さらば「護衛艦隊」60年以上の歴史に幕 「水上艦隊」新編の衝撃

 海上自衛隊は現在、いずも型護衛艦へのF-35Bステルス戦闘機の運用能力を付与するための改修や、海自最大の戦闘艦となるイージス・システム搭載艦の建造、艦載型スタンドオフミサイルの導入などを進めている最中ですが、そのようななか、創設以来となる大改編が2026年3月を目途に行われます。

【新たな組織図です】「水上戦群」に「哨戒防備群」? 新たな部隊名ズラリの改編イメージ

 これにより、海上自衛隊は護衛艦や掃海艦などの水上艦艇部隊を一元的に指揮監督する組織として「自衛艦隊」の隷下に「水上艦隊(仮称)」を新編する予定です。

水上艦隊の下には「水上戦群」や「水陸両用戦機雷戦群」、「哨戒防備群」など(部隊名はいずれも仮称)が置かれるほか、情報に関する部隊を集約した「情報作戦集団(仮称)」も発足します。

 海上自衛隊には、人員の約半数が属する最大の実働部隊として自衛艦隊が設けられています。自衛艦隊は、正面戦力として日本の防衛を担う主要な艦艇が所属する「護衛艦隊」「潜水艦隊」「掃海隊群」と、P-3CやP-1といった固定翼哨戒機が所属する「航空集団」で構成されており、このほかに外国船舶に関する情報収集、分析などを行う「艦隊情報群」、海洋観測艦や音響測定艦が所属する「海洋業務・対潜支援群」、試験艦「あすか」などが所属する「開発隊群」なども編成されています。

 今回、大きな再編の対象となるのが、海自の中核部隊として60年以上の歴史を持つ護衛艦隊、そして終戦直後から日本周辺の機雷掃海を担ってきた掃海隊群です。

 防衛省は2025年度予算で、護衛艦隊と掃海隊群を統合し、地方隊に所属していた艦艇も組み込んだ「水上艦隊」の新編を決めました。これを受け、2025年5月に公布された改正自衛隊法第15条3項において「水上艦隊は、水上艦隊司令部及び水上戦群、水陸両用戦機雷戦群、哨戒防備群その他の直轄部隊から成る」と明文化。6項では「地方隊は、地方総監部直轄部隊から成る」となり、これまで各地方総監部隷下に置かれていた掃海隊と基地隊が消えることになりました。

常時3つの“最強部隊”を維持するため「即応体制」のカラクリ

 海自は水上艦艇部隊の大規模改編について「戦後最も厳しく複雑な安全保障環境を踏まえれば、今後は、即応体制をとる部隊を更に増加させ、より高い迅速性と活動量を持続的に確保していくことが必要となるため」と説明します。

自衛隊から「護衛艦隊」が消える!? 創設以来の大改編で間もな...の画像はこちら >>

桟橋に並んだ海上自衛隊のこんごう型護衛艦4隻。これらは弾道ミサイル防衛も担うイージス艦だ(画像:海上自衛隊)。

 加えて、「水上艦隊の下に置かれる新しい水上戦群は、有事における正面作戦や、平素はそのための訓練に専念し、警戒監視や海峡防備は哨戒防備群が専従することになる」とも述べています。

 2026年2月現在、護衛艦隊には有事に最前線で対応する4つの護衛隊群と海上交通の安全確保や海峡防備に従事する5つの護衛隊が置かれています。

 改編後の水上艦隊は、水上艦隊司令官をトップに第1から第3までの3個水上戦群と水陸両用戦機雷戦群、哨戒防備群などで構成。配備されるのは主に水上戦群に護衛艦、水陸両用戦機雷戦群に輸送艦、掃海艦・掃海艇となります。また、哨戒防備群には「もがみ」型FFMを含む護衛艦、「はやぶさ」型ミサイル艇、「さくら」型哨戒艦が配備される予定です。

 海自は「新編する水上戦群は、その数を護衛隊群の4個群から3個群に集約することにより、1個群当たりの護衛艦隻数を増やし、各群の中で即応体制、錬成期、修理期のサイクルを回すことで、常時3個群による即応体制を確保していく」と説明しており、改編の意義を強調します。

 なお、水上戦群は有事における正面作戦および、平素はその訓練に専念できるようになることから、「高度な任務に従事する護衛艦艇部隊の練成機会を確保し得る体制」(海自)を構築するとして、DDH(ヘリ搭載護衛艦)やDDG(イージス艦)が集中的に配備されることになります。

 一方、哨戒防備群は警戒監視や海峡防備に専従することになる模様です。海自の説明によると、もがみ型FFMは増大する平時の警戒監視所要に対応するだけでなく、従来の護衛艦と比べて多様な任務への活用が可能であることから、総合的に勘案した結果として、情報収集、警戒監視に的確に対応するため、哨戒防備群に配備するといいます。

横須賀、呉、佐世保、舞鶴、それぞれの配置は?

 配置については水上艦隊司令部と、第1水上戦群、哨戒防備群が横須賀基地(神奈川県)に、第2水上戦群が呉基地(広島県)へ、そして第3水上戦群が舞鶴基地(京都府)に、水陸両用戦機雷戦群が佐世保基地(長崎県)にそれぞれ置かれます。

自衛隊から「護衛艦隊」が消える!? 創設以来の大改編で間もなく誕生の「新艦隊」とは イージス艦も哨戒艦も配置換え
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いずも型護衛艦と虹(画像:海上自衛隊)。

 なお、水上艦隊の新編に伴い、海上訓練指導隊群は「水上訓練指導群」へ名称を変更。水上艦隊直轄部隊では第1海上補給隊が「第1水上補給隊」に、第1海上訓練支援隊が「第1水上訓練支援隊」となります。

 一方でシステム通信隊群や、これまで自衛艦隊の直轄下であった艦隊情報群、海洋業務・対潜支援群、地方隊隷下の警備所は統合され、防衛大臣の直轄部隊として新編される情報作戦集団に一元化される計画です。

これを受け、情報作戦集団の下には「作戦情報群」と「サイバー防備群」が置かれ、警備所は作戦情報群の隷下へと変わります。

 すでに横須賀地方隊の第41掃海隊は2024年3月に解隊されており、「えのしま」は函館基地隊の第45掃海隊へ、「ちちじま」は掃海隊群の第1掃海隊に編入されています。

また、大湊地方隊は2025年3月に、横須賀地方隊と統合し北海道所在部隊を除いて大湊地区隊となっています。艦艇に目を向けても2025年11月にはJMU(ジャパンマリンユナイテッド)横浜事業所磯子工場で哨戒艦「さくら」と「たちばな」が、12月には三菱重工業長崎造船所でFFMの12番艦「よしい」がそれぞれ命名・進水しており、新たな体制を象徴する艦艇が着々と整備されつつあると言っても過言ではありません。

 太平洋戦争の終戦から80年、海自創設からも70年以上が経ち、米ソ冷戦という環境下で誕生した護衛隊群や掃海隊群などの名称が今回の大改編で消えます。とはいえ、「水上戦群」と「水陸両用戦機雷戦群」という名称になったのは、日本を取り巻く安全保障環境が悪化しているという危機感の表れであり、長い歴史における一大転換点がやってきたとも言えるでしょう。

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