どの国にも“国民車”と呼べる存在があります。日本ならトヨタ「カローラ」や軽トラック、そして商用バンでは「ハイエース」が代表格でしょう。
実はイタリアにも、それに近い存在として知られている車両があります。フィアットの大型商用バン「デュカト」です。2026年5月にパシフィコ横浜で開催された「ジャパントラックショー2026」には、その“イタリア版ハイエース”ともいえるデュカトが出展され、大きな注目を集めていました。
日本ではフィアットと聞くと、某作品などの影響から、小型車「500(チンクエチェント)」を思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし、欧州では事情が異なります。
フィアットは「フィアット・プロフェッショナル」という商用車ブランドを展開しており、デュカトはその中心的モデルです。イタリアでは同ブランドが商用車市場で高いシェアを持ち、欧州全体でも大型商用バン市場で約11%のシェアを占めるなど、物流や職人文化を支える“働くクルマ”として定着しています。さらに、欧州ではキャンピングカーのベース車両としても不動の人気を誇ります。
日本でキャンピングカーのベース車両として人気の「ハイエース」と比べると、デュカトは全長がやや長い程度ですが、車幅や車高に余裕があるため、よりゆったりとした空間を確保できるのが魅力です。
この広い室内空間こそ、多くの欧州キャンパーがデュカトをベース車両に選ぶ理由のひとつです。また、映画や海外ドラマなどの映像作品に登場する機会も多く、見覚えのある人もいるかもしれません。
そんなデュカトですが、実は日本では2022年から販売が開始されており、現在は年間400台前後を販売しています。キャンピングカーのベース車両として、徐々に知名度を高めているようです。ただ、今回のトラックショーへの出展では、そうしたイメージから一歩踏み込み、“本来の商用車”としての価値をアピールする狙いがあったと、ブース担当者は明かします。
実はフィアット・プロフェッショナルでは、日本市場の現状を踏まえ、今が最大の商機だと考えているようです。その背景には、日本国内で続くハイエースの納期長期化や供給不足があります。
2026年現在、多くの建設・設備業者が「代わりになる大容量バン」を求めています。欧州で商用バンとして実績を積み重ねてきたデュカトは、その点で大きなアピールポイントになるといえるでしょう。つまり、日本国内でもハイエースのように、キャンピングカー用途だけでなく、配送バンや移動工房、空港送迎など、幅広い用途で活躍する可能性を秘めているということです。
デュカトの商用車としての最大の特徴は、前述の通り、やはり圧倒的な室内空間です。全高は2.5m級ながら、荷室内高は約2m近くを確保しており、大人でもほぼ立ったまま移動できます。
実際に車内へ入ると、日本の商用バンとは感覚が大きく異なり、荷室内を立ったまま移動できるレベルで、もはや小型配送トラックのウォークスルーバンに近い印象です。しかも、FF(前輪駆動)レイアウトを採用しているため床面が低く、大型荷物の積み下ろしもしやすい構造となっています。
さらに会場では、デュカトより小型の「スクード」のデモカーも展示されていました。サイズ感としてはハイエースよりひと回り小さく、タウンエースとハイエースの中間のような存在です。人も荷物も運べる欧州型バンとして、日本市場への投入を検討しているといいます。
このまま好調な流れが続けば、“イタリア版ハイエース”が、日本の“働くクルマ”市場へ本格参入する日も近いのかもしれません。

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