も導入予定のF-35「ライトニングII」が、初期作戦能力を獲得。米海兵隊において実用化されました。F-35は「第5世代戦闘機」と呼ばれる区分の機種であり、同じく第5世代戦闘機としてはロッキード・マーティンF-22「ラプター」があります。
現在、中国やロシアでは第5世代戦闘機と推測される成都J-20やスホーイT-50の開発が進んでおり、これらの戦闘機も数年のうちに実用化される見込みとなっています。もうまもなく、第5世代戦闘機はありふれた存在となるでしょう。
こうしたなかにあって、いよいよ次世代の「第6世代戦闘機」のコンセプトも相次ぎ公表されるようになってきました。去る12月12日(土)にもノースロップ・グラマン社(米)は、2035年頃の初期作戦能力獲得を見込んだ、F-22やF-15、F/A-18E/Fの後継機となる第6世代戦闘機の構想図を発表しました。
そもそも戦闘機の「世代」とは、なんなのでしょうか。実は20世紀以前の航空雑誌などにおいては、「第〇世代」という用語はまず見かけることはありませんでした。これはロッキード・マーティン社が自社の新製品であるF-22やF-35を「第5世代」と呼称し、他社の競合機を「第4世代」とすることで差別化を図る“商戦略”として登場した言葉なのです。
ですから競合他社、例えばボーイング社はF/A-18E/F「スーパーホーネット」を「第4世代」と呼ばれることに不快感を露わにしています。
現在、「第4世代戦闘機」の主流は自衛隊機ならばF-15、F-2といった機種が該当し、「ほぼ進化の限界に達した機動性」「高性能なレーダーによる視程外距離交戦能力」「高い命中精度を誇るミサイル」の搭載などを特徴とします。
そして「第5世代戦闘機」は「ネットワーク中心戦闘能力」「さらに高性能なAESAレーダー」「センサー融合」「ステルス性」などが特徴です。また第4世代戦闘機のうち、第5世代戦闘機の能力を一部取り込んだ機種を「第4.5世代機」などと呼ぶこともあります。例えば先述のF-2は第4世代戦闘機ですが、AESAレーダーを搭載しているほか、ネットワーク中心戦闘能力の付加も行われる予定です。
それではいったい、「第6世代戦闘機」ではどのような能力が実現するのでしょうか。ノースロップ・グラマン社のコンセプト図や、過去にボーイング社が公表した「F/A-XX」、ロッキード・マーティン社の「ミスフェブラリー」、防衛省技術研究本部の「i3ファイター」などからその未来を探ってみます。
ノースロップ・グラマン社によるコンセプト図を見て目につくのは、なんといっても「レーザー兵器」です。
強力な赤外線によって対象を焼き切る「赤外線レーザー」は、エネルギー効率の問題を抱えており、放熱システムや熱効率の向上によって解決を見込みます。しかし電波で対象の電子回路を破壊する「高出力マイクロ波」は、すでに実用されつつあります。
これらの“光速度兵器”は「指向性エネルギー兵器」とも呼称され、接近するミサイルを迎撃する「バリアー」を実現します。
戦闘も「クラウド」へ第6世代戦闘機の機体には、電波を吸収しレーダーに対して不可視となる「メタマテリアル」が多く用いられ、ステルス性はさらに高まるでしょう。
ただし、「ステルス破り」もまた同時に進化します。そのキモとなるのが、さらに高度化されたネットワークです。
「ステルス」とは、あくまでも発見される確率を下げる技術。複数の戦闘機や早期警戒機のレーダーなどをネットワーク上においてひとつに統合することで、誰かのレーダーで見えている敵機を自分で見えているのと同様に扱えるようにしてしまえば、敵ステルス機の発見確率を大幅に高めることが可能です。これは「クラウドシューティング」「統合火器管制」などと呼ばれています。
また、人工知能で自律交戦する無人戦闘機(UCAV)の実用化も行われ、1機の有人戦闘機に5機程度のUCAVがロボット僚機として作戦を支援するようになるでしょう。
第6世代戦闘機には数兆円の予算を必要とするため国際共同開発が主流とり、単独開発は恐らく中国以外は不可能です。また開発には10年以上の歳月が必要ですから、数年のうちには開発がスタートすると推測されます。レーザー兵器や無人戦闘機が活躍する「SFの世界」はまもなく、現実のものとなるかもしれません。