乗鞍岳を走る路線バス、その終点は「山頂」を名乗り、日本一高いところにあることをうたっていますが、実はこれよりも高いところにあるバス停が、そのすぐ近くにあるといいます。どういうことでしょうか。
長野県松本市と岐阜県高山市にまたがる乗鞍岳には、「バスのりば標高日本一」をうたうバス停があります。長野県側、岐阜県側からの、ふたつの路線バスの終点「乗鞍山頂(畳平)」で、その標高は2702mです。
ところが、長野側バス路線の、終点のひとつ手前に、その名も「標高2716m」というバス停が存在します。実際の標高も2716mといい、標高日本一であるはずの「乗鞍山頂(畳平)」よりも高いことを、その名で示しています。
「標高2716m」バス停。記念撮影に便宜を図り、日付が表示されている(画像:アルピコ交通)。
長野県側からのバスはアルピコ交通(長野県松本市)が単独で、岐阜県側からのバスは同社と濃飛バス(濃飛乗合自動車、岐阜県高山市)が共同で運行しており、つまり「標高2716m」バス停はアルピコ交通のバスしか停まりません。しかもアルピコ交通によると、このバス停は2017年7月に新設したものだといいます。
なにがあったのでしょうか。アルピコ交通に話を聞きました。
――「標高2716m」バス停を新設したのはなぜでしょうか?
近年、乗鞍岳へお越しになるお客様が減少傾向にあり、そのカンフル剤として「日本一」という観光資源をつくる目的で設置しました。
ふたつの「日本一高い」ができたワケ――御社も乗り入れる「乗鞍山頂(畳平)」が「日本一高いバス停」でなくてよいのでしょうか?
「乗鞍山頂(畳平)」を「日本一」としてPRし出したのも2017年5月からで、バス停のデザインも当社が行いました。
このため、「乗鞍山頂(畳平)」は「日本一高いバスのりば」、降車専用の「標高2716m」は「日本一高いところにあるバス停」などと、表現を使い分けています。

「乗鞍山頂(畳平)」バス停がある鶴ヶ池駐車場周辺の遠景(画像:アルピコ交通)。

標高2702m地点にある「乗鞍山頂(畳平)」バス停も、「標高2716m」と同じようなデザイン(画像:アルピコ交通)。

「標高2716m」付近から望むご来光(画像:アルピコ交通)。
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乗鞍岳の山頂方面へは岐阜県側から「乗鞍スカイライン」、長野県側から「乗鞍エコーライン」というふたつの道が通じており、それぞれ5~10月、7~10月のあいだ開通し、期間中に路線バスが運行されます。2017年5月、まず岐阜県側の運行開始とともに「乗鞍山頂(畳平)」を「日本一高いバスのりば」とし、さらに7月の長野県側の開通とともに「標高2716m」を新設したのだそうです。アルピコ交通の担当者は、「欲張ってふたつ『日本一』をつくりました」と、はにかみながら話しました。
「標高2716m」周辺は「ご来光」を臨むスポットでもあることから、7月中旬から9月中旬のあいだは通常の路線バスとは別に、ここへ早朝に到着する「ご来光バス」も運行されています。この「ご来光バス」の長野県側へ下山する便に限り例外的に、「乗鞍山頂(畳平)」からの運賃と同額で「標高2716m」から乗車できるそうです。