山手線に架かる「消えた橋」が復活、開通の日が近づいています。通行止めとなってから7年、”オタクの聖地“に通じるルートが再開通することで、どう便利になるのでしょうか。
東京都豊島区で長期にわたり行われてきた「西巣鴨橋」の架け替え工事の完工が視野に入ってきました。
架け替え工事中の西巣鴨橋。2022年に旧橋が撤去された状態(画像:Google)
豊島区東池袋と北大塚とを結ぶこの橋は、国道254号春日通りと都道430号とを結ぶ豊島区道、通称「西巣鴨橋通り」が、JR山手線(池袋-大塚間)およびJR湘南新宿ライン(山手貨物線)を渡る部分に架けられています。サンシャインシティの向かい側、アニメ関連ショップが立ち並ぶ通称「乙女ロード」の延長線上にある橋です。
この道は、地域内交通のほか、混雑する明治通りの「池袋六ツ又陸橋」交差点を避けサンシャインシティと北区王子方面とを行き来するクルマが加わり、交通量は1日約6000台に上っていました。
ただその架設は1959(昭和34)年と、豊島区で管理する橋としてはもっとも古く、橋の健全度を示す4段階評価では早期に対策が必要となる「III 早期措置段階」とされるなど、老朽化が進行していました。
さらに、歩行者は橋への昇降が階段のみのためバリアフリーの観点から課題となっていたこと、幅員が狭く歩車混合交通となり安全性が確保できないこと、そして耐震性能の不足などから、全面的な架け替えが決まったのです。
工事は2018年より、橋そのものを全面通行止としてはじまりました。その間、歩行者や自転車は池袋寄りの「宮仲橋」や大塚寄りの「栄橋」へ、クルマは都道305号明治通り、区道空蝉橋通りへの迂回を余儀なくされることとなりました。
架け替え工事の完了後は、道路の幅員は12.26mから12.8mに広がり、とりわけ歩道は車道から独立し、左右各1.75mから2.5mとなります。
また橋の高さを下げ、かつ橋長を33mから117mに延長することで、傾斜も8%からバリアフリーに関する基準に適合する5%以下に緩和され、階段なしに橋を渡ることが可能となります。
ただ前述のようにこの橋はJR線の直上を走ることから、工事そのものはほぼ24時間体制で行いつつも、線路内での作業は電車の運行が止まる深夜0時から4時に限られるなど、厳しい制限がありました。そのため工期は既存の橋の撤去だけで約4年、続く新たな橋の建築をあわせ7年間近くで、完工は2025年3月が想定されていました。

宮仲公園通り側の工事現場ゲート。橋は左カーブしながら立ち上がる(植村祐介撮影)
ただ実際の工事では、地中から想定していない構造物(スロープ部擁壁の控え壁、コンクリートの杭など)が見つかったことによる作業量増、工法の変更などがあり、最終的に開通予定は約1年先送りされ、2026年3月となっています。
既存の旧橋の撤去から、新たな橋の新設まで、工事は以下の手順で行われました。
まず旧橋の上に橋桁を撤去するためのクレーンの土台となる機械設備を渡し、8分割した橋桁を順次、東池袋方向に送り、送られた橋桁をさらに10分割しダンプカーで搬出します。
その後、橋桁撤去のための機械設備を解体、続いて橋台およびスロープ部を撤去します。
JR線にかかる部分の架橋は、新たな橋台を設置したのちに春日通り側に設置した作業台に分割した橋桁を載せ、宮仲公園通り側へ送り、さらに作業台上で継ぎ足しという手順で行われ、その後、地平部から橋台に至るスロープ部が構築されます。
さて、完成まであと1年を切った2025年4月、現地での状況を確認しました。
工事現場は春日通り側、宮仲公園通り側とも白いゲートで覆われていますが、そこには「2026年3月開通予定」という貼り紙があり、長かった工事の終わりが近いことを知らせていました。
外観から判断するに、線路部をまたぐ橋桁の構築はもちろん、スロープ部の路盤もほぼ完成し、橋の全容がイメージできるようになっています。
宮仲公園通り側からは従来、ゆるゆると続く上り坂が橋にかかるところから傾斜がさらに増すイメージでしたが、新たな橋はそのゆるやかな上り坂がそのまま続くような印象です。
この傾斜の緩和は、車いすなどでの通行がより容易になるだけでなく、通勤や買い物でこの橋を自転車で渡る人にとっても、大きな助けとなりそうです。
通りたくない「ヤバイ交差点」を回避!そして橋の上では、数多くのスタッフが、引き続き完成に向けての作業を続けていました。このように完成まで1年を切った新たな西巣鴨橋ですが、再開通で、周辺の交通はどう変わるのでしょうか。

池袋六ツ又陸橋交差点(乗りものニュース編集部撮影)
やはりいちばん大きいのが、前述の池袋六ツ又陸橋交差点を回避して、サンシャインシティ方面と王子方面のクルマ移動ができるようになることでしょう。同交差点は通行止め中の2023年度も、2023年度も都内の「事故多発交差点ワースト1」となるなど危険な交差点です。
着工時には「7年は長いなぁ」と思っていた西巣鴨橋の架け替え工事が、工期延長を含めようやく終わることに、ある種の嬉しさを感じる人も少なくないでしょう。
あと1年、事故なく工事を進め、無事開通の日を迎えられることを祈りたいと思います。