後ろからクラクション…「もう廃止されたのに!」

 前方の信号が赤でも、常時左折が可能な交差点があるのをご存知でしょうか。一方通行の矢印標識を反転させたような、白地に青い左矢印が描かれた「左折可」の標示板が立つ場所です。

【分かりづらい?】これが「左折可」の交差点です(図/写真)

 全国的にはそう多くない標示板ですが、最近、これが新設されたところ、廃止されたところがSNS上で話題にもなりました。

 新設されたのは岡山市で、2025年8月23日に約100mだけ延伸した国道180号「岡山環状南道路」と、国道2号の交点「大樋橋西」交差点です。岡山環状南道路から国道2号へ左折する箇所が「左折可」になりました。

「左折可」は一般的に、左折需要が多い交差点での円滑な通行を目的として設置されます。この交差点は、1日に12万台以上の交通量があるとされる中国地方屈指の混雑ポイントで、大きな交差点です。

 他方、2025年3月には、奈良県の国道169号と名阪国道・西名阪道が交わる「天理IC」では、国道169号の奈良方面から名阪国道の三重方面入口へ向かう箇所で「左折可」が廃止されていることが話題となりました。

 この国道169号は一般的な2車線の国道で、交差点部は左折レーンと直進レーンで構成。左折側には横断歩道もある普通のつくりですが、関西と中部を結ぶ無料の大動脈「名阪国道」へのアクセスポイントであり、かねて「左折可」を立て看板でアピールしていました。それが一転して「『左折可』廃止」の看板に変わったのです。

 奈良県は「左折可」が多かったものの、県警が見直しを進め、その数が減っています。1990年代には現在の倍以上あったそうです。

 奈良市では2023年、観光地である奈良公園の一角に面し、県内で最も歴史があったという「県庁東」交差点でも「左折可」が廃止されました。

ここは十字路の3方向で「左折可」の標示板から左折の矢印信号に置き換わりましたが、それまでは「知らずに赤信号で止まってたら、地元民にめちゃくちゃクラクション鳴らされた」「分かりづらい」といった声がSNSで寄せられていました。

 前出の天理IC入口でもやはり、左折可の廃止後、それを知らない後続車から「思い切りクラクション鳴らされるし…」という声も見られました。この場所の「左折可」の廃止に驚いた人が少なくないようです。

アメリカでは「右折可」廃止も

「左折可」は歩行者保護の観点のほか、車道を走行する自転車のキープレフト走行を阻害することなどから見直しが進んできました。同様の傾向は海外でもあります。

赤信号で停まるとプー←「廃止されたのに…!」 また一つ消えた...の画像はこちら >>

東京の「左折可」の例。自転車の通行箇所を示す矢羽根は、左折レーンの右側に引かれている(画像:PIXTA)

 右側通行のアメリカでは、ほとんどの地域で赤信号でも「右折可」が一般的ですが、首都ワシントンD.Cでは2025年1月1日以降、標識の有無にかかわらず全ての交差点で赤信号時の右折が禁止されました。このため、在米日本大使館が在留邦人向けの「米国における自動車運転の手引き」で注意を呼びかけているほどです。

 ただし、日本では左折レーンが信号の手前で左へ分かれ、「左折可」の標識がなくても事実上、常時左折が可能な構造になっているところや、その流入部の途中に「左折可」ではなく「一方通行」の標識がついているところもあります。実際には廃止一辺倒ではなく、交差点の構造や交通量などを加味しながら、新設も含めた検討がなされているようです。

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