フランスの「パリ北」駅は旅行者のなかで、ヨーロッパでも指折りの“治安の悪い駅”と紹介されることが多い場所です。この駅を通る電車を数日間利用してみました。
フランスの「パリ北」駅は旅行者のなかで、ヨーロッパでも指折りの“治安の悪い駅”と紹介されることが多い場所です。2025年6月に取材でパリを訪れた際、ホテルの価格が比較的落ち着いていたことからこの駅と取材会場(パリ航空ショーが行われているル・ブルジェ空港)を数日間行き来しました。実際のところはどうなのでしょうか。
パリ北駅(松 稔生撮影)。
パリ北駅は国際列車の「ユーロスター」をはじめ、多くの電車が行き交うヨーロッパ有数の主要ターミナル駅です。また、パリの空の玄関口、シャルル・ド・ゴール空港からも「RER B線」で乗り換えなしでアクセスができることから、旅行者にとっては利便性の高い駅ではあるわけです。
ただこのシャルル・ド・ゴール空港駅とパリ北駅の途中に治安の悪いエリアがあり、RER B線を利用する際は、とくにスリや強盗などに注意しなければならないとされています。過去には在フランス日本国大使館から注意喚起が発出されたことも。そうしたことから、空港と市街地の往来には、バスやタクシーを使う旅行者も多く見られます。
しかしル・ブルジェ空港の最寄りはこの路線の駅です。つまり、仕事のためやむを得ず「パリ北駅を拠点にRER B線で会場を行き来する」状況になってしまったわけです。
今回筆者はセキュリティポーチの活用、財布を小分けして複数持ちにする、スマホを2台持ちし、メイン機は首からかけられるケースを使用するなどの対策を行いました。
シャルル・ド・ゴール空港駅~パリ北駅間のRER B線は快速と各駅停車があり、筆者は夕方に空港到着後、パリ北駅まで快速を使いました。2区間の間に停車する駅は1つのみです。ほぼ利用しているのは旅行者や空港関係者で、途中の停車駅で地元の方が乗ってくるような感じです。こちらは夕方ということもあって比較的治安は安定しているように思われました。
種別でも大分変わる? 駅構内や周辺の様子とはそうしてパリ北駅に到着したのですが、もちろんヘタっているように座り込んでいる人などの“海外駅あるある”はあるものの、とくに物乞いの人などはおらず、対策をすれば事前の想定ほどではなさそうです。一度だけ、ご老人に差別的なジェスチャー攻撃を受けましたが、フランスではそこまで珍しいことではないので想定の範囲内です。駅前でいきなり話しかけられることもありましたが、スルーしていれば大丈夫そうでした。
また治安の改善に自治体側も取り組んでいるようで、たとえばパリ北駅にある10区では、日曜の午後はスーパーでお酒を売っていませんでした。これは飲酒による治安悪化を防止すべく販売制限をかけているものと見られます。
さてRER B線の快速は比較的治安は安定していたとは言ったものの、ショー会場までの区間は各駅停車を使わなければなりません。各駅停車の車内の様子は、快速より遥かに緊張感があります。
まず業界の1大イベントの実施期間ですので、朝は、日本ほどではないもののかなり混雑しています。そうしたなか、とくに途中駅から明らかに様子が普通ではない人や、扉の近くにかなり緊張感を持たざるを得ない雰囲気の人が複数人並んでいる光景が見られました。日の長い夏、そして外国からの出張者が多い状況でこれですから、普段ならなおさら、しっかり警戒していないと痛い目を見る可能性が十分ありうるというのは、各駅電車のなかで感じることができました。
またRER B線の各駅の場合、混雑率もそれなりなので、旅行者がスーツケースを持って乗り込める状況ではないというのもポイントです。トラブルのもとになる可能性もあるかもしれませんので、スーツケースなどを持っている場合は快速、もしくは他の交通手段利用かを検討した方が良いかもしれません。