東京~名古屋間で工事が始まっているリニア中央新幹線。地表から1400mも深い場所を通り、工事の“難所”とされる南アルプストンネル長野工区の工事が2016年11月1日、始まりました。

工期は約10年間。これが順調に進むかが、2027年のリニア開業に影響する可能性もあります。

「地下1400m」を走るリニア

 東京(品川)~名古屋間で工事が始まっているリニア中央新幹線。その南アルプストンネル長野工区について2016年11月1日(火)、JR東海が起工式を行いました。長野県内における中央新幹線の本格工事はこれが初です。

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長野県大鹿村で行われた中央新幹線・南アルプストンネル長野工区の起工式に出席したJR東海の柘植康英社長(2016年11月1日、恵 知仁撮影)。

 南アルプストンネルは山梨、静岡、長野の3県にまたがる約25kmの山岳トンネルで、JR東海は2015年12月、まずその東側にあたる山梨工区(約7.7km)で工事に着手。今回の長野工区(約8.4km)はそれに続くもので、トンネルの西側にあたります。山梨工区と長野工区のあいだ、トンネル中央部についてはまだ、工事は始まっていません。

地表から1400m リニア中央新幹線の難所「最深部」区間の工事開始

山梨、静岡、長野の3県にまたがる、全長2万5019mの南アルプストンネル(国土地理院の地図を加工)。

「南アルプストンネルの工事は25kmにわたり、土かぶりは1400mと、これまでにないような大変難しい工事になります」(JR東海、柘植康英社長)

 JR東海の柘植康英社長は中央新幹線の東京~名古屋間建設において、既存駅直下へ新たに設ける品川駅と名古屋駅、そしてこの南アルプストンネルを“難工事”として特に挙げています。名前の通り、標高3000m級の南アルプス(赤石山脈)をくぐり抜けるため、その土かぶり(トンネルから地表までの高さ)が約1400mにもおよび土圧が高いこと、地下水脈への対応などが理由です。

「国内最大規模」(JR東海)という、この最大およそ1400mにもなる土かぶり、つまり、リニア中央新幹線の“最深部”があるのが、このたび起工式が行われた長野工区です。

南アルプスがリニア中央新幹線の未来を左右する?

 言うなれば、地下およそ1400mもの場所を行き、リニア中央新幹線における“最深部”である南アルプストンネルの長野工区。工事を担うのは鹿島建設を代表とし、飛島建設、フジタの3社で構成されるJV(共同企業体)です。

「これまで約1000mの土かぶり、湧水量の多いトンネルなどを経験しており、それを生かして、無事故無災害で工期内に終わらせたいと考えております。技術的には可能です」(鹿島建設、茅野正恭副社長)

 一概に数字だけでの比較はできませんが、ヨーロッパの“本家”アルプス山脈を貫くスイスの鉄道トンネル、ゴッタルドベーストンネルは、土かぶりがおよそ2300m。日本国内でも、1982(昭和57)年に開業した上越新幹線・大清水トンネルは土かぶり約1300mです。南アルプストンネルの土かぶりは、非現実的なものではありません。

地表から1400m リニア中央新幹線の難所「最深部」区間の工事開始

超電導リニアは2016年4月、603km/hを記録。「最も速い磁気浮上式鉄道」としてギネス世界記録に認定された。中央新幹線の設計最高速度は505km/h(2016年6月、恵 知仁撮影)。

 ただ、トンネル工事は「掘ってみないと分からない」(鹿島建設、茅野副社長)部分があるのも事実で、この南アルプストンネルの工事が順調に行くかどうかが、2027年を予定している中央新幹線の開業に影響する可能性があります。南アルプストンネル長野工区の工期は、2026年11月30日までの予定です。

起工式に出席した長野県知事の希望は

 また南アルプストンネルの建設にあたっては、トンネル工事の難しさほか、残土の処理や、工事にともない多くの関係車両が道路を走ることなどもあり、起工式に出席した阿部守一長野県知事は地域振興につながる「待ち望んでいた建設が始まる」としながらも、安全に、地域の理解を得ながら進めてほしいと述べました。

「何をおいても安全に進め、あわせて地域の生活、素晴らしい環境を保全しながら、地域と連携していきたいと考えております」(JR東海、柘植康英社長)

 中央新幹線は超電導リニアモーターカーを採用し、最高速度500km/h、東京~大阪間を最速67分で結ぶ見込み。そのうち2014年12月に着工された東京(品川)~名古屋間は2027年に開業予定で、所要時間は最速およそ40分です。その建設、運行を行うJR東海では、時間短縮のほか、東京~名古屋~大阪を結ぶ大動脈の二重化という効果もあるとしています。

【写真】12月本開業の世界最長鉄道トンネル内部

地表から1400m リニア中央新幹線の難所「最深部」区間の工事開始

土かぶりが約2300mにもなるスイスのゴッタルドベーストンネル。約57kmと世界最長の鉄道トンネルで、2016年12月に本開業予定(2016年8月、恵 知仁撮影)。

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