埼玉と山梨を結ぶ地域高規格道路「西関東連絡道路」の計画が進んでいます。その一部を構成する埼玉県秩父市の国道140号「大滝トンネル」では、開通に先立ち異例の形で暫定的な通行が始まります。
埼玉と山梨を地域高規格道路西関東連絡道路」で結ぶ計画が進んでいます。各所で整備が進んでいますが、2025年7月末から未開通のトンネルの活用が異例の形で始まります。
国道140号大滝トンネルの秩父側坑口(画像:埼玉県)
西関東連絡道路は、国道140号のルートをなぞるように、関越道の花園IC(埼玉県深谷市)から秩父市(埼玉県)を経由し、新山梨環状道路の桜井JCT(山梨県甲府市)に至る計画の道路です。
すでに開通している国道140号の皆野寄居バイパスや皆野秩父バイパス、雁坂道路(雁坂トンネル)、甲府山梨道路などは、いずれ西関東連絡道路の一部として組み込まれます。
また、皆野秩父バイパスの終点(秩父市蒔田)から秩父ミューズパーク付近まで結ぶ長尾根バイパスの(延長3.8km)は、2022年度に事業化。埼玉県の大野元裕知事はこのバイパスの新規事業化が決まった際に、次のようにコメントしています。
「『西関東連絡道路一般国道140号長尾根バイパス』は、秩父地域の交通渋滞解消と円滑な交通を確保するとともに、秩父市街地と西秩父地域のアクセス性を改善する地域の悲願とも言える重要な幹線道路です」
そしてさらに奥秩父でも、西関東連絡道路の一部となるバイパスが建設されています。現在の7kmの道のりを2kmに短縮する大滝道路(大滝トンネル)です。
建設中のトンネル、一般車も通行OKに大滝トンネルは、秩父鉄道の終点・三峰口駅付近の強石地区と、道の駅「大滝温泉」近くの落合地区をまっすぐ東西に結びます。
国道140号のこの区間は、秩父市街と、三峯神社・秩父湖・中津川渓谷といった観光スポットや山梨県甲府方面を結ぶ重要なルートですが、迂回路がありません。さらに現道は、荒川がつくるV字渓谷の急斜面に張り付くように通されており、急カーブが多い、歩道がなく幅が狭い、落石が多いといった課題があります。
大滝トンネルは、約7kmにわたり「コ」の字のように遠回りしているこの現道を、2053mのトンネルで短く結ぶものです。
県によると、大滝トンネルは2022年5月13日に秩父側から掘り始めて、2024年3月19日に貫通しました。
完成するとこのトンネルは、県内では、山梨県境にまたがる雁坂トンネル(6625m)を除くと、釜伏トンネル(2560m、国道140号皆野寄居バイパス)、大峰トンネル(2200m、国道140号)に次いで3番目の長さになります。トンネルの開通により距離は約5km、所要時間は10分程度それぞれ短縮される見込みといいます。
このように時間短縮や走行性の向上などが期待される大滝トンネルは2028年頃まで事業が続く予定ですが、もう一つの役割「災害時の迂回路」が、図らずも開通前から発揮することになりました。
2025年7月11日夜、道の駅「大滝温泉」から秩父市街へ2kmほど進んだ国道140号の現道で落石が発生。県によると人的被害はありませんでしたが、路面の陥没やガードレールの損傷、川側の擁壁の傾きなどが確認されているといいます。
このため国道140号は現在、秩父市内の、三峰口駅近くの贄川交差点から、道の駅「大滝温泉」までの約8.5kmにわたり、通行止めが続いています。県によると通行止めの解除まで4か月程度かかる見込みといいます。
この対策として県は、建設中の大滝トンネルの暫定活用を決定。7月16日から緊急車両やスクールバスを通行できるようにしています。
そして一般車両も、7月30日朝10時から大滝トンネルの通行を認める予定です(歩行者、自転車・バイク等の二輪車は通行不可)。
トンネル自体は、すでに本体工事が完成しており、現在は排水施設や照明、非常用設備、舗装などの工事を進めているといいます。そのため今回の通行はあくまで暫定的な措置です。通行は24時間可能ですが、トンネル内は未舗装(砂利)のため、15km/h以下の最徐行で走ることになります。