大阪府には、ホームの屋根を突き抜ける大木の生えた駅があります。なぜそのようなことになっているのでしょうか。
阪急電鉄服部天神駅(大阪府豊中市)は、ホームの屋根を大木が貫通しています。遠くから眺めると、駅から木が生えているようにも見えます。
大木がホームの屋根を突き抜けている服部天神駅(乗りものニュース編集部撮影)。
なぜそのようなことになっているのでしょうか。阪急電鉄に話を聞きました。
――まさかとは思いますが、駅を設置したあとに木が生えてきたのでしょうか?
いえ、駅を設置する前からあったクスノキです。
――なぜ木のある場所に駅をつくったのでしょうか?
服部天神駅のある場所はもともと、服部天神宮の境内地でした。クスノキは古くからこの土地にあり、服部天神宮の御神木として親しまれていました。阪急電鉄の前身である箕面有馬電気軌道が1910(明治43)年に駅を設置する際、境内地の一部を譲り受けたのですが、その敷地にクスノキが立っていたのです。
――木の伐採は考えなかったのでしょうか?
御神木として長く親しまれてきたため、地元住民の願いで伐採することなく残すかたちでホームをつくったと聞きます。
――もし今後、駅を高架化することになったら、木はどうするのでしょうか?
現在は高架化の計画がないため、正直に申し上げると、今後どうするのかはわかりません。ただ、地元住民をはじめ、駅を訪れる多くの方々に親しみを持っていただいている御神木ですので、今後も大切に残していくのではないでしょうか。
※ ※ ※
服部天神駅では、毎年夏の服部天神宮「天神祭」にあわせ、構内で御神木清祓(きよはらい)と「阪急電車安全祈願祭」を執り行っているそうです。
京阪沿線にも 地域住民が守った「駅の大木」同じ大阪府下にある京阪電鉄の萱島駅(大阪府寝屋川市)も、駅のなかに大木があることで知られています。こちらは服部天神駅とは異なり、駅が高架化しているため、ホームの床と屋根を木が突き抜けています。高さ20m、幹周り7m、推定樹齢700年の大きなクスノキです。また、高架下の木の根元には萱島神社の社が建っています。

萱島駅の屋根の上で青々と葉を茂らせる大木。高架下には萱島神社の鳥居が見える(画像:京阪電鉄)。
駅の高架化に際し、現在のかたちになったといいます。どのような経緯があったのか、京阪電鉄に話を聞きました。
――駅を高架化する以前の木はどのような様子だったのでしょうか?
かつて京阪本線の複々線化工事の過程で、萱島駅に隣接する萱島神社の境内と駅周辺の隣接地を買収しました。その際、買収用地に推定樹齢700年のクスノキが立っていました。
――駅を高架化する際に、木を伐採しようということにはならなかったのでしょうか?
当初の計画では、クスノキを除去する予定でした。
※ ※ ※
ホームの屋根を突き抜ける木は、地元住民の願いにより伐採されることなくその姿を残した御神木でした。服部天神駅の御神木には神棚も設けられており、鉄道を利用する乗客の安全を祈願する信仰の対象として親しまれているようです。
【写真】もう一方の「大木」 京阪萱島駅

高架化したホームの床と屋根を、大木が貫いている(画像:京阪電鉄)。