「プライベートジェット」といえばセレブのステータスアイテムですが、実際のところどのような飛行機があって、そして価格はいかほどのものなのでしょうか。
セレブのステータスといえばハリウッドの映画スターやアラブの王族、そして大企業の社長などセレブが利用するプライベートジェット。
1万km以上の航続距離があるボンバルディアの「グローバル6000」(画像:ボンバルディア)
プライベートジェットは、一般的にはビジネスジェットと呼ばれ、「ホンダジェット」のような6、7人乗りの小型機から、ボーイング737ベースの「BBJ」のように最大で40名程度が乗れる機体など、様々な機種があります。ガルフストリーム・エアロスペース(アメリカ)の「ガルフストリーム」、ボンバルディア・エアロスペース(カナダ)の「グローバル」や「リアジェット」、ダッソー(フランス)の「ファルコン」などが有名です。
では、いざビジネスジェットを購入する場合ですが、機体本体の価格はどのくらいなのでしょうか。航空機を扱う総合商社、双日(東京都千代田区)に聞いてみました。
――どのような機種を取り扱われていますでしょうか?
主力商品としてはロングレンジといわれるもので、日本からアメリカの東海岸までノンストップでフライトできる機体となります。具体的な機種名としては、ボンバルディア社の「グローバル6000」、ガルフストリーム社の「G650」が挙げられます。
――機体の価格はどれくらいでしょうか?
新規購入する際の価格帯はいずれも6000万ドルから7000万ドル(約65億円から80億円)くらいとなります。
メンテナンス次第で寿命は50年にも――ほかにはどんな機種が人気でしょうか?
ビジネスジェットの機種は幅広く、欧米で人気な航続距離が2000km程度の「Very Light」といわれる機体もあります。こちらは「ホンダジェット」などが対象となるレンジで、価格も1000万ドル(約11億円)以下で購入可能となります。
――中古購入の場合は、どれくらいの価格でしょうか?
機齢(機体の年齢)によって大きく異なってきます。
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「ホンダジェット」は、ホンダの子会社で航空機事業を展開するホンダエアクラフトカンパニー(アメリカ)が製造、販売しており、2017年上半期には小型ジェット機の出荷数で世界首位に立ちました。「空飛ぶスポーツカー」とも称される「ホンダジェット」の価格は、「2017年のベースプライスで490万ドル(約5億4千万円)になります」(ホンダ)とのことです。前出のとおり「ホンダジェット」は「Very Light」というカテゴリーに分類されるもので、ビジネスジェットのなかでは最も小型でかつ安い価格帯になるそうです。
運用コストはどのくらい?では、運用にかかるお金はどのくらいのものなのでしょうか。「あくまで小型ビジネスジェット機市場における一般論として」との前提で、ホンダに話を聞きました。

2017年上半期には小型ジェット機の出荷数世界1位を記録した「ホンダジェット」(画像:ホンダ)
――維持費はどのくらいになるのでしょうか?
アメリカにおける「Very Light Jet」カテゴリーの機体の一般的な運用コストは、飛行時間1時間あたり2000ドル(約23万円)程度です(燃料費、メンテナンス費、保険料、その他費用を含む)。もし5人搭乗すれば、ひとりあたり、1時間400ドル(約4万5千円)程度になります。
――どのような人が購入し、またどのように使われているのでしょうか?
大型の機体は、文字通りの億万長者層が購入しますが、「Very Light Jet」カテゴリーの機体は、中堅企業のオーナー、新規の企業家といった方が、ビジネス目的で購入されるケースが多いです。たとえば、地方都市に出張する場合、エアラインではハブ空港での乗り換えなどもあり1日で1箇所しかまわることができないケースでも、ビジネスジェットを使えば1日で2か所から3か所以上を回ることができ、ビジネスのスピードや効率が重要な業種では、非常に有効なツールとなります。また複数の機体を購入してチャータービジネスをされる方もいます。
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小型のビジネスジェットでも、やはり購入となると本体価格は億単位となります。購入ではなく、ビジネスジェットをチャーターするいう方法もあります。
ビジネスジェットのチャーター事業を行っている朝日航洋(東京都江東区)のホームページによると、定員最大8名の「サイテーション・ソヴリンC680」で、羽田空港~神戸空港を1泊2日で往復した場合、諸経費込みで約570万円となっています。
チャーターという選択肢のメリットは?実際にどのような人が利用し、またチャーターにはどのようなメリットがあるのでしょうか。朝日航洋に聞いてみました。
――チャーターはどのような人が利用するのでしょうか?
おもに企業の経営者層で、年齢層は業種により、幅広く変化します。メーカーやIT系、商社、ショービジネスなど様々な分野のビジネスパーソンの方が利用されています。御旅行でご利用になられるお客様もいらっしゃいます。
――どのような用途の利用でしょうか?
前出の通りビジネス利用が多く、60%から70%です。プライベートユーザーは40%から30%程度でしょうか。いずれも短時間に複数都市を周遊しお仕事や観光を完結させるなど、時間を気にせず「いつでも、どこでも、安全に」というのがこの事業の最も大きな特徴とアドバンテージです。
――チャーターするメリットはどのようなところにあるのでしょうか?
チャーター利用は購入に比較して、廉価でビジネスジェットを利用できます。

朝日航洋がチャーターに利用しているセスナ社(アメリカ)の「サイテーション・ソヴリンC680」(画像:朝日航洋)
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国土交通省はビジネスジェットの受け入れ促進として、羽田空港におけるビジネスジェットの発着制限を緩和、成田空港や関西空港でも利用環境の改善が図られ、国際利用は伸びています。しかし国内におけるビジネスジェットの発着回数は、全体で見ると横ばいで推移しています。
ビジネスジェットは、駐機費用、整備点検費、保険料などで年間2億円から3億円以上の高額な維持費がかかるといわれ、さらに日本では空港の利用料金も高く、またフライトに際し様々な制限があるため、欧米に比べるとまだまだ一般的ではないのが実情のようです。そしてチャーターを行う企業も少数です。
「ホンダジェット」のように、優れたハードが登場していることもあり、今後はより国内で利用しやすい環境作りが求められるのではないでしょうか。
【写真】もう見るのは難しい? 「トランプ・フォース・ワン」

トランプ米大統領が個人所有する、B757をベースにしたプライベートジェット、通称「トランプ・フォース・ワン」(画像:icholakov/123RF)。