NEXCO中日本が国土交通省を訪れて、一連のETC大規模障害について謝罪しました。中野洋昌国交相は厳重注意を言い渡す中で、同社が策定する再発防止対策とマニュアルのポイントについて言及しました。

「利用者に無用なご負担をおかけしない」が当然の大前提

「私からは、料金のお支払いに関するNEXCO中日本の一連の説明が一貫をせず、対応が不適切であったことにより、利用者の方に大変な混乱を生じさせてしまったことは極めて遺憾であるということを取り上げさせていただきました」

「利用者に不便をかけるな」国交大臣、NEXCO中日本を叱る ...の画像はこちら >>

ETC障害の対応で、事業者本位の考え方が問われている。写真はイメージ(画像:写真AC)

 2025年5月9日の閣議後会見で、同7日のNEXCO中日本からの報告について問われた中野洋昌国土交通相。その内容は厳しいものでした。

 4月6日に発生した36時間にわたる大規模ETCシステム障害で、障害復旧に時間がかかったこと以上に問題になったのは、利用者への対応と説明です。特設ウェブサイトを設置して後日清算を求めましたが、その中で支払いを終わった利用者に対して、時間差でクレジットカード会社から請求が実行され、二重払いになる可能性が出てきたことや、該当する利用者の半数近い約51万台が後日清算に同意していないことから、同社は該当する利用者全員を対象に、実質上の払い戻しをすることを公表しました。7日の報告は、こうした対応を縄田 正社長自らが説明したものです。

 同社によると、その報告内容は「システム障害のおわび」「通行料金『還元』の説明」「再発防止の取り組みとマニュアル策定」の3点。しかし、中野国交相はその報告内容に納得した様子はありませんでした。

「再発防止策および危機管理マニュアルの作成を6月中にということで指示をしていたわけでありますが、利用者に絶対にご不便をおかけしないという観点から、この作成についてしっかりと取り組むことを改めて指示をさせていただいた」

 ETCのシステム障害を想定したマニュアルがないことは、利用者への影響を拡大させる最大の要因となりました。その不備を解決することは決まっていますが、同社からの国交省への報告では、マニュアル内容の方向性を示す策定のポイントについて「説明はしたかどうかは不明」(NEXCO中日本)とのこと。

 また、利用者全員への実質上の払い戻しについても「ご迷惑をおかけしてしまった重大性に鑑み還元する」と説明。システム障害が利用者の不便に直結するという考え方には立っていません。

 大株主でもある国交省は、危機管理委員会での議論やマニュアル策定を待って、対応する予定ですが、中野氏はその方向性について、改めて利用者本位の視点を強調しました。

「この検討の結果を踏まえつつ、利用者に無用なご負担をおかけしないということを当然の大前提に、会社ともしっかり連携をしながら、取り組んでいきたいと考えております」

 日本道路公団の民営化から20年。高速道路会社は利用者をお客様と呼ぶようになりましたが、4月6日のETC大規模システム障害は事業者本位の対応を露呈しました。その判断の誤りは、実質上の債権放棄という大きな決断をする結果になっています。NEXCO中日本は名実ともに利用者本位の対応を構築することが求められています。

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