新潟県がいわゆる「ミニ新幹線」の導入を検討しています。在来線を高速化する手法として、県内の北陸新幹線と上越新幹線を在来線経由で直通する特急を走らせる――なぜ、このような計画が持ち上がっているのでしょうか。
【実現性アリ…?】これが新潟の「ミニ新幹線」案です!(地図/画像)
県は2024年度、「高速鉄道ネットワークのあり方に係る調査」を行い、2025年8月に暫定結果を公表しました。「ミニ新幹線案」を含めた、在来線高速化へ向けた4案を比較検討したものです。
このうち、最も費用便益比(B/C)が高いとされたのが「上越妙高-長岡」案です。北陸新幹線の上越妙高駅から、えちごトキめき鉄道とJR信越本線を経て、長岡駅から上越新幹線に乗り入れて新潟駅まで直通運転を行うというもの。概算工費は約1200億円(車両開発・購入費等は含まず)とされました。
ほか3案は、
・上記のミニ新幹線化を上越妙高駅からではなく「糸魚川駅」からとする案。
・北越急行ほくほく線をミニ新幹線化して上越新幹線へ乗り入れ、柏崎-長岡間にシャトル特急を走らせて連絡する案。
・上越妙高―長岡間の線路を改良し、この区間だけで特急を走らせる案。
というもので、糸魚川案は工事延長が長いため概算整備費が約1500億円、ほか2案は短絡線の整備などがあり、2000億円を超える試算でした。
ただ、ネットでは「わざわざスイッチバックが必要な上越妙高案より、糸魚川案だろう」といった声も。実際、糸魚川案もB/Cは最大で1.0を越え、上越妙高案と“僅差”ではあります。
新潟県交通政策課によると、「この4案からどれかに絞って検討していく想定はしていません。
今後のスケジュールは未定としつつも、「今年度は今の調査で足りない部分を深堀りし、B/Cに盛り込まれなかった要素を多面的に検証します。たとえば、高速化によって雪などによる輸送障害が緩和され、遅延が軽減される効果がありますので、それはどの程度、便益として還元できるかなど、定量的でない要素も評価に加えていきます」とのこと。もしかしたら今後、評価が覆るかもしれません。
では、そもそもなぜ「ミニ新幹線」を検討しているのでしょうか。
最終ゴールは「フルの新幹線」現在の新潟の鉄道をめぐっては、短期的な課題と、長期的な課題があるといいます。そのなかで、ミニ新幹線の検討はいわば「中期的な課題」だそうです。
上越地区-新潟間のメイン列車となっている特急「しらゆき」(画像:PIXTA)。
「最終ゴールはあくまで『羽越新幹線』です」――県の担当者はこう明言しました。
羽越新幹線は富山から青森まで日本海側を結ぶ新幹線の構想ですが、現状では「基本計画路線」の位置づけに留まり、「整備計画路線」にはなっていません。整備を進めるには法令を変え、整備計画路線への格上げが必要です。
そこに至るには時間がかかるため、その前段階として在来線高速化があるといいます。
というのも、北陸新幹線と東海道新幹線、そしてリニア中央新幹線で東京~名古屋~関西の三大都市圏をつなぐ強固なネットワークが形成すると、東京から新潟市に至る上越新幹線が、いわば“支線”のような存在になります。
そこで、関西方面から北陸新幹線を通じた新潟市への直通手段を確保し、そのネットワークのなかに上越新幹線を組み込むというビジョンを描いているのです。
「日帰りができなくなった」上越-新潟そして「短期的な課題」はズバリ、上越-新潟間の鉄道利用者の減少です。特に信越本線の直江津-長岡間は、30年で約8割、利用が減少しているといいます。

かつての快速「くびき野」。北陸新幹線の金沢延伸で廃止(画像:PIXTA)。
「両地域の交流人口が減ったわけではないのですが、『行き来がしにくくなった』という声が多数寄せられています」
「新潟から新幹線で長岡まで行き、そこから乗り換えると便数が少なかったり、逆に上越から新潟に出張する場合、帰りの時間の特急がなくなり、日帰りができなくなったという声もあります。そうすると、クルマで行こうかということにならざるを得なくなります」(新潟県交通政策課)
現在、両地域を往来するメインの列車は新井・上越妙高-新潟間の特急「しらゆき」ですが、2022年3月に5往復から4往復に削減され、今年3月のダイヤ改正で新潟発の最終が16時台に繰り上げとなりました。また、北陸新幹線の金沢延伸後にあった「糸魚川快速」と朝夕の座席指定快速「信越」は廃止され、かつての快速「くびき野」(新井-新潟)を前身とする快速も縮小しています。
ミニ新幹線の実現以前に「利用者を増やさないといけません。快速、特急をもっと走らせて活性化したい」といい、今年度からは特急「しらゆき」の割引なども始めたそうです。