船はさまざまな色で塗装されていますが、船底の部分だけは、赤く塗られているというケースが見られます。この赤い塗料は、ある重要な役割を果たしています。
船の色はさまざまですが、貨物船など大型の船では、喫水線(船体が水に浮かんだ場合の水面の線)付近より下の部分が赤く塗られているケースが多いようです。
大型船は多くの場合、底の部分が赤く塗られている。写真はイメージ(画像:photolibrary)。
日本最大の海運会社である日本郵船も、「所属する船のほとんどで、底が赤く塗られています」といいます。なぜ赤なのでしょうか、船舶用塗料を製造する日本ペイントマリン(神戸市長田区)に聞きました。
――船底はなぜ赤い場合が多いのでしょうか?
塗料に含まれる成分のひとつ、亜酸化銅に由来するものです。船底には、カキやフジツボといった動物類、アオノリといった植物類など、水生生物が付着することによる汚れを防ぐために、防汚塗料が塗装されています。この塗料は樹脂、ロジン(松やに)、防汚剤でできているのですが、この防汚剤の主成分が亜酸化銅であり、これ自体が赤い(銅色)ので、塗料として製品化する際にも赤色系が多いです。
――水生生物は、航行にどう影響するのでしょうか?
船の底に水生生物が付着すると重量が増し、また水流の抵抗も増加するため航行に大きなエネルギーロスをもたらします。スピードが落ち、燃費が悪くなり、経済的にも負担が大きくなります。
赤じゃなくてもOK?――船の種類によって水生生物による影響も異なるのでしょうか?
水生生物はおもに、船の停泊中に付着しますので、停泊期間が長い、あるいは船の航行が緩やかであればあるほど付着する機会が多いと言えるでしょう。
――赤以外の色も船底に塗られることはあるのでしょうか?
はい。
アルミ製の船では銅が入った塗料を使えない(編集部注:電気的な作用により金属が腐食してしまうため)といったことはありますが、塗料の成分に応じて色が決まっているわけではありません。たとえば、黒はもともとプレジャー系の船用にラインアップしていましたが、最近では漁船に用いることも増えてきました。また、日本では少ないのですが、海外では緑がスタンダードのひとつともいえます。なお当社では「レインボーカラー」といって、ピンクや紫、黄色といった色も用意しています。

漁船の底は赤のほか青も多い。写真はイメージ(画像:写真AC)。
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ちなみに、日本ペイントマリンによると、船底塗料は船の種類や使用頻度、スピードなどに応じて溶け方がコントロールされているとのこと。おおよそ、漁船は半年に1回、プレジャーボートなどは年1回、外航船は3年に1回の頻度で塗り替えられるそうです。
【写真】重要文化財の「あの船」も船底は赤い

横浜・山下公園に保存されている日本郵船の「氷川丸」も船底は赤い(画像:写真AC)。