高崎線では、籠原駅より北の駅では電車のドアが自動では開きません。創作物で過度描写され、ネタにされることも。
暑い時期が続いていますが、JR東日本の高崎線では、この時期ならではの、ある意味でありがたい奇妙な現象が発生します。埼玉県熊谷市にある籠原駅を過ぎると、車両のドアがなぜか自動で開かなくなるのです。
籠原駅で車両の切り離し作業を行う高崎線車両(斎藤雅道撮影)
この現象は、2017年にドラマ化、2018年にはアニメ化もされた井田ヒロトさん原作の漫画『お前はまだグンマを知らない』でも、誇張気味に描かれています。作中では、高崎線に乗っていた主人公が、群馬県に入る手前の籠原駅を過ぎた瞬間、突然ドアが開かなくなり恐怖に陥る様子がコミカルに表現されています。実はこの描写、まったくのフィクションというわけではありません。
とはいえ、正確には「ドアがまったく開かなくなる」のではなく、「自動で開かなくなる」というのが正しいところです。籠原駅から高崎駅までの区間では、ドア横のボタンを押して開閉する「半自動ドア」方式が採用されています。かつては手で引いて開けるタイプの車両もありましたが、現在は運行されていないようです。
こうした方式は、特に寒冷地を走る地方の鉄道ではよく見られます。たとえば中央本線や宇都宮線でも、一部区間では半自動ドアに切り替わります。
高崎線においては、籠原駅以北の区間で通年にわたり半自動ドアが導入されています。
実際に乗ってみるとわかりますが、停車駅でドアが開くのは、乗降客がいる箇所のみ。そのため、外気の流入が最小限に抑えられ、夏の熱風や冬の寒風を防ぎ、車内は非常に快適です。
では、なぜ籠原駅が半自動ドア運用の境界となっているのでしょうか。それは、駅ごとの利用客数に関係しています。半自動化を行ってもスムーズな乗降が可能な区間として、利用状況などを踏まえ、籠原駅がその境目として設定されているようです。
また、籠原駅には車両基地が併設されており、東京方面からやってきた15両編成の電車は、この駅で前方5両を切り離し、後方10両で高崎方面へと向かいます。『お前はまだグンマを知らない』では、この場面もネタとして描かれており、知らずに居眠りしていた主人公が目覚めると車両には誰もおらず、車掌に移動を促されるという“恐怖体験”としてギャグシーン化されています。